病みクラ すたぽら
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夜が深くなっても、Reluは眠れなかった。
ベッドの中、天井を見上げる。藍の部屋は静かで、街の喧騒すら届かない。
何度も何度も、Coe.の言葉が胸の奥で反響していた。
「君が選ぶ道が、光でも、闇でも……僕はその選択を尊重する」
Reluは、目を閉じた。
涙はもう、出なかった。ただ、胸が痛む。死へのカウントダウンが確かに進んでいることが、身体の奥で重く響いている。
翌朝、Reluは藍と駅の近くのカフェにいた。
「ここ、前にお前が言ってたとこか?」
「そう。静かで、落ち着ける場所だよ」
窓際の席に座って、温かいカフェオレを飲む。目の前の藍は、変わらない表情でReluを見ていた。
「Relu。お前さ、まだやり残したことあるよな」
「……ある」
「それ、やるか? それとも……諦めるか?」
Reluは少し考えて、真っ直ぐに言った。
「……歌、やっぱりもう一度やりたい。ちゃんと、伝えたい。俺の言葉で、歌で」
藍は、ふっと微笑む。
「そう思ってくれたなら、手伝うよ」
「ええんか? お前、仕事もあるし……」
「関係ない。お前が生きてる限り、俺は味方だ」
その一言で、Reluはまた泣きそうになった。
「……なんで、そんな優しいん」
「お前が、泣きたいときに泣いていいって思えるように。誰かひとりぐらい、無条件でお前を受け止める人間がいてもいいだろ?」
Reluは、カフェオレを一口飲んで、深く頷いた。
「せやな……お前がいてくれて、よかったわ」
その日の午後、Reluはパソコンを開いていた。DAW(音楽制作ソフト)を立ち上げる。
過去のファイルが並ぶ。その中に、未完成のまま保存されていた曲があった。
タイトルは、【Pray(祈り)】
Reluが病気の兆候を感じはじめた頃に書きかけていた曲だ。歌詞は途中までで止まっていた。
「……今なら、書ける気する」
震える手で、キーボードを打つ。
“誰にも届かない祈りでも
君に向けて歌い続けたい”
音が、言葉が、涙が重なる。
Reluは藍の隣で、ひとつずつ丁寧に旋律を紡いだ。
この命の残りを、言葉に乗せて届けるために。
一週間後、Reluは小さなスタジオを借りていた。
録音ブースの中、マイクを前にしてヘッドホンを装着する。
藍はガラス越しにミキサー前に座り、Reluに向けて親指を立てる。
Reluは一つ深呼吸して、目を閉じる。
そして、歌い始めた。
「隠してた煩悩 綻び敗れていく
真っ暗な心 光なんてないって
でも君の手だけが――」
Reluの声は震えていた。それでも、強く、深く、確かにそこにあった。
ブースの外、藍の目に涙が浮かんでいた。
Reluの命の火が、燃えていた。
「この声が消える日まで、
君に――届いてほしい」
その夜。
録音データを聴き返しながら、Reluは呟いた。
「これ……アップロードするわ。“すたぽら”の名前は使わへん。けど、ちゃんと……俺の声で、俺の想いを届けたい」
藍は静かに頷いた。
「それでいい。誰にも届かない祈りでも、お前の歌は、必ず誰かの心に残る」
Reluは画面に映る波形を見つめた。
“Pray(祈り)”
その曲には、後悔も苦しみも優しさもすべて詰まっていた。
この世界に、自分という存在が確かにいたと証明するために――。
ベッドの中、天井を見上げる。藍の部屋は静かで、街の喧騒すら届かない。
何度も何度も、Coe.の言葉が胸の奥で反響していた。
「君が選ぶ道が、光でも、闇でも……僕はその選択を尊重する」
Reluは、目を閉じた。
涙はもう、出なかった。ただ、胸が痛む。死へのカウントダウンが確かに進んでいることが、身体の奥で重く響いている。
翌朝、Reluは藍と駅の近くのカフェにいた。
「ここ、前にお前が言ってたとこか?」
「そう。静かで、落ち着ける場所だよ」
窓際の席に座って、温かいカフェオレを飲む。目の前の藍は、変わらない表情でReluを見ていた。
「Relu。お前さ、まだやり残したことあるよな」
「……ある」
「それ、やるか? それとも……諦めるか?」
Reluは少し考えて、真っ直ぐに言った。
「……歌、やっぱりもう一度やりたい。ちゃんと、伝えたい。俺の言葉で、歌で」
藍は、ふっと微笑む。
「そう思ってくれたなら、手伝うよ」
「ええんか? お前、仕事もあるし……」
「関係ない。お前が生きてる限り、俺は味方だ」
その一言で、Reluはまた泣きそうになった。
「……なんで、そんな優しいん」
「お前が、泣きたいときに泣いていいって思えるように。誰かひとりぐらい、無条件でお前を受け止める人間がいてもいいだろ?」
Reluは、カフェオレを一口飲んで、深く頷いた。
「せやな……お前がいてくれて、よかったわ」
その日の午後、Reluはパソコンを開いていた。DAW(音楽制作ソフト)を立ち上げる。
過去のファイルが並ぶ。その中に、未完成のまま保存されていた曲があった。
タイトルは、【Pray(祈り)】
Reluが病気の兆候を感じはじめた頃に書きかけていた曲だ。歌詞は途中までで止まっていた。
「……今なら、書ける気する」
震える手で、キーボードを打つ。
“誰にも届かない祈りでも
君に向けて歌い続けたい”
音が、言葉が、涙が重なる。
Reluは藍の隣で、ひとつずつ丁寧に旋律を紡いだ。
この命の残りを、言葉に乗せて届けるために。
一週間後、Reluは小さなスタジオを借りていた。
録音ブースの中、マイクを前にしてヘッドホンを装着する。
藍はガラス越しにミキサー前に座り、Reluに向けて親指を立てる。
Reluは一つ深呼吸して、目を閉じる。
そして、歌い始めた。
「隠してた煩悩 綻び敗れていく
真っ暗な心 光なんてないって
でも君の手だけが――」
Reluの声は震えていた。それでも、強く、深く、確かにそこにあった。
ブースの外、藍の目に涙が浮かんでいた。
Reluの命の火が、燃えていた。
「この声が消える日まで、
君に――届いてほしい」
その夜。
録音データを聴き返しながら、Reluは呟いた。
「これ……アップロードするわ。“すたぽら”の名前は使わへん。けど、ちゃんと……俺の声で、俺の想いを届けたい」
藍は静かに頷いた。
「それでいい。誰にも届かない祈りでも、お前の歌は、必ず誰かの心に残る」
Reluは画面に映る波形を見つめた。
“Pray(祈り)”
その曲には、後悔も苦しみも優しさもすべて詰まっていた。
この世界に、自分という存在が確かにいたと証明するために――。