病みクラ すたぽら
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――その日、世界が音を立てて歪み始めた。
スターライトポラリス、通称すたぽら。顔出しをしない男性5人組の音楽ユニットとして活動を続け、人気を博していた。
それぞれの個性と才能が化学反応を起こし、画面越しでも伝わる温度と熱量に惹かれる者は後を絶たなかった。
その夜も、彼らはいつも通り、雑談配信をしていた。ただの、ありふれたトークだった。誰かが笑い、誰かが突っ込み、誰かがちょっとだけ噛んで、それがまた可笑しくて、視聴者も一緒に笑った。
――その「ちょっとした噛み」が、すべての発端だった。
「いやそれ、バカの発想やん」
画面の向こうで、関西弁の声が冗談めかしてそう言った。Reluだった。
たしかに言い方は強かったかもしれない。でも、彼のファンなら知っている。
Reluの毒舌は愛情の裏返しであり、仲間を想っているからこその「ノリ」だということを。
けれど、切り抜かれたその一言だけが、X(旧Twitter)に投稿された。
《すたぽらのRelu、他メンバーに対して『バカの発想』と暴言》
見出しは過激に、言葉は断片的に、真意は置き去りにされて、動画だけが独り歩きする。
最初は、「また切り抜きか」「ほんとマスゴミ脳多すぎ」と一部のファンが擁護していた。
だが、火種は拡散されることによって勢いを増す。なにも知らない第三者が飛びつき、やがて野次馬の群れと化していく。
《これが本性?》《まじで無理》《何様だよ》
次々と投げつけられる言葉。
そこには、Reluを知ろうとする姿勢もなければ、背景を見ようとする眼差しもない。
ただ、焚き火に薪をくべるように、誰かを燃やす快感に酔っているだけだった。
翌朝、公式の告知アカウントが静かに呟いた。
《この度の件につきまして、本人より説明を行わせていただきます》
そこに添えられていたのは、Coe.の名義で投稿された謝罪文だった。
【お騒がせしてしまい、申し訳ございません。メンバー間でのやりとりにおいて、言葉が強く受け取られてしまったことを重く受け止め、今後より一層、言葉選びに配慮してまいります】
だが、その文章にもすぐに反応がついた。
《誠意が見えない》《謝罪の体をなしてない》《テンプレ文書》
Coe.は震える手でスマホを置いた。彼の心に浮かんでいたのは、ただ一つ――
(なんで、こうなったんだ……)
画面の向こうの誰かにとっては、ただの出来事かもしれない。でも、自分たちにとっては、これは『日常の崩壊』だった。
その夜、すたぽらのメンバー用グループチャットは一度も動かなかった。
音楽が鳴らない夜。
声を交わさない夜。
綻びは、静かに、確かに広がっていった。
スターライトポラリス、通称すたぽら。顔出しをしない男性5人組の音楽ユニットとして活動を続け、人気を博していた。
それぞれの個性と才能が化学反応を起こし、画面越しでも伝わる温度と熱量に惹かれる者は後を絶たなかった。
その夜も、彼らはいつも通り、雑談配信をしていた。ただの、ありふれたトークだった。誰かが笑い、誰かが突っ込み、誰かがちょっとだけ噛んで、それがまた可笑しくて、視聴者も一緒に笑った。
――その「ちょっとした噛み」が、すべての発端だった。
「いやそれ、バカの発想やん」
画面の向こうで、関西弁の声が冗談めかしてそう言った。Reluだった。
たしかに言い方は強かったかもしれない。でも、彼のファンなら知っている。
Reluの毒舌は愛情の裏返しであり、仲間を想っているからこその「ノリ」だということを。
けれど、切り抜かれたその一言だけが、X(旧Twitter)に投稿された。
《すたぽらのRelu、他メンバーに対して『バカの発想』と暴言》
見出しは過激に、言葉は断片的に、真意は置き去りにされて、動画だけが独り歩きする。
最初は、「また切り抜きか」「ほんとマスゴミ脳多すぎ」と一部のファンが擁護していた。
だが、火種は拡散されることによって勢いを増す。なにも知らない第三者が飛びつき、やがて野次馬の群れと化していく。
《これが本性?》《まじで無理》《何様だよ》
次々と投げつけられる言葉。
そこには、Reluを知ろうとする姿勢もなければ、背景を見ようとする眼差しもない。
ただ、焚き火に薪をくべるように、誰かを燃やす快感に酔っているだけだった。
翌朝、公式の告知アカウントが静かに呟いた。
《この度の件につきまして、本人より説明を行わせていただきます》
そこに添えられていたのは、Coe.の名義で投稿された謝罪文だった。
【お騒がせしてしまい、申し訳ございません。メンバー間でのやりとりにおいて、言葉が強く受け取られてしまったことを重く受け止め、今後より一層、言葉選びに配慮してまいります】
だが、その文章にもすぐに反応がついた。
《誠意が見えない》《謝罪の体をなしてない》《テンプレ文書》
Coe.は震える手でスマホを置いた。彼の心に浮かんでいたのは、ただ一つ――
(なんで、こうなったんだ……)
画面の向こうの誰かにとっては、ただの出来事かもしれない。でも、自分たちにとっては、これは『日常の崩壊』だった。
その夜、すたぽらのメンバー用グループチャットは一度も動かなかった。
音楽が鳴らない夜。
声を交わさない夜。
綻びは、静かに、確かに広がっていった。