病みクラ すたぽら
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――Reluは、もう戻らないのかもしれない。
その言葉を、口に出せた者はまだいなかった。だけど、胸の奥で、誰もがうすうす気づき始めていた。
すたぽらのグループLINEは、変わらず沈黙を貫いていた。そこにはReluがいたはずの場所がぽっかりと空き、メンバー全員が、その空白に目を向けないようにしていた。
「今日は、僕が企画出すね」
Coe.がそう打ち込んだのは、失踪からちょうど10日目のことだった。
「ありがと、助かる……」
ゆうが返信する。けれど、そこにあったのは以前のふわっとした雰囲気ではなく、何かに怯えるような言葉の選び方だった。
こったろも「任せたよ、リーダー」と短く返しただけで、それ以外の会話は続かなかった。
くには既読をつけるだけで、何も書き込まなかった。
その日、Coe.は一人で収録スタジオへ向かった。Reluが作りかけていた楽曲のラフを開き、耳を傾ける。
――静かすぎる。
鼓膜に届くはずの音が、Reluの不在を突きつけるようだった。音の重なりも、展開の妙も、すべては途中で終わっていた。彼の未完のメロディが、止まったまま時間だけを重ねている。
「……なんで、置いていったんだよ」
呟いた声が、反響して空しく消えた。
その夜、Coe.は久しぶりに“彼”へメッセージを送った。
Relu。生きてるか?
返事は、なかった。
だが翌朝、Coe.のスマホに通知が一件届いていた。
《俺は今、藍のところにいる。しばらく、戻らない》
短い文章。けれど、それは明確な「拒絶」だった。
藍。
それは、Reluの口から何度か聞いたことのある名前だった。すたぽらには関わっていないが、どこかで彼を支えていた存在。確か、共通の知人を通じて知り合った、音楽活動とは別の“友人”。
Coe.は、強く息を吐いた。
「……ずるいよ、Relu」
メンバーとして、仲間として、ずっと一緒にいたはずなのに。なぜ最後に選ばれたのが“藍”なのか。その問いに答える術もないまま、彼はその場に崩れ落ちた。
一方その頃――
「……ん、また通知……」
ベランダで洗濯物を干していた藍は、ポケットの中のスマホが震えたことに気づいた。
画面には、見慣れた“匿名アカウント”からのDM。
《Reluがここにいるって本当ですか?》
《すたぽらを壊したお前が隠してるのか?》
《住所わかってるぞ》
その文面に、藍は小さく舌打ちをした。
「またかよ……」
Reluが現れてから、彼の家の周囲は、わずかにざわついていた。コンビニの影に立つ見知らぬ若者、ポストに投函された意味不明なチラシ、そして何より――Relu自身の“無言”。
部屋に戻ると、Reluはソファに座り、スマホを見つめていた。
「なに、見てるんだ?」
藍が声をかけると、Reluはゆっくりと顔を上げる。その目には、深い疲れと、何かを諦めたような虚無が宿っていた。
「……ファンの投稿。俺の“遺影”が作られてて、草生えた」
Reluは、乾いた笑いをこぼした。
藍はその隣に腰を下ろし、静かに言った。
「それでも、生きてるってことは……まだ、誰かに伝えたいことがあるってことじゃないのか?」
Reluは何も返さなかった。
ただ、目を伏せ、深く深く呼吸を吐き出した。
――その沈黙こそが、彼の“本当の答え”だった。
そして、その時点で、藍だけが知っていた。
Reluが、あと“どれくらい生きられるか”。
すたぽらの誰も知らない“余命”という境界線を、彼はとうに越えていたのだ。
その言葉を、口に出せた者はまだいなかった。だけど、胸の奥で、誰もがうすうす気づき始めていた。
すたぽらのグループLINEは、変わらず沈黙を貫いていた。そこにはReluがいたはずの場所がぽっかりと空き、メンバー全員が、その空白に目を向けないようにしていた。
「今日は、僕が企画出すね」
Coe.がそう打ち込んだのは、失踪からちょうど10日目のことだった。
「ありがと、助かる……」
ゆうが返信する。けれど、そこにあったのは以前のふわっとした雰囲気ではなく、何かに怯えるような言葉の選び方だった。
こったろも「任せたよ、リーダー」と短く返しただけで、それ以外の会話は続かなかった。
くには既読をつけるだけで、何も書き込まなかった。
その日、Coe.は一人で収録スタジオへ向かった。Reluが作りかけていた楽曲のラフを開き、耳を傾ける。
――静かすぎる。
鼓膜に届くはずの音が、Reluの不在を突きつけるようだった。音の重なりも、展開の妙も、すべては途中で終わっていた。彼の未完のメロディが、止まったまま時間だけを重ねている。
「……なんで、置いていったんだよ」
呟いた声が、反響して空しく消えた。
その夜、Coe.は久しぶりに“彼”へメッセージを送った。
Relu。生きてるか?
返事は、なかった。
だが翌朝、Coe.のスマホに通知が一件届いていた。
《俺は今、藍のところにいる。しばらく、戻らない》
短い文章。けれど、それは明確な「拒絶」だった。
藍。
それは、Reluの口から何度か聞いたことのある名前だった。すたぽらには関わっていないが、どこかで彼を支えていた存在。確か、共通の知人を通じて知り合った、音楽活動とは別の“友人”。
Coe.は、強く息を吐いた。
「……ずるいよ、Relu」
メンバーとして、仲間として、ずっと一緒にいたはずなのに。なぜ最後に選ばれたのが“藍”なのか。その問いに答える術もないまま、彼はその場に崩れ落ちた。
一方その頃――
「……ん、また通知……」
ベランダで洗濯物を干していた藍は、ポケットの中のスマホが震えたことに気づいた。
画面には、見慣れた“匿名アカウント”からのDM。
《Reluがここにいるって本当ですか?》
《すたぽらを壊したお前が隠してるのか?》
《住所わかってるぞ》
その文面に、藍は小さく舌打ちをした。
「またかよ……」
Reluが現れてから、彼の家の周囲は、わずかにざわついていた。コンビニの影に立つ見知らぬ若者、ポストに投函された意味不明なチラシ、そして何より――Relu自身の“無言”。
部屋に戻ると、Reluはソファに座り、スマホを見つめていた。
「なに、見てるんだ?」
藍が声をかけると、Reluはゆっくりと顔を上げる。その目には、深い疲れと、何かを諦めたような虚無が宿っていた。
「……ファンの投稿。俺の“遺影”が作られてて、草生えた」
Reluは、乾いた笑いをこぼした。
藍はその隣に腰を下ろし、静かに言った。
「それでも、生きてるってことは……まだ、誰かに伝えたいことがあるってことじゃないのか?」
Reluは何も返さなかった。
ただ、目を伏せ、深く深く呼吸を吐き出した。
――その沈黙こそが、彼の“本当の答え”だった。
そして、その時点で、藍だけが知っていた。
Reluが、あと“どれくらい生きられるか”。
すたぽらの誰も知らない“余命”という境界線を、彼はとうに越えていたのだ。