札幌を離れた美星華の面々は、北海道の他都市にも影響を広げつつあった。

彼らが次に向かったのは旭川——そこは凍覇の残党が拠点とする最後の砦だった。

「ここは一番統制が厳しいって話だな」Reluがヘルメットを脱ぎながら言う。

「でも、いちばん心が閉じてる場所でもあるんだと思う」ゆうがぽつりとつぶやいた。

彼らの前に現れたのは、凍覇の“氷刃（ひょうじん）”と呼ばれるサブリーダー、氷室 彰（ひむろ・あきら）。

「お前らのやってることは混乱を招くだけだ。人を焚きつけて、燃やして、灰にするだけだ」

「灰から芽は出るんだよ。……あんたはそれを見たことがないだけだろ？」藍の言葉に、氷室の目が一瞬揺れる。

対話の糸口すら見つからぬまま、緊迫した状況は続いた。

ある夜、地元の少年がすたぽらのもとを訪れた。「……俺、お前らみたいに、自由に走りたい」

少年は凍覇に兄を奪われたという。

「お前らが来て、街の空気が少し変わった。希望っていうか……温度が戻った気がする」

その言葉に、Coe.の目から自然と涙がこぼれた。「……その気持ち、絶対に裏切らない」

美星華は、街を巻き込んで氷室との最終対決に挑む。

統率による支配か、信念による自由か。

Reluは言った。「過去を乗り越えた俺たちには、守るものがある。だから強い」

藍が続ける。「この道の先に何があるかなんてわからない。でも——だからこそ、走る意味がある」

雪の降る夜、旭川の広場でぶつかり合う若者たち。

静寂を破るように、氷室のバイクが転がり、彼は地面に膝をついた。

「お前らの走り……確かに届いた。……あいつらには見せてやれなかった景色だ」

彼の言葉に、すたぽらの仲間たちは無言でうなずいた。

旭川に灯った新たな光。

やがて、北海道全土に広がる熱。

「日本一なんて、ただの通過点かもしれない」こったろが空を見上げる。

「でも、目指していいよな。仲間がいれば」くにが笑う。

「そう。だって俺たちは……美星華だから」ゆうが微笑んだ。

彼らの旅は、まだまだ続く。