狂蘭の拠点とされる西東京の廃倉庫は、地図にすら載っていない廃村の一角にあった。
薄暗い街灯すらなく、まるで現代から切り離されたような場所。

美星華の６人は、バイクを止め、静かに様子を窺った。

「ここやな……全員、準備はええか？」
Reluがヘルメットを外し、真剣な表情で周囲を見渡す。

「もちろん！やったるで！」と、くにが拳を打ち鳴らす。

「こったろ、こっちのルートお願い。内部構造は俺が先に見てくる」
藍が冷静に指示を出す。まるで軍隊のような整然とした動きで、すたぽらの６人は廃倉庫を囲んだ。

倉庫の中では、狂蘭のメンバーが騒ぎながら酒を煽っていた。彼らは、すたぽらがここまで来るとは思っていなかったのだ。

だが、静寂は破られる。

「突入だ」

藍の合図と同時に、鉄の扉が蹴り破られた。

「美星華参上！」

怒号と共に入り込む６人。

乱闘が始まった。

狂蘭の構成員は20人近くいたが、美星華は一切怯まなかった。Reluの計算された動き、くにのパワー、こったろの隙をついた連携、Coe.の機動力、ゆうの奇抜な回避戦法、そして藍の圧倒的な個人技。

敵は次々と倒れていく。

「な……なんだこいつら……全然歯が立たねぇ！」

やがて、狂蘭の副リーダーが刃物を持ってゆうに迫った——その瞬間、

「やめろッ！！」

藍の叫びと共に、拳が副リーダーの顔面を砕いた。

ドサッ。

ゆうをかばうように立つ藍。そこに、初めて仲間たちは“怒った藍”の本気を見る。

静かに、だが深く言う。
「俺たちの仲間に、手ぇ出したら……ただじゃ済まさねぇぞ」

その言葉は、美星華のすべてを背負った者の覚悟だった。

残った狂蘭の構成員は震え、武器を放り投げて逃げ出していく。

——戦いは終わった。

数時間後、警察の到着を前にして、美星華は痕跡を残さず現場を後にする。

バイクのエンジンが再び唸りを上げ、６人は夜の街を駆け抜けた。

「藍……ありがと」
背中越しに、ゆうが呟く。

藍は黙って走り続けた。だが、その瞳はいつもより、少しだけ優しかった。

彼らはまだ強くなる。もっと高くへ。

そして——日本一のチームとなる、その物語は始まったばかりだった。