目覚めたら傍にいて

✽全部✽

「雅紀って俺のどこが好きなの?」
 二人でシンクに並んで洗い物をしながら、常々疑問に思っていることを聞いてみた。
 子ども時代から気になっていたことは聞いたが、それにしても、彼ほどの男が自分を想い続けてくれていることが不思議なのだ。いつか自分よりずっと相応しい恋人を見つけて去っていくのではないか。いつもそんな不安と戦っている。
「どうしたんですか、いきなり?」
 ふふと笑いながらも、彼はちゃんと答えをくれる。
「可愛くて、優しくて、料理上手で。ちょっと危なっかしいところも、僕を一生懸命好きでいてくれるところも好きですよ。もちろん見た目も、仕種も、声も……」
「ごめん、もういい」
 過ぎる褒め言葉に赤くなって降参する。何故恥ずかしくもなくそんなことが言えるのだ。
「お気に召しませんか? では言い方を変えましょうか。全部が好きですよ、友聖」
 一分の迷いもない言い方で言い切られて俯いてしまう。
「……全部が好きな訳ないでしょう? 迷惑掛けちゃってるとことかあるし」
「迷惑なんて掛けられた覚えがないですけどね」
 何を言っても彼は微笑みで返してくるだけだ。
「じゃあ、友聖は僕のどこが好きですか?」
 逆に問われて考える。佐々木の好きなところ。好きなところ。好きな、ところは──。
「……全部」
 呟いた途端に笑われてしまった。
「そうですか。では全部好きな者同士、これからも仲よく暮らしましょうね」
 腕がシンクの泡に浸かっているのに、器用にキスを仕掛けてくる彼にその日も降参する。
 さっき自分は一体何を悩んでいたのだったか。
 毒された思考でそんなことを思うのだった。

 ✽✽
 ただいちゃついているだけのお話。
 データを見つけた訳ではなく、記憶を頼りに書き直しています🌷
30/32ページ
スキ