カタクリ色の恋噺

 快人が張り切って準備した食事の他に、慈が簡単なスープとサラダを作って、のんびりと二人の時間を過ごした。慈は名古屋での出来事を話し、快人は病院での出来事を話す。彼の傍はずっと心地よくて、やはり彼といるのが正解なのだろうと思えて、そんな自分に安堵する。
 お酒を飲み始めて、互いにシャワーを浴び終えても話が尽きることはなかった。二人とも決定的なことを言えないまま、酔ったフリをして楽しい話を続けてしまう。
 きっかけは慈のスマートフォンの通知音だった。誰だろうと確認すれば秀助からで、けれど何故か慈が文字を読む前に送信が取り消されてしまう。
「知り合いか?」
「あ、うん。友達なんですけど。どうしたんだろう? 送信が取り消されてしまった」
「誤爆ラインってやつじゃないのか? それで浮気がバレたりする」
「そうかも。でも俺はとんでもないラインが来ても、奥さんにバラしたりしない……っ」
 そこで後ろに回った快人に抱きしめられた。驚いたが、抵抗する気はないので大人しく収まって、自分も彼の腕に触れる。
「ずっと、会いたかった」
「俺も」
「今日はまだこんなことしたくないか?」
 聞かれて首を振った。
「名古屋にいる間、快人さんが心の支えだった。俺も快人さんに何か返したいって、ずっと思っていた」
「慈」
 二度目だから、快人に手を引かれて寝室に向かった。綺麗に整えられた掛けものを剥がして、二人でベッドに倒れ込む。
「ダメなら言ってくれ。慈が嫌なことはしないから」
「嫌なことなんてない。全部、快人さんの好きにしていい」
 素直な気持ちを告げれば、首元に唇が降りてきた。位置を変えて何度も押し当てられれば、身体の奥から熱い感覚が湧き上がる。
「あ……」
 シャツのボタンを外されて、肌を晒す恥ずかしさに震えたのも一瞬だった。素肌を撫でられ、胸の尖りを摘まむようにされれば、その堪らない感覚に悶えてしまう。
「慈の全部が見たい」
 言葉と一緒にベルトを引き抜かれて、ズボンも剥ぎ取られた。器用に下着も取られて、半端に掛かったシャツだけの姿になってしまう。おかしな姿に羞恥を煽られるうちに、相手も器用に全てを脱ぎ去っていた。
 素肌を寄せられ、存在を主張する彼の中心がじかに触れる。わざと押しつけるように、彼はその部分を擦り上げてくる。
「ん……」
「気持ちいいか?」
 身体の状態を読まれて頬に血が上った。
「ずっとこうしたかった」
 頬や唇にキスをしながら、彼は腰を使って互いの中心を刺激する。続けられれば、腰の奥から逃れられない快感がせり上がってくる。
 指を使って更に絡み合うようにされれば、先走りで淫らな音を立てる自分を感じた。もっと強い刺激が欲しくて腰を揺すってしまうことに、もう羞恥を感じる余裕はない。初めは快人の動きに応えていたが、そのうち彼の腕を掴んで身体を密着させてしまう。
 彼のものが大きさを増した気がして、気づいた瞬間慈の身体も昂った。このまま動いていれば彼よりずっと先に出してしまいそうで、慌てて身体を離そうとする。
「慈」
 気づいた彼に少し身体を起こすようにして抱きしめられた。ゆるゆると慈を扱く手を動かしたままでいるから、消えない身体の熱に惑わされ続ける。
「ん……」
 目を閉じて悶えるうちに、そっと彼の指先が後ろの窄まりに触れた。
「今日はここまでしない方がいいか?」
 優しく問われて首を横に振る。
「入って。快人さんに気持ちよくなってほしい」
「馬鹿が。そう言われたら我慢できなくなるだろ」
 自分を抑えるように言った彼が、何かひやりとした液体を使ってまた窄まりに触れた。初めは入り口付近を解して、その指が慈の反応を探るように中に進んでくる。好きにしていいと言ったのに、彼はじれったいほど丁寧に慣らしてくれた。後ろを使うのは初めてだが、快人が相手なら不安はない。すんなりと指が収まり、慈の身体が馴染んだところで指が増やされて、痛みではない感覚にまた声を上げてしまう。
 初めての経験に、慈の中心は萎えるどころか期待に震えていた。身体を起こして、彼の肩にしがみつくような格好で、後ろを弄られる快感に浸ってしまう。
「快人さん、もう……」
 彼の息遣いが荒くなるのにも気づいて、堪らずねだっていた。
「無理していないか?」
「平気。早く快人さんに来てほしい」
 自分で恥ずかしくなってしまうような言葉で応えれば、煽られたらしい彼が手早く自身の準備を済ます。
「辛くなったらやめるから言って」
「途中でやめられるの?」
「自信はない」
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