鬼哭連合との一件から数日後、美星華のメンバーたちは旧造船所の本拠地でバイク整備をしていた。

その場の空気は、以前とは確かに変わっていた。藍に対する目線が、どこか柔らかくなっていたのだ。

「なぁ、藍。ここのキャブ調整、俺じゃよく分かんねぇ。ちょっと見てくれない？」
くにが気軽に声をかけた。

藍は無言で歩み寄り、数秒キャブレターを確認すると、軽く手元の工具を動かした。「これで吹け上がりがよくなる」

「マジか！ありがと！」
くにの明るい声が、旧造船所に響いた。

以前なら、誰も藍にそんな風に頼ることはなかった。
だが今は違う。

「ちょっといい？」
Coe.が近づいてきて、小さな苺柄のヘルメットを手にしていた。
「これ、俺なりにカスタムしたんだけど……変じゃない？」

藍は少しだけ眉を上げたが、静かに答えた。
「……似合ってると思う」

Coe.は目を丸くして、照れたように笑った。「そっか……よかったぁ〜！」

「へぇ、藍が褒めるなんてな」
こったろが冗談まじりに声をかけた。「なんか、前より話しやすくなったよな」

藍は少し戸惑ったように目を伏せた。

「……別に、変わってない」

「でも、俺らが変わった。お前を知ろうとした。そしたら、ちゃんと伝わってきたんや」
Reluがそう言って、そっと肩を叩いた。

その言葉に、藍は一瞬だけ、笑ったような気がした。

夜、いつものようにバイクで走る音が旧造船所に響く。
６人の影が、月明かりのもとに並んでいた。

彼らの間にあった壁は、確かに少しずつ崩れ始めていた。

そして、次なる試練が彼らを待っていた——。