病みクラ すたぽら
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――Reluは、今、東京から700キロ以上離れた町にいた。
肌寒い春の風が吹く北海道の港町。その片隅、古びたアパートの一室で、彼は黙って天井を見上げていた。
布団の中、スマホの画面には、無数の通知の山。XのDM、LINEの未読、スタッフの着信。全てが未開封のまま、時間だけが過ぎていく。
「……やっぱ、誰にも言わんでよかったな」
呟きは、誰に向けたものでもない。けれど、それを否定するように、部屋の奥から声が返ってきた。
「それでも、俺には言っただろ?」
キッチンに立つ男が一人。長身で黒髪、落ち着いた標準語を話すその男――藍(あいる)だった。
Reluが唯一、真実を話した相手。
余命1年。診断されたその日、彼はすたぽらのメンバーには何も告げず、ただ藍にだけ、こぼれるように打ち明けた。
「……藍は、言わへんって思ったからな」
「当たり前だ。言ったら、あいつらが壊れる」
Reluは鼻で笑った。
「もう壊れかけてるやろ、どうせ」
「お前が壊したんだろ」
その言葉には、責める色はなかった。ただ、事実を伝えるように冷静だった。
Reluは黙ったまま、ポケットの中で拳を握った。
ほんとは、こんな終わり方を望んだわけじゃない。仲間と笑って、歌って、最後のステージを迎えたかった。だけど、それができないなら、せめて――
(嫌われて、忘れられて、ひとりで消えよう)
それが、彼の選んだ“終わり方”だった。
「……藍、なあ」
「ん?」
「俺って、ほんまに“悪者”に見えるんかな」
その問いに、藍は少しだけ考えてから、こう返した。
「見えるやつには、そう見える。けど、見えないやつには、何があってもお前は仲間なんだよ」
「……は、何それ。キザすぎやろ」
Reluは笑ったが、その目は少し潤んでいた。
部屋のテレビでは、報道番組が流れていた。画面には「人気配信者、突然の消息不明」「SNS炎上からの逃避か」といった見出しが踊っていた。
「お前、顔出ししてないのに、こうまで探られるんだな」
「“見えへん顔”のほうが、面白がられるんやろな」
「馬鹿らしいな」
「せやな。……ほんま、馬鹿らしい」
それでも、Reluは画面を見続けた。
いっそ、このまま自分が“行方不明”のままでいたら――
そう思った矢先、テレビが急に切り替わった。
《速報:人気音楽グループ『スターライトポラリス』、活動休止を発表》
Reluの手が止まった。
画面には、Coe.の書いた文面が映し出されていた。
【すたぽらは、しばらくの間、活動を休止します。メンバーひとりひとりの心の整理を最優先にするためです】
「……あいつ、止めやがったんか」
Reluの声が震えた。
「お前のせいだろ。お前がいないから、止まったんだ」
藍の言葉が、胸に突き刺さる。
でも、Reluは涙を流さなかった。
泣いたら、何かが崩れてしまう気がして。
「藍、俺、明日から一人でええわ」
「何言ってんだ」
「……ちょっと、ほんまにひとりで考えたい」
藍はそれ以上、何も言わなかった。ただ、頷いて部屋のドアを閉めた。
Reluは、再び布団に潜る。スマホの通知音がまた鳴った。今度は、見覚えのある名前。
――「くに」
未読スレッドの最下層に、たった一言だけ、くにの送ったメッセージがあった。
『Relu、ゆるすから、帰ってこい』
手が、震えた。
それでも彼は、返信を打たなかった。
涙を見せたら、もう戻れなくなる気がしたから。
そしてその夜、彼の夢の中で、すたぽらの音楽が、かすかに流れていた。
けれどその音は、どこか遠く、届かない。
――崩壊の先にある、“再生”という言葉を、Reluはまだ信じていなかった。
肌寒い春の風が吹く北海道の港町。その片隅、古びたアパートの一室で、彼は黙って天井を見上げていた。
布団の中、スマホの画面には、無数の通知の山。XのDM、LINEの未読、スタッフの着信。全てが未開封のまま、時間だけが過ぎていく。
「……やっぱ、誰にも言わんでよかったな」
呟きは、誰に向けたものでもない。けれど、それを否定するように、部屋の奥から声が返ってきた。
「それでも、俺には言っただろ?」
キッチンに立つ男が一人。長身で黒髪、落ち着いた標準語を話すその男――藍(あいる)だった。
Reluが唯一、真実を話した相手。
余命1年。診断されたその日、彼はすたぽらのメンバーには何も告げず、ただ藍にだけ、こぼれるように打ち明けた。
「……藍は、言わへんって思ったからな」
「当たり前だ。言ったら、あいつらが壊れる」
Reluは鼻で笑った。
「もう壊れかけてるやろ、どうせ」
「お前が壊したんだろ」
その言葉には、責める色はなかった。ただ、事実を伝えるように冷静だった。
Reluは黙ったまま、ポケットの中で拳を握った。
ほんとは、こんな終わり方を望んだわけじゃない。仲間と笑って、歌って、最後のステージを迎えたかった。だけど、それができないなら、せめて――
(嫌われて、忘れられて、ひとりで消えよう)
それが、彼の選んだ“終わり方”だった。
「……藍、なあ」
「ん?」
「俺って、ほんまに“悪者”に見えるんかな」
その問いに、藍は少しだけ考えてから、こう返した。
「見えるやつには、そう見える。けど、見えないやつには、何があってもお前は仲間なんだよ」
「……は、何それ。キザすぎやろ」
Reluは笑ったが、その目は少し潤んでいた。
部屋のテレビでは、報道番組が流れていた。画面には「人気配信者、突然の消息不明」「SNS炎上からの逃避か」といった見出しが踊っていた。
「お前、顔出ししてないのに、こうまで探られるんだな」
「“見えへん顔”のほうが、面白がられるんやろな」
「馬鹿らしいな」
「せやな。……ほんま、馬鹿らしい」
それでも、Reluは画面を見続けた。
いっそ、このまま自分が“行方不明”のままでいたら――
そう思った矢先、テレビが急に切り替わった。
《速報:人気音楽グループ『スターライトポラリス』、活動休止を発表》
Reluの手が止まった。
画面には、Coe.の書いた文面が映し出されていた。
【すたぽらは、しばらくの間、活動を休止します。メンバーひとりひとりの心の整理を最優先にするためです】
「……あいつ、止めやがったんか」
Reluの声が震えた。
「お前のせいだろ。お前がいないから、止まったんだ」
藍の言葉が、胸に突き刺さる。
でも、Reluは涙を流さなかった。
泣いたら、何かが崩れてしまう気がして。
「藍、俺、明日から一人でええわ」
「何言ってんだ」
「……ちょっと、ほんまにひとりで考えたい」
藍はそれ以上、何も言わなかった。ただ、頷いて部屋のドアを閉めた。
Reluは、再び布団に潜る。スマホの通知音がまた鳴った。今度は、見覚えのある名前。
――「くに」
未読スレッドの最下層に、たった一言だけ、くにの送ったメッセージがあった。
『Relu、ゆるすから、帰ってこい』
手が、震えた。
それでも彼は、返信を打たなかった。
涙を見せたら、もう戻れなくなる気がしたから。
そしてその夜、彼の夢の中で、すたぽらの音楽が、かすかに流れていた。
けれどその音は、どこか遠く、届かない。
――崩壊の先にある、“再生”という言葉を、Reluはまだ信じていなかった。