炎暑の国の至高の医師

 それに、実はゼイゲンとの経験はそれほど多くないのだ。
「まぁ、とりあえず、その初めての男とやらを今夜忘れればいい」
 ぴたりと肌を寄せられて、その大きさに怯えてしまった。
「カシンが前の男のことで苦しむ様子を見ると腹が立つんだ。だからもう、俺のことだけ考えてほしい」
 そんな風に言われれば、断ることなどできない。カシンだって、これからずっとザンヤだけを想っていたい。
「まずいな。カシンが色っぽいから、乱暴にしてしまうかもしれない」
 口ではそんなことを言いながら、彼はじれったいほど丁寧にカシンの身体を開いていった。カシンの身体が熱くなって、もう待てなくなったところで漸く宛てがってくる。
「悪い。限界だ。入るぞ」
「……っ」
 一度に半分程突き入れて、そこで肌を撫でながら待ってくれた。
「平気か?」
「はい。どうか全部……っ」
 カシンが一つ息を吐いたタイミングで全て収めてくる。
「理性が、飛びそうだ」
 彼が余裕をなくす様子に、痛いほどに胸が鳴った。本気でこの身体が欲しいと思ってくれている。その事実がカシンの心も身体も制御不能にしてしまいそうだ。
「……動いて、ください」
 カシンの身体を労るように行為を進めない彼に、こちらからねだっていた。ぎゅっと腕を掴めば、苦笑した彼がゆっくりと腰を使い始める。
「苦しくなったら止める」
「いえ、最後まで受け入れます」
 強情なカシンに諦めたように、彼が腰の動きを速める。そうされれば、カシンの身体も熱に浮かされたように、もっと欲しいという感覚に包まれていく。彼が欲しくて、背中に腕を回して身体を寄せる。じかに感じる彼の体温に、涙が零れそうになる。
「悪い。一度出す」
「来て。全部来てください」
「……っ」
 恥を捨ててねだったところで、身体の中で彼が弾けるのが分かった。感じた瞬間、カシンも自分のものを放ってしまう。
「カシン」
 激しく動いたあとだというのに、息も乱さない彼が、額と頬にキスをくれた。唇が触れたところで、漸く離れてカシンの隣に仰向けになる。
「カシンには世話ばかり掛けた。だから、これからはずっと俺が大事に護っていく」
「……もったいないお言葉です」
 考えてみれば、カシンは男で彼は国王の兄で、とても難しい恋になるかもしれない。けれど信じていこうと思う。彼は生きていてくれた。その事実があれば、この先どんな試練があっても耐えられそうな気がする。護ってくれると言うなら、お手並み拝見といこう。
「ずっと修業をしてきたんだろ? 俺が楽しいことを沢山教えてやる」
「はい。楽しみにしています」
 不覚にも涙ぐんでしまって、顔を隠すために彼の胸に顔を寄せるのだった。
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