東京湾岸線での勝利から数週間。美星華の名は全国に響き渡り、暴走族の頂点にまた一歩近づいていた。だが、頂点に立つということは、全方位から狙われるということでもある。

「九州に、“天魔連合”って連中が現れたらしい」Reluが地図を広げながら語る。

天魔連合——九州最大の連合チームで、無慈悲な戦法と圧倒的な力で西日本を掌握しつつある。

藍が地図をじっと見つめながら言った。「……逃げ道はねぇな。行くしかない」

今回の舞台は福岡。伝統と反骨精神が息づくこの地に、美星華は足を踏み入れた。

博多駅前には、無数の特攻服が並ぶ。中でも異彩を放つのは、天魔連合の総長・紅牙（こうが）。真紅の目を思わせる視線と、冷静沈着な頭脳を持つリーダーだった。

「美星華……ほう。確かに名は知っている。だが、俺たちを超えるには足りねぇ」

こったろは少し緊張しながらも言う。「やってみなきゃ、分かんねぇっすよ」

紅牙は笑った。「いいだろう。福岡の夜を、お前らのために赤く染めてやるよ」

決戦は、福岡都市高速環状線——通称“赤輪（せきりん）”で行われることとなった。

そこは、幾度も命を落とす者を出した危険なコース。美星華にとっても未知の領域。

Coe.がつぶやく。「なんか、ここ……空気が違う」

ゆうは不安そうに頷いた。「でも、やるしか……ないよね」

くにが拳を握る。「ここで逃げたら、もう“日本一”なんて言えねぇ！」

レース当日、暴走族たちの熱気で福岡の夜は熱を帯びていた。

疾風のように走る美星華。道を裂き、火花を散らしながら、彼らは一つの意思で突き進む。

しかし、紅牙の走りは圧倒的だった。

Reluが歯を食いしばる。「……くそっ、読み切れねぇ……！」

そのとき、藍が無線で言う。「迷うな。心で走れ。あの夜、俺たちが誓ったものを思い出せ」

その言葉が仲間に火を灯す。

くにが加速し、Coe.がラインを読み、こったろが絶妙なタイミングで仕掛け、ゆうが風のように舞い、Reluが冷静に隙を突いた——

そして藍が最後に、一陣の風の如く抜き去った。

勝負は決した。

紅牙は肩で息をしながら、うっすらと笑う。「……見事だった。美星華、お前たちの時代だ」

その瞬間、九州の夜空に新しい伝説が刻まれた。

だが、彼らの戦いはまだ終わらない。

日本一——その称号の先にあるものを求め、美星華は次の走りへと向かっていく。