病みクラ すたぽら
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Reluがいなくなってからも、季節は巡っていた。
春の終わり、街には梅雨の気配が漂い始めていた。
すたぽらは配信を再開し、少しずつライブや楽曲制作の準備も進めていたが、心のどこかにぽっかりと穴が空いたままだった。
Reluの存在があまりにも大きすぎた。
彼の才能、声、言葉、気配――すべてがそこに“あった”ものだから。
それでも、彼らは歩くことを止めなかった。
「……Reluやったら、きっとこう言うわ。“止まんなや、アホ”って」
スタジオの片隅で、くにがぽつりと漏らす。
「うん。でも、止まりそうになるよね」
ゆうが珍しく素の声で返した。
その言葉に誰も反論しなかった。無理に強がる必要はない。彼らはそうやって、少しずつ“素直”になっていた。
その日、Coe.は一つの提案をした。
「……Reluさんの声と一緒に、新曲を出さない?」
皆が驚いた顔で振り向く。
「え、でも……Relu、もう……」
「うん、でも。Reluが最後に録ってた仮歌、まだあるんだ。彼、言ってたんだよ。“俺の声、使えるもんなら好きに使え”って」
その声には迷いがなかった。
「それに、彼が遺したメモ。新曲の構成、コード、歌詞の断片……たぶん、Reluさんは完成を託してくれてたんだと思う」
沈黙。
しばらくして、こったろが息を吐いた。
「それ、やろう。俺……もう一回、Reluと歌いたい」
くにも頷く。
「Relu、絶対怒るだろうけどな。“何感傷浸ってんねん、ボケェ!”って。……でも、それでもいいじゃん。やろうぜ」
ゆうは黙っていたが、やがてゆっくりと笑った。
「ゆさん、賛成。Reluの声、また聞きたい」
そこからの制作は、まるで“祈り”のようだった。
Reluの仮歌を元に、彼らはアレンジを施し、詞を補い、音を重ねていった。
仮歌にはノイズが混じっていたが、それすらも“生きていた証”のように美しく感じられた。
途中、何度も涙が出た。
Reluの声が、あまりに懐かしくて。
けれど、その声があったから、彼らは迷わずに進めた。
新曲のタイトルは、『アサガオ』。
「いつかまた、朝が来る」
Reluが遺した、最後の言葉にちなんで。
リリース当日。
彼らは、MVをYouTubeで公開した。
映像は、Reluが遺したノートや写真、彼との日常の断片が繋ぎ合わされていた。
そして最後に、Reluの声が響く。
「朝は来る。来てまうねん、絶対に。
せやから、止まんな。俺の代わりに、生きろ。な?」
その言葉で、画面は暗転した。
公開から一時間で、再生数は100万を超えた。
コメント欄には、Reluへの想いと涙が溢れていた。
「Reluは、今もここにいる」
「ありがとう、すたぽら」
「これからも、ずっと応援します」
その言葉が、彼らを支えてくれた。
その夜、藍もまた『アサガオ』のMVを見ていた。
Reluの声が画面越しに届くたび、胸がきゅっと締めつけられた。
けれど、もう涙は出なかった。
Reluはもう、苦しんでいない。
彼は、ちゃんとこの世界に生きて、愛されて、そして今もなお、声を届けている。
藍はそっと呟いた。
「……あの日の朝顔、咲いたよ。ほら、お前の好きだった青色のやつ」
窓辺に咲いた小さな花が、月の光に揺れていた。
明日も、朝は来る。
Reluがいない朝でも。
それでも、人は生きていく。
彼の声とともに――。
春の終わり、街には梅雨の気配が漂い始めていた。
すたぽらは配信を再開し、少しずつライブや楽曲制作の準備も進めていたが、心のどこかにぽっかりと穴が空いたままだった。
Reluの存在があまりにも大きすぎた。
彼の才能、声、言葉、気配――すべてがそこに“あった”ものだから。
それでも、彼らは歩くことを止めなかった。
「……Reluやったら、きっとこう言うわ。“止まんなや、アホ”って」
スタジオの片隅で、くにがぽつりと漏らす。
「うん。でも、止まりそうになるよね」
ゆうが珍しく素の声で返した。
その言葉に誰も反論しなかった。無理に強がる必要はない。彼らはそうやって、少しずつ“素直”になっていた。
その日、Coe.は一つの提案をした。
「……Reluさんの声と一緒に、新曲を出さない?」
皆が驚いた顔で振り向く。
「え、でも……Relu、もう……」
「うん、でも。Reluが最後に録ってた仮歌、まだあるんだ。彼、言ってたんだよ。“俺の声、使えるもんなら好きに使え”って」
その声には迷いがなかった。
「それに、彼が遺したメモ。新曲の構成、コード、歌詞の断片……たぶん、Reluさんは完成を託してくれてたんだと思う」
沈黙。
しばらくして、こったろが息を吐いた。
「それ、やろう。俺……もう一回、Reluと歌いたい」
くにも頷く。
「Relu、絶対怒るだろうけどな。“何感傷浸ってんねん、ボケェ!”って。……でも、それでもいいじゃん。やろうぜ」
ゆうは黙っていたが、やがてゆっくりと笑った。
「ゆさん、賛成。Reluの声、また聞きたい」
そこからの制作は、まるで“祈り”のようだった。
Reluの仮歌を元に、彼らはアレンジを施し、詞を補い、音を重ねていった。
仮歌にはノイズが混じっていたが、それすらも“生きていた証”のように美しく感じられた。
途中、何度も涙が出た。
Reluの声が、あまりに懐かしくて。
けれど、その声があったから、彼らは迷わずに進めた。
新曲のタイトルは、『アサガオ』。
「いつかまた、朝が来る」
Reluが遺した、最後の言葉にちなんで。
リリース当日。
彼らは、MVをYouTubeで公開した。
映像は、Reluが遺したノートや写真、彼との日常の断片が繋ぎ合わされていた。
そして最後に、Reluの声が響く。
「朝は来る。来てまうねん、絶対に。
せやから、止まんな。俺の代わりに、生きろ。な?」
その言葉で、画面は暗転した。
公開から一時間で、再生数は100万を超えた。
コメント欄には、Reluへの想いと涙が溢れていた。
「Reluは、今もここにいる」
「ありがとう、すたぽら」
「これからも、ずっと応援します」
その言葉が、彼らを支えてくれた。
その夜、藍もまた『アサガオ』のMVを見ていた。
Reluの声が画面越しに届くたび、胸がきゅっと締めつけられた。
けれど、もう涙は出なかった。
Reluはもう、苦しんでいない。
彼は、ちゃんとこの世界に生きて、愛されて、そして今もなお、声を届けている。
藍はそっと呟いた。
「……あの日の朝顔、咲いたよ。ほら、お前の好きだった青色のやつ」
窓辺に咲いた小さな花が、月の光に揺れていた。
明日も、朝は来る。
Reluがいない朝でも。
それでも、人は生きていく。
彼の声とともに――。