病みクラ すたぽら
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冬の朝は、息をするだけで肺が痛む。
真っ白な街に、吐く息が一筋、細く伸びていく。
こったろは駅のホームで一歩踏み出すと、その冷たさに身を縮めた。
「……寒っ……!」
北国の空気は思っていたよりも遥かに鋭くて、指先まで凍えるようだった。それでも彼の心は、迷わなかった。
――Reluに会う。
それだけが、今のこったろを支えていた。
道中、手がかりはほとんどなかった。
“似た人を見た”という情報だけが頼りで、町の名前すら曖昧だった。けれど、どこかでReluの「空気」を感じられる気がしていた。
(あいつは……何も言わずに、いなくなるようなやつじゃない)
そう思いたかった。
自分たちが大切にしていた時間が、全部、嘘じゃなかったと信じたかった。
雪を踏みしめる足音だけが響く路地裏で、ふと、小さな雑貨屋の前を通りかかったとき――
視線の先に、見覚えのある背中があった。
ベンチに腰かけ、遠くを見つめている人物。目の前には、コーヒーの紙カップ。そして隣には、知らない男――藍。
(……Relu……?)
こったろは、言葉を失った。
どこか細くなった肩。深く目を落とす横顔。それでも、間違えるはずがない。
間違えるはずが――
「れるちっ!」
呼んでいた。
気づけば走り出していて、まるで時間が逆戻りしたかのように、ただその名前を叫んでいた。
Reluが顔を上げた。瞬間、こったろの胸に、鈍い衝撃が走った。
その目は、どこか遠くを見ていた。
「……来んなよ」
その声は、冷たかった。
「なんで……お前がここにいんだよ」
こったろの足が止まる。
「……会いたかったからに決まってんだろ」
「勝手に来て、勝手に会って……何がしたい?」
Reluの目が、氷のように冷えていた。
「そんな“かわいそうなやつ見に来ました”って顔して……同情でもしに来たんか?」
「は……?」
「俺はもう、“すたぽら”のReluじゃねえ。見ての通り、こんな田舎で、何もしてねぇ“ただの人間”や。そっとしといてくれや」
「……バカか、お前」
その一言で、こったろの感情が爆ぜた。
「勝手にいなくなって、勝手に人の気持ち決めんなよ。れるちがどうなってたって、俺は――」
「やめろ」
Reluが低く、強く言った。
「もう……全部、終わったんや。お前らといると、思い出してしまう。“死ぬことが怖い”ってことを」
その言葉に、こったろは息を呑んだ。
Reluの声が、震えていた。
「お前らが優しいほどに、怖くなるんや。置いていくのが、つらくなるんや……!」
初めて、Reluが本音をこぼした。
堪え切れなかったのか、目の端から涙がこぼれる。
こったろは、そっと距離を詰めた。
Reluが拒むように身を引こうとする、その肩を、そっと抱きしめた。
「……勝手に一人で全部背負うなよ」
Reluが、ぎゅっと目を閉じる。
「お前がどんな選択をしようと……最後まで、お前の味方でいたいって思うのは、ワガママか?」
Reluは何も言わなかった。
けれど、その肩が微かに震えていた。
少し離れた場所で、藍は静かに二人を見守っていた。
その目は、どこか温かかった。
Reluにとって、自分はただの避難所かもしれない。
でも、今この瞬間、Reluの中の“過去”と“現在”が、初めて真正面から出会っていた。
そして、その出会いに、藍は心から祈っていた。
――どうか、ReluがRelu自身を責めすぎませんように。
その夜、こったろは藍の家に泊まることになった。
こたつの中、三人で座っている光景は、まるで不思議な家族のようだった。
「で、君が藍くん?」
「うん。君が“こったろ”くん?」
「変な名前だなって思った?」
「ちょっとだけね」
「はっきり言うタイプだな~!」
Reluが笑う。
それを見て、こったろもつられて笑った。
静かに時間が流れていく。
目に見えない痛みも、不安も、それを分け合える相手がいるだけで、少しだけ、呼吸が楽になる。
Reluは、こたつに潜り込みながらぽつりと呟いた。
「……なぁ、こったん」
「ん?」
「……ゆうくんにも、会いたいと思ったら、ワガママかな」
こったろは一拍おいて、ゆっくりと答えた。
「ワガママでいいだろ。お前、ずっと“良い子”だったじゃん」
Reluの瞳が揺れる。
その光は、微かに、春の陽のように温かかった。
真っ白な街に、吐く息が一筋、細く伸びていく。
こったろは駅のホームで一歩踏み出すと、その冷たさに身を縮めた。
「……寒っ……!」
北国の空気は思っていたよりも遥かに鋭くて、指先まで凍えるようだった。それでも彼の心は、迷わなかった。
――Reluに会う。
それだけが、今のこったろを支えていた。
道中、手がかりはほとんどなかった。
“似た人を見た”という情報だけが頼りで、町の名前すら曖昧だった。けれど、どこかでReluの「空気」を感じられる気がしていた。
(あいつは……何も言わずに、いなくなるようなやつじゃない)
そう思いたかった。
自分たちが大切にしていた時間が、全部、嘘じゃなかったと信じたかった。
雪を踏みしめる足音だけが響く路地裏で、ふと、小さな雑貨屋の前を通りかかったとき――
視線の先に、見覚えのある背中があった。
ベンチに腰かけ、遠くを見つめている人物。目の前には、コーヒーの紙カップ。そして隣には、知らない男――藍。
(……Relu……?)
こったろは、言葉を失った。
どこか細くなった肩。深く目を落とす横顔。それでも、間違えるはずがない。
間違えるはずが――
「れるちっ!」
呼んでいた。
気づけば走り出していて、まるで時間が逆戻りしたかのように、ただその名前を叫んでいた。
Reluが顔を上げた。瞬間、こったろの胸に、鈍い衝撃が走った。
その目は、どこか遠くを見ていた。
「……来んなよ」
その声は、冷たかった。
「なんで……お前がここにいんだよ」
こったろの足が止まる。
「……会いたかったからに決まってんだろ」
「勝手に来て、勝手に会って……何がしたい?」
Reluの目が、氷のように冷えていた。
「そんな“かわいそうなやつ見に来ました”って顔して……同情でもしに来たんか?」
「は……?」
「俺はもう、“すたぽら”のReluじゃねえ。見ての通り、こんな田舎で、何もしてねぇ“ただの人間”や。そっとしといてくれや」
「……バカか、お前」
その一言で、こったろの感情が爆ぜた。
「勝手にいなくなって、勝手に人の気持ち決めんなよ。れるちがどうなってたって、俺は――」
「やめろ」
Reluが低く、強く言った。
「もう……全部、終わったんや。お前らといると、思い出してしまう。“死ぬことが怖い”ってことを」
その言葉に、こったろは息を呑んだ。
Reluの声が、震えていた。
「お前らが優しいほどに、怖くなるんや。置いていくのが、つらくなるんや……!」
初めて、Reluが本音をこぼした。
堪え切れなかったのか、目の端から涙がこぼれる。
こったろは、そっと距離を詰めた。
Reluが拒むように身を引こうとする、その肩を、そっと抱きしめた。
「……勝手に一人で全部背負うなよ」
Reluが、ぎゅっと目を閉じる。
「お前がどんな選択をしようと……最後まで、お前の味方でいたいって思うのは、ワガママか?」
Reluは何も言わなかった。
けれど、その肩が微かに震えていた。
少し離れた場所で、藍は静かに二人を見守っていた。
その目は、どこか温かかった。
Reluにとって、自分はただの避難所かもしれない。
でも、今この瞬間、Reluの中の“過去”と“現在”が、初めて真正面から出会っていた。
そして、その出会いに、藍は心から祈っていた。
――どうか、ReluがRelu自身を責めすぎませんように。
その夜、こったろは藍の家に泊まることになった。
こたつの中、三人で座っている光景は、まるで不思議な家族のようだった。
「で、君が藍くん?」
「うん。君が“こったろ”くん?」
「変な名前だなって思った?」
「ちょっとだけね」
「はっきり言うタイプだな~!」
Reluが笑う。
それを見て、こったろもつられて笑った。
静かに時間が流れていく。
目に見えない痛みも、不安も、それを分け合える相手がいるだけで、少しだけ、呼吸が楽になる。
Reluは、こたつに潜り込みながらぽつりと呟いた。
「……なぁ、こったん」
「ん?」
「……ゆうくんにも、会いたいと思ったら、ワガママかな」
こったろは一拍おいて、ゆっくりと答えた。
「ワガママでいいだろ。お前、ずっと“良い子”だったじゃん」
Reluの瞳が揺れる。
その光は、微かに、春の陽のように温かかった。