たからもの、一つだけ。
幼さの残る顔で言われて、頭の中で何かがぷつんと切れた。キスをして、もう一度彼の目を見つめる。
「後悔しても知らないからな」
抱き寄せれば細い肩が僅かに震えた。
「大丈夫。後悔してもいいと思うくらいには、俺、宇美原さんのこと気になっているから」
また、彼はこちらが抑えられなくなるようなことを言う。
「ここでもいいけど、ベッドに行くか」
生々しいことを言えば、うっすら赤くなった彼が頷いた。逸る気持ちで、小さな身体を抱き上げて寝室まで運んでやる。
ベッドに下ろした彼に覆い被さるようにすれば、彼の身体が強張るのが分かった。胸の音が聞こえそうなほど緊張が伝わってくるが、ここまで来てもうやめられない。
「矢名」
「ん……」
キスをして身体に触れた。衣服を取り払って、彼にもう後戻りはできないと分からせる。
「宇美原さん」
やはり怖くなった彼に抵抗されるのではないかと、その心配は杞憂だった。彼もぎこちなくこちらに手を伸ばしてくる。慣れない様子で宇美原の腕を掴むようにするから、ふっと笑って、その腕を自分の背中へと誘導してやる。しっとりとした肌が触れ合って、意外なほどの心地よさに包まれる。同じ男だというのに、彼の肌は白くて吸いつくように宇美原を引き寄せる。
「好きだ」
強く抱きしめてやれば、彼の腕にも力が籠もった。隙間なく肌を合わせているだけで、堪らなく感じてしまう。若い頃は毎晩のように一夜の相手と寝たし、際どいプレイもしてきた。だがそのどれもが子どもの遊びだったと思えるほど、目の前の相手に興奮して、欲しいと思ってしまう。
欲望のまま、壊れるほど激しく抱いてやりたい。けれどどこまでも大事にして、彼が感じている様を見ていたい。様々な想いが湧き上がって、そんな想いに堪らなく興奮している自分に気がつく。
「矢名」
恋人のように呼んで、腰を揺らしてその部分を擦り上げた。
「ん……」
彼の中心が反応して、先走りで濡れていく。彼も感じてくれているのが分かれば、抑えが利かなくなる。
「矢名の中に入りたい」
耳元で許しを請えば、彼がまた少し赤くなった。頷いてくれた彼の脚を開いて、その部分を慣らしていく。潤滑剤を使って指を滑り込ませれば、彼が擽ったそうに身体を捩った。そのうち別の感覚に支配されていくように、彼が声を上げる。艶めかしく腰を揺らす姿に、宇美原の方が抑えられなくなる。
「入るぞ」
「うん」
息を上げる彼に宛てがって、ゆっくりと腰を進めた。強烈な締めつけを感じて、先の部分だけで達してしまいそうになる。初めての男に手加減してやらなければと分かっていて、それでも耐えられずに一度に貫いてしまう。
「や……、宇美原さん、ダメ」
「矢名」
もう逃してやることなどできなかった。自分でも驚くほど余裕をなくして責め立ててしまう。
「宇美原さん。宇美原さん」
自分を呼ぶ彼が愛おしくて、同じくらい、綺麗なものを汚して壊してしまいたい衝動に駆られて、彼の身体を貪った。おかしくなりそうな快楽に、我を忘れるように腰を使う。
やがて耐えきれなくなった彼が先に精を放った。その瞬間一際強い締めつけにあって、宇美原も彼の中に熱いものを吐き出してしまう。
慣れていた筈の自分が驚くほど我慢が利かなかった。だが恥じることはないと思える。それほど好きな相手と抱き合えた。だから今夜はこれでいい。
「……身体、辛くないか?」
一度では収まらず何度か求め合って、何もかも曝け出したあとで緩く抱き合った。夢中になったあとの疲労感が心地いい。隣の涼本への愛おしさが募って、背中から腕を回して抱き寄せる。
「大丈夫です。今のところ」
「明日は大変なことになるかもしれないな」
ベッドから動けない彼の世話をするのも楽しいだろうと、自分らしくもないことを思って笑った。
「週明けから仕事復帰だと言ったのに、宇美原さんは手加減がないですね」
「俺の理性を奪うお前が悪い」
「なんですか、その理屈は」
わざと頬を膨らませて背を向ける彼を、後ろから抱きしめてやる。
「なぁ、矢名」
肩に顔を埋めるようにして、自分の願いを告げてしまおうと決めた。柄にもなく、彼の答えに怯えて鼓動が速まる。
「恋人として、ずっとここにいてくれないか? 俺は矢名が好きだ。これからもずっと」
飾りのない宇美原の気持ちだった。抱かれたら自分の気持ちが分かるかもしれないと言っていた、彼の気持ちは今どう動いているだろう。
「……いいよ」
小さく声が返ってきた。
「俺、やっぱり宇美原さんが好きみたい……っ」
終わらないうちに、身体を返して抱いていた。愛しさのままキスを贈れば、彼もぎこちなく抱き返してくれる。
「矢名、好きだ」
「うん」
応えた彼の顔が幸せそうで、この時間が嘘ではないと知った。気持ちが抑えられずに、キスをして、壊してしまいそうなほどその細い身体を抱きしめる。
もう彼は独り身だ。ルール違反ではない。好きなだけ愛し合って暮らしていける。今からは自分の恋人だ。
その事実を噛みしめて、腕に彼を抱いたまま眠りに就いた。
「後悔しても知らないからな」
抱き寄せれば細い肩が僅かに震えた。
「大丈夫。後悔してもいいと思うくらいには、俺、宇美原さんのこと気になっているから」
また、彼はこちらが抑えられなくなるようなことを言う。
「ここでもいいけど、ベッドに行くか」
生々しいことを言えば、うっすら赤くなった彼が頷いた。逸る気持ちで、小さな身体を抱き上げて寝室まで運んでやる。
ベッドに下ろした彼に覆い被さるようにすれば、彼の身体が強張るのが分かった。胸の音が聞こえそうなほど緊張が伝わってくるが、ここまで来てもうやめられない。
「矢名」
「ん……」
キスをして身体に触れた。衣服を取り払って、彼にもう後戻りはできないと分からせる。
「宇美原さん」
やはり怖くなった彼に抵抗されるのではないかと、その心配は杞憂だった。彼もぎこちなくこちらに手を伸ばしてくる。慣れない様子で宇美原の腕を掴むようにするから、ふっと笑って、その腕を自分の背中へと誘導してやる。しっとりとした肌が触れ合って、意外なほどの心地よさに包まれる。同じ男だというのに、彼の肌は白くて吸いつくように宇美原を引き寄せる。
「好きだ」
強く抱きしめてやれば、彼の腕にも力が籠もった。隙間なく肌を合わせているだけで、堪らなく感じてしまう。若い頃は毎晩のように一夜の相手と寝たし、際どいプレイもしてきた。だがそのどれもが子どもの遊びだったと思えるほど、目の前の相手に興奮して、欲しいと思ってしまう。
欲望のまま、壊れるほど激しく抱いてやりたい。けれどどこまでも大事にして、彼が感じている様を見ていたい。様々な想いが湧き上がって、そんな想いに堪らなく興奮している自分に気がつく。
「矢名」
恋人のように呼んで、腰を揺らしてその部分を擦り上げた。
「ん……」
彼の中心が反応して、先走りで濡れていく。彼も感じてくれているのが分かれば、抑えが利かなくなる。
「矢名の中に入りたい」
耳元で許しを請えば、彼がまた少し赤くなった。頷いてくれた彼の脚を開いて、その部分を慣らしていく。潤滑剤を使って指を滑り込ませれば、彼が擽ったそうに身体を捩った。そのうち別の感覚に支配されていくように、彼が声を上げる。艶めかしく腰を揺らす姿に、宇美原の方が抑えられなくなる。
「入るぞ」
「うん」
息を上げる彼に宛てがって、ゆっくりと腰を進めた。強烈な締めつけを感じて、先の部分だけで達してしまいそうになる。初めての男に手加減してやらなければと分かっていて、それでも耐えられずに一度に貫いてしまう。
「や……、宇美原さん、ダメ」
「矢名」
もう逃してやることなどできなかった。自分でも驚くほど余裕をなくして責め立ててしまう。
「宇美原さん。宇美原さん」
自分を呼ぶ彼が愛おしくて、同じくらい、綺麗なものを汚して壊してしまいたい衝動に駆られて、彼の身体を貪った。おかしくなりそうな快楽に、我を忘れるように腰を使う。
やがて耐えきれなくなった彼が先に精を放った。その瞬間一際強い締めつけにあって、宇美原も彼の中に熱いものを吐き出してしまう。
慣れていた筈の自分が驚くほど我慢が利かなかった。だが恥じることはないと思える。それほど好きな相手と抱き合えた。だから今夜はこれでいい。
「……身体、辛くないか?」
一度では収まらず何度か求め合って、何もかも曝け出したあとで緩く抱き合った。夢中になったあとの疲労感が心地いい。隣の涼本への愛おしさが募って、背中から腕を回して抱き寄せる。
「大丈夫です。今のところ」
「明日は大変なことになるかもしれないな」
ベッドから動けない彼の世話をするのも楽しいだろうと、自分らしくもないことを思って笑った。
「週明けから仕事復帰だと言ったのに、宇美原さんは手加減がないですね」
「俺の理性を奪うお前が悪い」
「なんですか、その理屈は」
わざと頬を膨らませて背を向ける彼を、後ろから抱きしめてやる。
「なぁ、矢名」
肩に顔を埋めるようにして、自分の願いを告げてしまおうと決めた。柄にもなく、彼の答えに怯えて鼓動が速まる。
「恋人として、ずっとここにいてくれないか? 俺は矢名が好きだ。これからもずっと」
飾りのない宇美原の気持ちだった。抱かれたら自分の気持ちが分かるかもしれないと言っていた、彼の気持ちは今どう動いているだろう。
「……いいよ」
小さく声が返ってきた。
「俺、やっぱり宇美原さんが好きみたい……っ」
終わらないうちに、身体を返して抱いていた。愛しさのままキスを贈れば、彼もぎこちなく抱き返してくれる。
「矢名、好きだ」
「うん」
応えた彼の顔が幸せそうで、この時間が嘘ではないと知った。気持ちが抑えられずに、キスをして、壊してしまいそうなほどその細い身体を抱きしめる。
もう彼は独り身だ。ルール違反ではない。好きなだけ愛し合って暮らしていける。今からは自分の恋人だ。
その事実を噛みしめて、腕に彼を抱いたまま眠りに就いた。