月が雲に隠れ、東京の夜は静寂に包まれていた。だがその静寂を破るように、爆音が街に轟いた。

「美星華」への挑戦状。

その送り主は、「狂蘭（きょうらん）」という暴走族だった。関東を中心に勢力を広げつつある新興グループで、その過激さと残虐さから悪名を轟かせていた。情報によれば、彼らはすでにいくつかの小規模チームを潰し、力で統一を図ろうとしていた。

そして次の標的が——「美星華」だった。

旧造船所の一室、地図と資料が並べられたテーブルの前に６人が集まっていた。

「わざわざ、挑発的なビデオまで送りつけてきたんや。舐められてるで」Reluがスマホを机に置き、動画を再生する。

画面の中で、バイクの列が暴走しながら叫んでいた。
『美星華？ハッ！口だけの連中に過ぎねぇ。こっちは本気で潰しに行くぜ。見てろよ、東京湾のネズミども』

こったろが低く唸る。「……これは完全に喧嘩売ってきてるな」

「で、どうすんの？」
ふわふわとした声でゆうが問いかける。だがその瞳は真剣だった。

藍は静かに口を開いた。「受けて立つ」

「でも、正面からぶつかるだけじゃ危ない。情報も揃えなきゃ」Reluが続ける。「奴らの構成員、拠点、資金源——全部潰すための準備が必要や」

Coe.が不安そうに口を開いた。「大丈夫かな……誰か、ケガしたりしない？」

くにが胸を叩いた。「心配すんな！俺たちには藍がいる！」

藍は何も言わず、ただ皆の目を一度見渡した。そして——
「誰も傷つけさせない。そのために、俺がいる」

静かに、だが確かに響く言葉だった。


その夜、６人はバイクを走らせながら、狂蘭の拠点と噂される西東京の廃倉庫を目指していた。

月明かりの下を駆ける列。
風を裂き、エンジン音が夜空を突き抜ける。

「美星華」は今、ひとつになろうとしていた。
それぞれが、仲間を信じて走る。

東京の夜に、新たな戦いの火蓋が切られようとしていた——。