Reluは、昔から走ることしか知らなかった。

彼の中学時代、大阪の西成で名を馳せた“ストリートゼロ”という非公式な地下レースチームに所属していた。メンバーのほとんどは非行少年。日中は工場や港湾で日雇いをして金を稼ぎ、夜になれば改造バイクで命を賭けた無謀なレースをする。

そこでは友情も情けも通用しない。ただ速く、そして強くなければ、明日の居場所すら奪われる。

Reluは、当時最年少でありながら“ゼロナイト”と呼ばれる非合法ナイトレースで連勝を重ね、"悪魔の関西魂"と呼ばれていた。

しかし、ある夜のレースで事故が起きた。相手のブレーキが仕掛けられていたことに気づかず、仲間の一人が目の前で壁に激突した。

Reluは、勝っていた。
だが、勝ちを得るために、誰かが命を落とした。

その日を境に、彼はストリートゼロから姿を消し、関東へ流れ着いた。

誰にも過去を話さないまま、“美星華”へ加わった。

だが、その瞳の奥には、今も夜を駆け続けたあの頃の影が残っていた——。