病みクラ すたぽら
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
――君が選んだ孤独の意味を、僕たちはまだ探している。
Reluが姿を消して、もうすぐ四ヶ月が経つ。
桜が咲いていた季節はとうに過ぎ、街はすっかり初夏の装いに変わった。蝉の声にはまだ早いが、コンクリートに反射する陽射しが眩しく、やけに世界が明るいのが腹立たしかった。
「……なあ、くにお。最近、また夢に出てくるんだよ」
こったろが、ラフな格好でスタジオの隅に座りながら呟いた。
その声には、かつての朗らかな響きがない。
くには椅子の背もたれに腕を乗せ、ぼんやりと天井を見つめながら返す。
「れるちのこと?」
「あぁ。笑ってんだけどさ、何も喋らねえの。こっちが何話しかけても、にこにこ笑ってるだけで……。起きたら、俺、泣いてんだよ。意味わかんねえ」
こったろの声は、苦笑しているようで、どこか泣きそうでもあった。
リーダーのCoe.は、その日も現れなかった。連絡はある。最低限の仕事はこなしている。だが、彼の「心」は、明らかに現実から離れていた。
そして――ゆうもまた。
「……ゆさん、ジム行くのも減ったんよ。あのReluが居た頃は、毎日のように一緒に筋トレしてたのに。最近は家に籠ってる時間が増えた。英語の配信も止まったまんま」
くには、誰に言うでもなくそう呟いた。
「俺たち、もうバラバラなのかな……」
ふと、空気が揺れる。
それは、メンバーにしか感じ取れない「音」だった。
誰かが欠けたまま続いていく現実。
前を向こうとすればするほど、喉が詰まるような感覚が彼らを襲う。
──そのころ。
Reluは、変わらぬ景色の中で、唯一の「現在」に寄り添ってくれる存在と共にいた。
***
「Relu、今日はどうする? 少し散歩するか?」
「……ん。いけるとこまで、行ってみよか」
ベランダに干された洗濯物が、ゆるく風に揺れている。
藍の住む家は、相変わらず静かで、穏やかで、そして残酷なほど優しい。
Reluの体は、以前より明らかに細くなっていた。
食事の量も減り、薬の副作用で吐き気に悩まされる日も増えた。だが、彼はまだ言葉を選び、笑い、音楽の断片を書き留める手を止めてはいなかった。
「今日……夢、見てん。すたぽらのみんなが、なんかさ。誰も喋らんのに、めっちゃ怒ってんの」
「怒ってる?」
「うん。睨んでるっちゅうか、呆れてるっちゅうか……。俺のこと、見てるだけで。なんか、すげえ怖かった」
「……それは、Reluの心が見せたんだろうな。置いてきた現実を、心が追いかけてきてるんだ」
「そっか。……うん、せやな」
藍は、ゆっくりとReluの隣に座った。
彼はReluに、決して「頑張れ」とは言わない。
ただそっと隣にいて、何も求めず、ただ「ここにいていい」と伝え続けてくれる存在だった。
Reluは、藍の膝に頭を乗せる。
「藍くん、俺さ。まだちょっとだけ、生きてたいわ」
「……そう言ってくれて、俺は嬉しいよ」
「そんかわり……めっちゃワガママ言うてもええ?」
「いいよ。Reluのワガママなら、なんでも聞く」
「じゃあな……」
声が、少し震えた。
「あと一曲だけ、作らせてほしい」
「……曲を?」
「うん。ちゃんとした、遺言のつもりで。みんなに向けてじゃない、俺が……俺自身に向けた曲。これが最後の、Reluとしての叫びや」
藍は、Reluの頭を撫でる。
「わかった。……それなら、全部受け止める」
「ありがとう」
夕暮れが、部屋をオレンジに染めていく。
Reluの瞳の奥に灯るのは、儚いが確かな「生の火」だった。
その音は、きっと誰にも真似できない。
孤独の中に沈みながらも、優しさを忘れなかった彼の「最後の声」は、いままさに形になろうとしていた。
そして――彼がそれを書き上げたとき、この物語の終幕は近づいてくる。
Reluが姿を消して、もうすぐ四ヶ月が経つ。
桜が咲いていた季節はとうに過ぎ、街はすっかり初夏の装いに変わった。蝉の声にはまだ早いが、コンクリートに反射する陽射しが眩しく、やけに世界が明るいのが腹立たしかった。
「……なあ、くにお。最近、また夢に出てくるんだよ」
こったろが、ラフな格好でスタジオの隅に座りながら呟いた。
その声には、かつての朗らかな響きがない。
くには椅子の背もたれに腕を乗せ、ぼんやりと天井を見つめながら返す。
「れるちのこと?」
「あぁ。笑ってんだけどさ、何も喋らねえの。こっちが何話しかけても、にこにこ笑ってるだけで……。起きたら、俺、泣いてんだよ。意味わかんねえ」
こったろの声は、苦笑しているようで、どこか泣きそうでもあった。
リーダーのCoe.は、その日も現れなかった。連絡はある。最低限の仕事はこなしている。だが、彼の「心」は、明らかに現実から離れていた。
そして――ゆうもまた。
「……ゆさん、ジム行くのも減ったんよ。あのReluが居た頃は、毎日のように一緒に筋トレしてたのに。最近は家に籠ってる時間が増えた。英語の配信も止まったまんま」
くには、誰に言うでもなくそう呟いた。
「俺たち、もうバラバラなのかな……」
ふと、空気が揺れる。
それは、メンバーにしか感じ取れない「音」だった。
誰かが欠けたまま続いていく現実。
前を向こうとすればするほど、喉が詰まるような感覚が彼らを襲う。
──そのころ。
Reluは、変わらぬ景色の中で、唯一の「現在」に寄り添ってくれる存在と共にいた。
***
「Relu、今日はどうする? 少し散歩するか?」
「……ん。いけるとこまで、行ってみよか」
ベランダに干された洗濯物が、ゆるく風に揺れている。
藍の住む家は、相変わらず静かで、穏やかで、そして残酷なほど優しい。
Reluの体は、以前より明らかに細くなっていた。
食事の量も減り、薬の副作用で吐き気に悩まされる日も増えた。だが、彼はまだ言葉を選び、笑い、音楽の断片を書き留める手を止めてはいなかった。
「今日……夢、見てん。すたぽらのみんなが、なんかさ。誰も喋らんのに、めっちゃ怒ってんの」
「怒ってる?」
「うん。睨んでるっちゅうか、呆れてるっちゅうか……。俺のこと、見てるだけで。なんか、すげえ怖かった」
「……それは、Reluの心が見せたんだろうな。置いてきた現実を、心が追いかけてきてるんだ」
「そっか。……うん、せやな」
藍は、ゆっくりとReluの隣に座った。
彼はReluに、決して「頑張れ」とは言わない。
ただそっと隣にいて、何も求めず、ただ「ここにいていい」と伝え続けてくれる存在だった。
Reluは、藍の膝に頭を乗せる。
「藍くん、俺さ。まだちょっとだけ、生きてたいわ」
「……そう言ってくれて、俺は嬉しいよ」
「そんかわり……めっちゃワガママ言うてもええ?」
「いいよ。Reluのワガママなら、なんでも聞く」
「じゃあな……」
声が、少し震えた。
「あと一曲だけ、作らせてほしい」
「……曲を?」
「うん。ちゃんとした、遺言のつもりで。みんなに向けてじゃない、俺が……俺自身に向けた曲。これが最後の、Reluとしての叫びや」
藍は、Reluの頭を撫でる。
「わかった。……それなら、全部受け止める」
「ありがとう」
夕暮れが、部屋をオレンジに染めていく。
Reluの瞳の奥に灯るのは、儚いが確かな「生の火」だった。
その音は、きっと誰にも真似できない。
孤独の中に沈みながらも、優しさを忘れなかった彼の「最後の声」は、いままさに形になろうとしていた。
そして――彼がそれを書き上げたとき、この物語の終幕は近づいてくる。