証拠 west.
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朝の空気は、昨日の雨を引きずったまま、少しひんやりとしていた。街路樹の葉先から水滴が落ち、アスファルトに淡い輪を描いていく。悠斗は傘を持っていなかった。いや、持っていたが差す気になれなかった。昨日も今日も、自分の中はずっと雨模様のままだから。
通学路を歩く足取りは重い。イヤホンから流れる音楽は好きなはずの曲なのに、今日はどこか響かない。音楽さえ、自分の心をなぞってくれないような気がした。
「…なんで、こんなに息苦しいんだろ」
吐き出す声は小さく、誰にも届かない。通り過ぎる車の音にかき消されていった。
教室に着けば、同級生たちの声がそこら中に飛び交う。笑い声、文句、授業の愚痴。いつもの日常の音のはずなのに、悠斗にはどこか遠い。自分だけが、この場所に浮いているようだった。
「おい、悠斗! 昨日の宿題やった?」
「ん…ああ」
友人の声に反応して返事をする。反射のように。笑っているようで、笑ってはいない。気づいてほしい気持ちと、気づかれたくない気持ちが同時に渦を巻く。
昼休みも、皆が盛り上がる輪の中で、悠斗はただ笑顔を作っていた。何を話していたかも覚えていない。けれど、笑っていないと壊れそうな気がした。
放課後。
家に帰ると、部屋は静まり返っていた。親は共働きで帰宅は遅い。兄弟もいない。スマホの通知はゼロ。誰も自分を必要としていない世界が、ここには広がっている。
部屋の隅に置かれたギターに目がいった。中学のときに買ってもらった安物。もう塗装も剥がれてきている。それでも、唯一の“声”だった。
何も考えずに弦をかき鳴らす。音はバラバラで、下手くそだ。それでも、何かを吐き出したかった。コードの響きが、心の奥のざわめきをすくい上げてくれるようで。
「…消えちまえ、なんて、思えば楽になるのかな」
ポツリと落としたその言葉は、誰に聞かせるでもなく、空気の中に消えていった。
そう考えた自分を責める気力さえなかった。
夜。
ベッドに潜っても、まぶたの裏がざわざわする。眠れない。眠りたくない。目を閉じれば、孤独が迫ってくるようで怖かった。
暗闇の中、ギターを引き寄せる。部屋の明かりもつけないまま、ただ音を鳴らした。
かき鳴らす音に、心が少しだけ震える。震えながらも、生きているという感覚がそこにあった。
壊れかけた自分を、どうにか音だけが繋ぎ止めてくれている。
悠斗は弦を強く弾いた。音が割れて、指先が痛む。けれど、それでいいと思った。痛みがあれば、まだここにいると確かめられるから。
通学路を歩く足取りは重い。イヤホンから流れる音楽は好きなはずの曲なのに、今日はどこか響かない。音楽さえ、自分の心をなぞってくれないような気がした。
「…なんで、こんなに息苦しいんだろ」
吐き出す声は小さく、誰にも届かない。通り過ぎる車の音にかき消されていった。
教室に着けば、同級生たちの声がそこら中に飛び交う。笑い声、文句、授業の愚痴。いつもの日常の音のはずなのに、悠斗にはどこか遠い。自分だけが、この場所に浮いているようだった。
「おい、悠斗! 昨日の宿題やった?」
「ん…ああ」
友人の声に反応して返事をする。反射のように。笑っているようで、笑ってはいない。気づいてほしい気持ちと、気づかれたくない気持ちが同時に渦を巻く。
昼休みも、皆が盛り上がる輪の中で、悠斗はただ笑顔を作っていた。何を話していたかも覚えていない。けれど、笑っていないと壊れそうな気がした。
放課後。
家に帰ると、部屋は静まり返っていた。親は共働きで帰宅は遅い。兄弟もいない。スマホの通知はゼロ。誰も自分を必要としていない世界が、ここには広がっている。
部屋の隅に置かれたギターに目がいった。中学のときに買ってもらった安物。もう塗装も剥がれてきている。それでも、唯一の“声”だった。
何も考えずに弦をかき鳴らす。音はバラバラで、下手くそだ。それでも、何かを吐き出したかった。コードの響きが、心の奥のざわめきをすくい上げてくれるようで。
「…消えちまえ、なんて、思えば楽になるのかな」
ポツリと落としたその言葉は、誰に聞かせるでもなく、空気の中に消えていった。
そう考えた自分を責める気力さえなかった。
夜。
ベッドに潜っても、まぶたの裏がざわざわする。眠れない。眠りたくない。目を閉じれば、孤独が迫ってくるようで怖かった。
暗闇の中、ギターを引き寄せる。部屋の明かりもつけないまま、ただ音を鳴らした。
かき鳴らす音に、心が少しだけ震える。震えながらも、生きているという感覚がそこにあった。
壊れかけた自分を、どうにか音だけが繋ぎ止めてくれている。
悠斗は弦を強く弾いた。音が割れて、指先が痛む。けれど、それでいいと思った。痛みがあれば、まだここにいると確かめられるから。