story
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
Reluが再び姿を消してから、すたぽらのアトリエには新たな静寂が訪れていた。
音楽を作るための部屋。
何時間もリハーサルを繰り返した鏡の前。
バカみたいに笑ってふざけたソファ。
Reluがいた痕跡は、どこを探しても鮮やかに残っていた。
「……変わらないな」
Coe.はギターの弦を弾きながらぽつりと呟く。
その指先は、以前より少しだけ力強くなっていた。
「Reluが消えた場所には、いつも“音”が残ってる。君の音は、いまだに僕らと一緒に鳴ってるよ」
「なぁ……次の楽曲、どうする?」
くにがスマホ片手に聞いてきた。
「こったろ、歌詞とか構想、なんか案ある?」
こったろは、壁にもたれながら腕を組んでいた。
「うーん……Reluのこと、思い切り書いてみてもいいかもしれない。ちゃんと気持ちと向き合って、形にしないと前に進めない気がするんだ」
くには一瞬眉をひそめたが、すぐに口元を引き締めた。
「……そっか。そうだな。俺ら、ちゃんと全部ぶちまけなきゃだよな」
「Reluさんに、聞かせたいしね」
Coe.の声は優しくて、でもどこか切実だった。
***
その頃――藍の部屋では、Reluが穏やかに目を覚ましていた。
外はやわらかな朝の光に包まれ、カーテンの隙間から差し込む光が、布団の中で揺れる彼の睫毛を照らしている。
「……ん……」
ゆっくりと上体を起こすと、傍に置かれた水のグラスと、手紙が目に入った。
手紙には、藍の文字でこう綴られていた。
おはよう。先に買い物に出ています。
朝のヨーグルト、冷蔵庫にあるよ。冷たいものが辛いなら、温めて飲んでもいいかも。
戻ったら、今日も少し散歩しよう。
君の一日が、穏やかでありますように。
――藍
Reluは思わず吹き出して笑った。
「ほんま、よう世話焼くなぁ……」
言いながらも、彼の目元はどこか緩んでいる。
こんなふうに、誰かに日常を気遣われることが、いつからか当たり前じゃなくなっていたことに気づく。
そしてそれを「嬉しい」と思ってしまっている自分に、少しだけ涙がにじみそうになる。
彼はそっと立ち上がり、窓の外を見た。
澄んだ空、白い雲。
生きているだけで、こんなにも美しいものが見えるなんて。
彼の中に、ひとつの小さな炎が灯る。
もう一度、歌いたい。
もう一度、音に命を吹き込みたい。
すたぽらとしてではなくても、どこかで、自分の声が誰かを救うのなら。
Reluは、自分の胸に手を当てて、そっと呟いた。
「――まだ、終わってへんよな」
***
その夜。
藍が帰宅すると、リビングにはReluの姿があった。
珍しく、キーボードの前に座り、何かを打ち込んでいた。
「……あれ? 君が机に向かってるなんて、珍しいな」
藍が声をかけると、Reluは少しバツが悪そうに笑った。
「なんか、ちょっと思いついてしもてな。……歌の、フレーズ」
藍は嬉しそうに目を細める。
「聴かせてくれる?」
Reluはしばらく迷った後、そっとキーボードに指を置く。
やがて、短いけれど温かみのあるメロディが流れ出した。
それはまるで――「希望」の音だった。
そのメロディの先に、何があるのか。
それはまだわからない。
けれど、Reluが「生きたい」と願った一歩は、確かにそこから始まっていた。
ーーーーーーー
「この音、すごくいい」
藍はキーボードから流れたメロディを静かに聴き終えると、そう言って微笑んだ。
Reluは照れ隠しのように頭を掻きながら、ふっと視線を逸らす。
「……そない褒めても、なんも出ぇへんけどな」
「君が作ったものに、嘘つくつもりはないよ」
藍の声は穏やかだった。
まるで耳の奥に残った音の余韻すら優しく包み込むような温度を帯びていた。
Reluは、言葉を詰まらせた。
今まで音楽で評価されることは何度もあった。でも、それは「Relu」として、「すたぽら」の一員として、という仮面をかぶった上での評価だ。
今は違う。藍の前では、ただの「自分」として。
「……藍。俺な……」
少し声を落として、言葉を選ぶようにReluが続ける。
「死ぬ前に、最後の曲……作りたいねん」
藍は表情を変えずに、Reluの言葉を待っていた。
「最後まで、誰にも伝えへん。メンバーにも、ファンにも。……でも、お前にだけは聞いててほしい。せやないと、たぶん……俺、迷子なる」
その言葉に、藍は一瞬だけ目を伏せた。
それでも、すぐに顔を上げて、静かにうなずく。
「……わかった。僕は君の隣にいる。どこへ向かっても、君が自分で選んだなら、その行き先が地獄でも、最後まで付き合うよ」
Reluは、こらえきれずに笑った。
「……地獄て、お前、相変わらずセンスなぁ……」
「褒め言葉と受け取っておく」
藍が小さく笑った時、Reluの胸に、ほんのわずかだが温かい何かが戻ってきた。
まるで、冬の隙間に差し込んだ春の光のように。
***
それから数日後。
Reluは、再び“嫌われる行動”を強めていった。
くにが連絡してきたグループチャットに、平然と既読無視を続けた。
Coe.が送ってきた「新曲の仮メロどう思う?」というボイスメッセージも、一切聞かずに削除した。
さらに――
動画投稿の予定に対して、Reluは強めのコメントを残した。
「そんな安っぽい構成で曲を上げるん?舐めすぎやろ」
投稿は中止され、くには夜中に泣いていたらしい。
「Relu、どうしてあんなこと言うの……?」
ゆうがぽつりと漏らした音声メッセージが、藍の部屋のスピーカーから流れる。
Reluは黙って、それを一人で聞いた。
「……あいつ、泣きながら寝るタイプやんな……」
自分で突き刺した言葉が、自分をも痛めていくのがわかっていた。
でも、それでも止まれない。
「藍」
呼ばれて、台所から顔を出した藍が、黙って目を合わせた。
「……このままでええよな? 俺、あいつらから嫌われて、それで……それでええんよな……?」
藍は何も言わず、ただReluに近づいてそっとその手を取った。
その手は震えていた。痛みにも似た後悔と恐怖が、隠しきれずに滲んでいる。
「君が決めたことなら、僕は支える。でも、君が潰れそうになったら……僕は止める」
Reluは、その言葉を聞いてようやく涙をこぼした。
「藍……俺、怖いんや。死ぬのも、嫌われるのも、全部怖い。せやけど、選ばなあかんのが、余計に怖い……!」
藍は黙って、Reluの額にそっと自分の額を寄せた。
「なら、選ばなくていい。怖いままでも、立ち止まってても……君は君のままでいいよ」
部屋の中で流れていたのは、あの夜に作られた“希望の音”。
それが、彼の小さな灯火を消さぬようにと、静かに鼓動していた。
ーーーーーーー
「Relu、どこにいるの……?」
その問いかけに、返事はない。
すたぽらのメンバーたちは、連絡が取れなくなってから既に2週間以上が過ぎたReluを、それぞれが違うやり方で追いかけていた。
「……あいつ、完全に姿消したな」
こったろがPCの画面を前に腕を組む。連絡履歴、位置情報、SNS――どれも“空白”だった。まるでReluという人間が突然この世界から消えてしまったかのように。
「ゆさん、昨日また泣いてたよ……」
くにが言うと、Coe.は言葉を失ったまま、手にしていたマグカップをぎゅっと握りしめた。
Reluの言葉、態度、すべてが急に変わった。
無関心。攻撃的。冷たい。
それでも、メンバーたちは心のどこかで理解していた。
あれは、本当のReluじゃない。
そして、それが理解できてしまうほど、彼のことを知っていた。
「……ねえ、Reluさんは今、どこで何をしてるの?」
Coe.が誰にともなく呟いたその言葉は、部屋の空気に沈んでいった。
***
「おかえり」
藍の声が部屋に響くと、Reluはドアをゆっくりと閉めた。
帽子を脱ぎ、ため息をひとつ。
「……また、連絡無視した」
Reluはカバンを放り投げるように置き、ソファに倒れ込んだ。
「くにお、ずっと既読スルーしてる。Coe.くんからも何回も送られてきてる。全部、無視した」
藍はその隣に座ると、無言で手を伸ばし、Reluの背中にそっと触れた。
「ゆうくんのこと、ブロックした」
「……」
「ほんま、最低やな俺。どこまでいったら、あいつら俺を嫌いになるんやろな」
その言葉には、自虐と哀願が入り混じっていた。
藍は目を伏せたまま、静かに言う。
「君は、嫌われたくないんだね」
Reluは、すっと視線を宙に彷徨わせた。
「違う。嫌われたいんや。じゃないと……別れる理由がない」
「それは君の理由だろ?でも、彼らの理由ではないよ」
Reluは黙ったまま、ソファに体を沈めた。
藍の手のひらだけが、唯一彼とこの世界を繋ぎ止めていた。
「……曲、完成に近づいてきた」
ぽつりと、Reluが呟いた。
「タイトルは、“灯火(ともしび)”。あいつらとおった時間全部詰め込んだ。最後の置き土産や」
「誰にも聞かせないんだよね?」
「……お前にだけは聞いてほしい。なぁ、藍」
藍は黙ってうなずくと、優しく微笑んだ。
「わかった。君の“最後”に、僕が付き合う」
***
その頃、すたぽらのメンバーたちは、ある“仮説”にたどり着こうとしていた。
「なあ、こったろ……Reluってさ、“藍”って名前、なんか言ってなかった?」
「……確かに昔、名前出してた気がする」
「藍って人……れるちにとって、ただの知り合いじゃないと思う」
くにがそう言うと、Coe.が頷いた。
「Reluさんは……全部から逃げてるわけじゃない。唯一、自分を支えてくれる誰かのところに、行ったんだと思う」
「なら……そいつを探すしかない」
物語が再び動き出そうとしていた。
Reluの“選んだ別れ”と、すたぽらの“諦めない想い”。
それぞれが交差する日が、少しずつ、近づいていた。
音楽を作るための部屋。
何時間もリハーサルを繰り返した鏡の前。
バカみたいに笑ってふざけたソファ。
Reluがいた痕跡は、どこを探しても鮮やかに残っていた。
「……変わらないな」
Coe.はギターの弦を弾きながらぽつりと呟く。
その指先は、以前より少しだけ力強くなっていた。
「Reluが消えた場所には、いつも“音”が残ってる。君の音は、いまだに僕らと一緒に鳴ってるよ」
「なぁ……次の楽曲、どうする?」
くにがスマホ片手に聞いてきた。
「こったろ、歌詞とか構想、なんか案ある?」
こったろは、壁にもたれながら腕を組んでいた。
「うーん……Reluのこと、思い切り書いてみてもいいかもしれない。ちゃんと気持ちと向き合って、形にしないと前に進めない気がするんだ」
くには一瞬眉をひそめたが、すぐに口元を引き締めた。
「……そっか。そうだな。俺ら、ちゃんと全部ぶちまけなきゃだよな」
「Reluさんに、聞かせたいしね」
Coe.の声は優しくて、でもどこか切実だった。
***
その頃――藍の部屋では、Reluが穏やかに目を覚ましていた。
外はやわらかな朝の光に包まれ、カーテンの隙間から差し込む光が、布団の中で揺れる彼の睫毛を照らしている。
「……ん……」
ゆっくりと上体を起こすと、傍に置かれた水のグラスと、手紙が目に入った。
手紙には、藍の文字でこう綴られていた。
おはよう。先に買い物に出ています。
朝のヨーグルト、冷蔵庫にあるよ。冷たいものが辛いなら、温めて飲んでもいいかも。
戻ったら、今日も少し散歩しよう。
君の一日が、穏やかでありますように。
――藍
Reluは思わず吹き出して笑った。
「ほんま、よう世話焼くなぁ……」
言いながらも、彼の目元はどこか緩んでいる。
こんなふうに、誰かに日常を気遣われることが、いつからか当たり前じゃなくなっていたことに気づく。
そしてそれを「嬉しい」と思ってしまっている自分に、少しだけ涙がにじみそうになる。
彼はそっと立ち上がり、窓の外を見た。
澄んだ空、白い雲。
生きているだけで、こんなにも美しいものが見えるなんて。
彼の中に、ひとつの小さな炎が灯る。
もう一度、歌いたい。
もう一度、音に命を吹き込みたい。
すたぽらとしてではなくても、どこかで、自分の声が誰かを救うのなら。
Reluは、自分の胸に手を当てて、そっと呟いた。
「――まだ、終わってへんよな」
***
その夜。
藍が帰宅すると、リビングにはReluの姿があった。
珍しく、キーボードの前に座り、何かを打ち込んでいた。
「……あれ? 君が机に向かってるなんて、珍しいな」
藍が声をかけると、Reluは少しバツが悪そうに笑った。
「なんか、ちょっと思いついてしもてな。……歌の、フレーズ」
藍は嬉しそうに目を細める。
「聴かせてくれる?」
Reluはしばらく迷った後、そっとキーボードに指を置く。
やがて、短いけれど温かみのあるメロディが流れ出した。
それはまるで――「希望」の音だった。
そのメロディの先に、何があるのか。
それはまだわからない。
けれど、Reluが「生きたい」と願った一歩は、確かにそこから始まっていた。
ーーーーーーー
「この音、すごくいい」
藍はキーボードから流れたメロディを静かに聴き終えると、そう言って微笑んだ。
Reluは照れ隠しのように頭を掻きながら、ふっと視線を逸らす。
「……そない褒めても、なんも出ぇへんけどな」
「君が作ったものに、嘘つくつもりはないよ」
藍の声は穏やかだった。
まるで耳の奥に残った音の余韻すら優しく包み込むような温度を帯びていた。
Reluは、言葉を詰まらせた。
今まで音楽で評価されることは何度もあった。でも、それは「Relu」として、「すたぽら」の一員として、という仮面をかぶった上での評価だ。
今は違う。藍の前では、ただの「自分」として。
「……藍。俺な……」
少し声を落として、言葉を選ぶようにReluが続ける。
「死ぬ前に、最後の曲……作りたいねん」
藍は表情を変えずに、Reluの言葉を待っていた。
「最後まで、誰にも伝えへん。メンバーにも、ファンにも。……でも、お前にだけは聞いててほしい。せやないと、たぶん……俺、迷子なる」
その言葉に、藍は一瞬だけ目を伏せた。
それでも、すぐに顔を上げて、静かにうなずく。
「……わかった。僕は君の隣にいる。どこへ向かっても、君が自分で選んだなら、その行き先が地獄でも、最後まで付き合うよ」
Reluは、こらえきれずに笑った。
「……地獄て、お前、相変わらずセンスなぁ……」
「褒め言葉と受け取っておく」
藍が小さく笑った時、Reluの胸に、ほんのわずかだが温かい何かが戻ってきた。
まるで、冬の隙間に差し込んだ春の光のように。
***
それから数日後。
Reluは、再び“嫌われる行動”を強めていった。
くにが連絡してきたグループチャットに、平然と既読無視を続けた。
Coe.が送ってきた「新曲の仮メロどう思う?」というボイスメッセージも、一切聞かずに削除した。
さらに――
動画投稿の予定に対して、Reluは強めのコメントを残した。
「そんな安っぽい構成で曲を上げるん?舐めすぎやろ」
投稿は中止され、くには夜中に泣いていたらしい。
「Relu、どうしてあんなこと言うの……?」
ゆうがぽつりと漏らした音声メッセージが、藍の部屋のスピーカーから流れる。
Reluは黙って、それを一人で聞いた。
「……あいつ、泣きながら寝るタイプやんな……」
自分で突き刺した言葉が、自分をも痛めていくのがわかっていた。
でも、それでも止まれない。
「藍」
呼ばれて、台所から顔を出した藍が、黙って目を合わせた。
「……このままでええよな? 俺、あいつらから嫌われて、それで……それでええんよな……?」
藍は何も言わず、ただReluに近づいてそっとその手を取った。
その手は震えていた。痛みにも似た後悔と恐怖が、隠しきれずに滲んでいる。
「君が決めたことなら、僕は支える。でも、君が潰れそうになったら……僕は止める」
Reluは、その言葉を聞いてようやく涙をこぼした。
「藍……俺、怖いんや。死ぬのも、嫌われるのも、全部怖い。せやけど、選ばなあかんのが、余計に怖い……!」
藍は黙って、Reluの額にそっと自分の額を寄せた。
「なら、選ばなくていい。怖いままでも、立ち止まってても……君は君のままでいいよ」
部屋の中で流れていたのは、あの夜に作られた“希望の音”。
それが、彼の小さな灯火を消さぬようにと、静かに鼓動していた。
ーーーーーーー
「Relu、どこにいるの……?」
その問いかけに、返事はない。
すたぽらのメンバーたちは、連絡が取れなくなってから既に2週間以上が過ぎたReluを、それぞれが違うやり方で追いかけていた。
「……あいつ、完全に姿消したな」
こったろがPCの画面を前に腕を組む。連絡履歴、位置情報、SNS――どれも“空白”だった。まるでReluという人間が突然この世界から消えてしまったかのように。
「ゆさん、昨日また泣いてたよ……」
くにが言うと、Coe.は言葉を失ったまま、手にしていたマグカップをぎゅっと握りしめた。
Reluの言葉、態度、すべてが急に変わった。
無関心。攻撃的。冷たい。
それでも、メンバーたちは心のどこかで理解していた。
あれは、本当のReluじゃない。
そして、それが理解できてしまうほど、彼のことを知っていた。
「……ねえ、Reluさんは今、どこで何をしてるの?」
Coe.が誰にともなく呟いたその言葉は、部屋の空気に沈んでいった。
***
「おかえり」
藍の声が部屋に響くと、Reluはドアをゆっくりと閉めた。
帽子を脱ぎ、ため息をひとつ。
「……また、連絡無視した」
Reluはカバンを放り投げるように置き、ソファに倒れ込んだ。
「くにお、ずっと既読スルーしてる。Coe.くんからも何回も送られてきてる。全部、無視した」
藍はその隣に座ると、無言で手を伸ばし、Reluの背中にそっと触れた。
「ゆうくんのこと、ブロックした」
「……」
「ほんま、最低やな俺。どこまでいったら、あいつら俺を嫌いになるんやろな」
その言葉には、自虐と哀願が入り混じっていた。
藍は目を伏せたまま、静かに言う。
「君は、嫌われたくないんだね」
Reluは、すっと視線を宙に彷徨わせた。
「違う。嫌われたいんや。じゃないと……別れる理由がない」
「それは君の理由だろ?でも、彼らの理由ではないよ」
Reluは黙ったまま、ソファに体を沈めた。
藍の手のひらだけが、唯一彼とこの世界を繋ぎ止めていた。
「……曲、完成に近づいてきた」
ぽつりと、Reluが呟いた。
「タイトルは、“灯火(ともしび)”。あいつらとおった時間全部詰め込んだ。最後の置き土産や」
「誰にも聞かせないんだよね?」
「……お前にだけは聞いてほしい。なぁ、藍」
藍は黙ってうなずくと、優しく微笑んだ。
「わかった。君の“最後”に、僕が付き合う」
***
その頃、すたぽらのメンバーたちは、ある“仮説”にたどり着こうとしていた。
「なあ、こったろ……Reluってさ、“藍”って名前、なんか言ってなかった?」
「……確かに昔、名前出してた気がする」
「藍って人……れるちにとって、ただの知り合いじゃないと思う」
くにがそう言うと、Coe.が頷いた。
「Reluさんは……全部から逃げてるわけじゃない。唯一、自分を支えてくれる誰かのところに、行ったんだと思う」
「なら……そいつを探すしかない」
物語が再び動き出そうとしていた。
Reluの“選んだ別れ”と、すたぽらの“諦めない想い”。
それぞれが交差する日が、少しずつ、近づいていた。
