駆け引きトライアングル

 言葉と一緒に身体を入れ替えられて、ベッドに押し倒される。
「今日だって、実果子さんを救うことに必死な筈なのに、聡太が戸倉くんと一緒にやってきたことに動揺していた。一緒に過ごしていたのかってね」
「一緒にいましたけど、でも何もなくて」
「うん。今の聡太を見ていれば分かる。松島さんが事務所の鍵を持っていたことに落ち込んで、戦闘モードでさっきまで眠っていた僕にも、呆れずに傍にいてくれた」
 呆れる筈がない。逆にもっと素の彼を見せてほしいと思う。本当はもっとずっと傍にいたかった。
「今まで駆け引きばかりしてこんがらがっていたものを、明日から正していく。だから、今夜は何も言わずに僕のものになって」
 請われて、断る理由などなかった。頷けば首元に唇が降りてきて、角度を変えて何度も押し当てられる。シャツのボタンを外されて素肌に指を這わされれば、身体の奥から熱いものが湧き上がってくる。上半身を晒して胸の尖りを摘まむようにされて、その堪らない感覚に悶えてしまった。
「勇人さん、俺、ちょっとみっともないかも」
 過剰に反応してしまう身体が恥ずかしくて、彼の胸を押して逃れようとすれば、逆に背中に腕を回して抱き寄せられてしまった。
「僕は何度も聡太にみっともないところを見せているんだから、聡太もたまには見せて」
「勇人さんがみっともないと思ったことなんてない」
「光栄だね」
 微笑みと一緒にベルトを引き抜かれて、ズボンも剥ぎ取られてしまった。器用に下着も取られて、半端に掛かったシャツだけの姿になってしまう。おかしな姿にまた羞恥を煽られるうちに、彼も器用に全てを脱ぎ去っていた。
 素肌を寄せられて、存在を主張するように立ち上がった彼のものが、じかに富田の肌に触れる。わざと押しつけるように、彼はその部分を富田の身体で擦り上げてくる。
「ん……」
「気持ちいい?」
 身体の状態を読まれて頬に血が上った。
「好き、聡太。ごめん。僕が不甲斐ないばっかりに」
 謝ってもらう必要はない。富田も失恋に怯えて悩むばかりで、前に進もうとしなかった。現状維持でいいと思いながら、苦しさに耐えきれずに煌に寄りかかろうとまでしてしまった。その罪は胸に刻みつけて、二度と繰り返さないようにと思う。
「今は僕のことだけ考えて」
 何故か考えを読まれて、軽く咎めるように頬や唇にキスされた。そうしながら、彼は互いの中心を絡ませるように腰を使う。続けられれば、腰の奥から逃れられない快感がせり上がってくる。
「あ……」
 指を使って更に絡み合うようにされれば、先走りで淫らな音を立てる自身を感じた。もっと強い刺激が欲しくて腰を揺すってしまうことに、羞恥を感じる余裕はない。初めはただ彼の動きに応えていたが、そのうち彼の腕を掴んで肌を密着させてしまう。
 彼のものが大きさを増したのに気づけば、富田の身体も昂った。このままでは彼より先に達してしまいそうで、慌てて身体を離そうとする。
「聡太」
 気づいた彼に身体を起こすようにして抱きしめられた。ゆるゆると富田を扱く手を動かし続けるから、身体の熱に惑わされ続ける。
「ん……っ」
 悶えるうちに、そっと彼の指が富田の後ろの窄まりに触れた。
「今日はここまでしない方がいい?」
 優しく問われて首を振る。
「入ってください。勇人さんに気持ちよくなってほしい」
「そう言われたら、男はみんな我慢できなくなる」
「俺も男です」
「知っている」
 自分を抑えるように言った彼が、何かひやりとした液体を使って窄まりに触れた。初めは入り口付近を解して、富田の反応を探るように少しずつ進んでくる。彼はじれったいほど丁寧に慣らしてくれた。すんなりと指が収まり、富田の身体が馴染んだところで指が増やされる。その痛みではない感覚にまた声を上げてしまう。
「勇人さん、もう……」
 彼の息遣いが荒くなるのに気づいて、堪らずねだっていた。
「無理していない?」
「大丈夫。勇人さんに、よくなってほしい」
 途切れ途切れの言い方に煽られたらしい彼が、手早く自身の準備を済ませた。
「聡太」
 ベッドに背中を降ろされて、後ろに彼の張り詰めたものを宛てがわれる。
「……っ」
 一度に半分程押し入られて、思わず身体が強張った。
「辛い?」
「平気です。全部、来て」
 更にねだれば、我慢が利かないというように全てを収められる。
「ごめん、聡太。限界だから動く」
 宣言と同時に彼が腰を使い始めた。初めは衝撃に耐えることしかできずにいた富田も、上手く前を擦ってくれる彼の手に、また快感を募らせていく。
 彼がもっと気持ちよくなれるように、富田も彼の背に腕を回してしがみついた。そのまま後ろに力を入れるようにして締めつければ、彼が低い声を漏らす。
「ごめん。もう限界」
 そんな風に笑う彼にゾクリとする色気を感じて、富田の中心も限界まで張り詰めた。
「好き、聡太」
 切羽詰まった声に富田の方が弾けて、その締めつけに耐えられなくなったように彼も中に放った。震える身体でまた彼の背を強く抱きしめる。
「もう僕のものだ。誰にも渡さない」
「……はい」
 奇跡みたいに嬉しいことを言われているのに、嬉しすぎて上手く返せなかった。
 誤魔化しのない恋の成就がこれほど幸せなことだと思わなかった。これが欲しかった。富田だって、もう絶対に離れたくない。
「駆け引きなしで、ちゃんと話して進んでいこう」
 隣で指を絡めた彼に言われて、ただ何度も頷く時間が堪らなく幸せだった。
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