月が高く昇る頃、美星華の６人は静かに多摩の旧工場を見上げていた。
無機質なコンクリートと錆びた鉄骨がむき出しのその場所には、確かに異様な空気が漂っていた。

「ここが……狂蘭の根城か」くにが呟く。

「うわ、なんかホラー映画のロケ地みたいやん……」Reluが苦笑する。

「でも、この先に“牙”がいる。油断は禁物だ」藍の声には緊張がにじむ。

ゆうが小さくうなずく。「ここまで来たら、もう戻れないもんね」

「戻らねーよ」こったろが鋭い目で前を見据える。「すたぽらが、ここで終わるなんて……絶対、させねえ」

それぞれが静かに頷き、ヘルメットを被った。

バイクのエンジンが一斉に咆哮し、重い空気を引き裂く。

突入——。

旧工場のゲートをくぐると同時に、金属バットを持った男たちが一斉に飛び出してきた。

「来やがったな、美星華ぁぁああ！」

それはまるで地獄の門が開いたかのような騒乱だった。

藍が最前線に出る。「来いよ、牙ども……！」

重い一撃がぶつかり合い、火花が散る。

Reluとこったろは背中を合わせて敵を蹴散らし、Coe.とくには翻弄されながらも互いを庇い合う。

ゆうは一見頼りなさげに見えるが、その動きはしなやかで鋭い。

「俺たちは、バラバラやなかった」Reluが叫ぶ。「もう、誰にも引き裂かせへん！」

敵の数は圧倒的だった。

だが、美星華の６人はひるまなかった。

１人が倒れそうになれば、他の誰かが手を伸ばす。

「俺らは……家族やからな！」くにが叫ぶ。

敵のリーダー格が前に出てきた。巨大な体格、鋭い目——牙の頭・魁（かい）だ。

「よくここまで来たな。だが、ここで終わりだ」

藍が前に出た。「終わらせるのは俺たちだ。未来は、俺たちが奪い返す」

魁と藍、互いににらみ合い、そしてぶつかる。

拳と拳、魂と魂の激突だった。

藍の拳が魁の顎を正確にとらえた瞬間、静寂が訪れた。

魁がゆっくりと倒れ、地面に崩れ落ちる。

——勝った。

誰かがそう呟いたとき、空の月が静かに雲間から顔を覗かせた。

「……夜が、明ける」ゆうが小さく呟いた。

美星華は勝利した。

だが、それは始まりでもあった。