病みクラ すたぽら
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――誰かが泣いた気がした。
けれど、それは誰の涙だったのか、誰にもわからなかった。画面の向こうに映らないその哀しみは、音にも文字にもならず、ただ静かに胸の奥に沈んでいった。
その日も、すたぽらのグループチャットは静まり返っていた。
既読のつかないメッセージがいくつも並び、タイムスタンプだけが冷たく時を刻んでいる。
「……もう一週間、だな」
Coe.が独り言のように呟いた。カーテン越しに射し込む昼の光が、妙に白々しく感じられる。
作業机の上には、Reluの作りかけだった楽曲データ。
繊細に重ねられたコードと旋律。どこまでも真摯な言葉の痕跡。
それが、突然ぷつりと途絶えていた。
Coe.は画面を閉じると、深く息を吐いた。
(れるち……どこにいるんだ)
探したところで、答えが見つからないことはわかっていた。
でも、何かをしていなければ、何もできない自分が許せなかった。
「もう一度、連絡してみるか」
そう呟いた時、不意にスマホが震えた。
着信――こったろからだった。
「……もしもし?」
『あ、Coe.…今、大丈夫?』
「うん、大丈夫。どうかした?」
『ちょっと……話したいことがあって』
電話越しの声は、どこか張り詰めていた。明るく装おうとするその声の奥に、どうしようもない迷いや不安が滲んでいる。
『実は、Reluの目撃情報があったんだ』
「……え?」
『北海道の、とある小さな町。地元のファンだって子が、似た人を見たって。確証はないけど……』
こったろの言葉に、Coe.の心臓が跳ねた。
「……会いに行くつもり?」
『……うん。でも、怖いんだ。俺が行っていいのか、わからなくて』
「……」
『俺たちは、ずっと仲間だった。でも、今のReluにとって、俺たちは……“戻りたくない過去”かもしれない』
こったろの声が、震えた。
Coe.はそっと目を閉じる。
Reluが何を思い、なぜ姿を消したのか。今となっては、それを確かめる術はない。だが、それでも――
「俺たちは、仲間だよ」
その言葉を、Coe.は返した。
「Reluさんがどう思ってるかは、わからない。でも、俺たちはまだ“Reluさんの仲間”でいていいんじゃないかな」
電話の向こうで、しばらく沈黙が続いた。
『……ありがとう』
そして、小さくこったろの声が届いた。
『会いに行くよ。ちゃんと、自分の言葉で話すために』
その頃、遠く離れた町では、Reluが小さな雑貨店の前でベンチに腰掛けていた。
白い息が空へと溶けていく。
となりには、藍。
ふたりは、何も話さず、ただ穏やかに同じ風を感じていた。
「……変わらへんな、ここの空気」
Reluがぽつりと呟いた。
「君がここに戻ってきたのは、その空気のせい?」
「……違う。誰にも届かない場所に、ただ、いたかっただけや」
藍はゆっくり頷いた。
「でも、誰かは君を探してる。それでも、君はここにいるんだね」
「……会ってしまえば、全部壊れる気がするんや。優しさとか、友情とか、全部……“哀れみ”になってしまいそうで」
藍は言った。
「本当にそうなら、君はもうとっくに僕を避けてると思うけどね」
Reluは、ふっと笑った。
「……変なやつ」
「よく言われるよ」
その笑いの奥にある痛みに、藍は気づいていた。
だが、彼は何も言わなかった。
この沈黙こそが、Reluが今必要としている“音”なのだと信じていたから。
その夜。
こったろは、小さなスーツケースを引きながら、北へと向かう列車に揺られていた。
窓の外には、冷たい夜と、果てしない雪の大地。
胸に抱えたのは、謝罪でも、説得でもない――
「また、お前と……ちゃんと、会いたいだけなんだ」
そう呟いたこったろの目が、ほんのわずかに潤んだ。
音楽の鳴らない冬が、静かに、しかし確実に、終わりを告げようとしていた。
けれど、それは誰の涙だったのか、誰にもわからなかった。画面の向こうに映らないその哀しみは、音にも文字にもならず、ただ静かに胸の奥に沈んでいった。
その日も、すたぽらのグループチャットは静まり返っていた。
既読のつかないメッセージがいくつも並び、タイムスタンプだけが冷たく時を刻んでいる。
「……もう一週間、だな」
Coe.が独り言のように呟いた。カーテン越しに射し込む昼の光が、妙に白々しく感じられる。
作業机の上には、Reluの作りかけだった楽曲データ。
繊細に重ねられたコードと旋律。どこまでも真摯な言葉の痕跡。
それが、突然ぷつりと途絶えていた。
Coe.は画面を閉じると、深く息を吐いた。
(れるち……どこにいるんだ)
探したところで、答えが見つからないことはわかっていた。
でも、何かをしていなければ、何もできない自分が許せなかった。
「もう一度、連絡してみるか」
そう呟いた時、不意にスマホが震えた。
着信――こったろからだった。
「……もしもし?」
『あ、Coe.…今、大丈夫?』
「うん、大丈夫。どうかした?」
『ちょっと……話したいことがあって』
電話越しの声は、どこか張り詰めていた。明るく装おうとするその声の奥に、どうしようもない迷いや不安が滲んでいる。
『実は、Reluの目撃情報があったんだ』
「……え?」
『北海道の、とある小さな町。地元のファンだって子が、似た人を見たって。確証はないけど……』
こったろの言葉に、Coe.の心臓が跳ねた。
「……会いに行くつもり?」
『……うん。でも、怖いんだ。俺が行っていいのか、わからなくて』
「……」
『俺たちは、ずっと仲間だった。でも、今のReluにとって、俺たちは……“戻りたくない過去”かもしれない』
こったろの声が、震えた。
Coe.はそっと目を閉じる。
Reluが何を思い、なぜ姿を消したのか。今となっては、それを確かめる術はない。だが、それでも――
「俺たちは、仲間だよ」
その言葉を、Coe.は返した。
「Reluさんがどう思ってるかは、わからない。でも、俺たちはまだ“Reluさんの仲間”でいていいんじゃないかな」
電話の向こうで、しばらく沈黙が続いた。
『……ありがとう』
そして、小さくこったろの声が届いた。
『会いに行くよ。ちゃんと、自分の言葉で話すために』
その頃、遠く離れた町では、Reluが小さな雑貨店の前でベンチに腰掛けていた。
白い息が空へと溶けていく。
となりには、藍。
ふたりは、何も話さず、ただ穏やかに同じ風を感じていた。
「……変わらへんな、ここの空気」
Reluがぽつりと呟いた。
「君がここに戻ってきたのは、その空気のせい?」
「……違う。誰にも届かない場所に、ただ、いたかっただけや」
藍はゆっくり頷いた。
「でも、誰かは君を探してる。それでも、君はここにいるんだね」
「……会ってしまえば、全部壊れる気がするんや。優しさとか、友情とか、全部……“哀れみ”になってしまいそうで」
藍は言った。
「本当にそうなら、君はもうとっくに僕を避けてると思うけどね」
Reluは、ふっと笑った。
「……変なやつ」
「よく言われるよ」
その笑いの奥にある痛みに、藍は気づいていた。
だが、彼は何も言わなかった。
この沈黙こそが、Reluが今必要としている“音”なのだと信じていたから。
その夜。
こったろは、小さなスーツケースを引きながら、北へと向かう列車に揺られていた。
窓の外には、冷たい夜と、果てしない雪の大地。
胸に抱えたのは、謝罪でも、説得でもない――
「また、お前と……ちゃんと、会いたいだけなんだ」
そう呟いたこったろの目が、ほんのわずかに潤んだ。
音楽の鳴らない冬が、静かに、しかし確実に、終わりを告げようとしていた。