目覚めたら傍にいて
✽オレンジコンポート✽
部屋に帰った瞬間、甘酸っぱい香りに包まれた。
「あ、お帰り、雅紀」
キッチンで鍋につききりになっている恋人が、微笑んで迎えてくれる。料理上手な彼の食事はいつもおいしいが、どうやら今煮込まれているのはスイーツの類らしい。
「コンポートですか?」
聞けば彼が驚きに瞬いて、そのあとパッと華やかな顔になった。
「珍しいものなのに流石だね。ちょっとロールケーキの中身を作ろうと思って」
彼の視線の先には近所で有名な洋菓子店の紙箱。何気なく開けてみて驚いた。クリーム入りのロールケーキとして売るものだろうに、素巻きと言えばいいのか、中身のない薄いスポンジだけ巻かれたものが鎮座している。
「珍しいでしょう? ロールケーキの不良品だったんだ。だから自分で中身を作ろうと思って」
普通、そんなときは怒って店に電話するものではないだろうか。
「ロールケーキを巻くって、一度やってみたくて」
だが楽しげな恋人を見ていれば、世間の『普通』などどうでもよくなる。だって自分はそんな恋人に参っている。
「これ、冷ましたやつ味見してみて」
スプーンを差し出されて口にする。
「おいしい?」
友聖が作ったものがおいしくない訳がないだろうと思うが、そこで悪戯心が湧いてしまう。
「うーん」
「おいしくない?」
「どうかな。友聖も食べてみて」
「……!」
言葉と一緒に仕掛けたキスは、彼の頬を膨らませることになるのだけれど。その頬がうっすら赤く染まっているから、どうやら嫌ではなかったらしい。
「……ご飯もうできているから、これを冷ます間にご飯食べよ」
「ええ。ありがとう。片付けは僕がやりますね」
「寂しいから一緒にやろう?」
「……そうですね」
もう何を言っても可愛い恋人を、一体どうしたらいいのだろう。
とりあえず、あり得ない失敗をした洋菓子店に感謝だなと、そんなことを思うのだった。
✽✽
いつか書いたミニストーリーの修正版です。
怒らない友聖とラブラブな佐々木。
部屋に帰った瞬間、甘酸っぱい香りに包まれた。
「あ、お帰り、雅紀」
キッチンで鍋につききりになっている恋人が、微笑んで迎えてくれる。料理上手な彼の食事はいつもおいしいが、どうやら今煮込まれているのはスイーツの類らしい。
「コンポートですか?」
聞けば彼が驚きに瞬いて、そのあとパッと華やかな顔になった。
「珍しいものなのに流石だね。ちょっとロールケーキの中身を作ろうと思って」
彼の視線の先には近所で有名な洋菓子店の紙箱。何気なく開けてみて驚いた。クリーム入りのロールケーキとして売るものだろうに、素巻きと言えばいいのか、中身のない薄いスポンジだけ巻かれたものが鎮座している。
「珍しいでしょう? ロールケーキの不良品だったんだ。だから自分で中身を作ろうと思って」
普通、そんなときは怒って店に電話するものではないだろうか。
「ロールケーキを巻くって、一度やってみたくて」
だが楽しげな恋人を見ていれば、世間の『普通』などどうでもよくなる。だって自分はそんな恋人に参っている。
「これ、冷ましたやつ味見してみて」
スプーンを差し出されて口にする。
「おいしい?」
友聖が作ったものがおいしくない訳がないだろうと思うが、そこで悪戯心が湧いてしまう。
「うーん」
「おいしくない?」
「どうかな。友聖も食べてみて」
「……!」
言葉と一緒に仕掛けたキスは、彼の頬を膨らませることになるのだけれど。その頬がうっすら赤く染まっているから、どうやら嫌ではなかったらしい。
「……ご飯もうできているから、これを冷ます間にご飯食べよ」
「ええ。ありがとう。片付けは僕がやりますね」
「寂しいから一緒にやろう?」
「……そうですね」
もう何を言っても可愛い恋人を、一体どうしたらいいのだろう。
とりあえず、あり得ない失敗をした洋菓子店に感謝だなと、そんなことを思うのだった。
✽✽
いつか書いたミニストーリーの修正版です。
怒らない友聖とラブラブな佐々木。