目覚めたら傍にいて
「迷惑な訳がないでしょう?」
即答された。歓喜という言葉を肌で感じた。それくらい彼の喜びが伝わってくる。正面からもう一度抱きしめられる。
「僕は友聖を甘やかしたい。子どもの頃に甘えられなかった分を、全部僕が埋める。許されるなら一日中家に置いて、なんでも我が侭を聞いてあげたい」
すぐに体勢を変えられて、真上から唇を奪われる。
「好き。好きで、どうしようもない」
抑えきれないというように、また佐々木が唇を奪う。それが次第に深いものへと変わって、慣れないながらも必死に応えようとする。
「ん……」
そこでふと唇が離れた。
「佐々木さん……?」
何か間違ったことをしてしまっただろうかと思う友聖の目に、困ったように笑う彼の顔が映る。
「今日は、寝かせてあげるつもりだったんですけど」
少し遅れて言葉の意味を理解して、頬に血が上った。そんな友聖の耳元に彼が唇を寄せてくる。
「抱いてもいい?」
震えるほど艶っぽい声で言われて、全身に痺れるような感覚が走った。
「……前は了解もなく、したでしょう?」
多分彼以上に欲している自分を知られたくなくて、そんなことを言う。どうしようもなく恥ずかしくて、顔を背けてしまう。
「そうでしたね」
佐々木の笑い声が聞こえた。と思ったら友聖の頬を追って、また唇が降りてきた。
「ん……」
再開されたキスの熱さに翻弄される。背中に腕が回って、友聖も彼を抱き返す。
この間の夜とは違う。一夜のハプニングではなく自分の意志で抱かれている。そう思えば、自然と下半身が熱くなる。
「友聖」
「あ……」
唇を離すと、佐々木は器用に友聖の衣服を脱がせて、今度は首から胸へと舌を這わせてきた。
「や……」
慣れない感覚に身を捩って逃れようとするのを、彼が難なく封じる。
「もっと気持ちよくなって」
自身も裸になった彼が肌を寄せてくる。遮るものなく擦れ合う部分が、隠しようもないほど反応している。だがそれ以上に彼のものの変化も感じて、少しだけ羞恥が軽くなる。彼が腰を揺すれば絡み合うように互いのものが触れて、もどかしさが募っていく。そのうち先に進みたいという欲に襲われてしまう。
「ん……」
彼の唇が胸から下りていく。擽るように腹部を撫でたかと思うと、そのまま下りて、あっと思ったときには口に含まれていた。
「いや……、ダメだって」
流石に恥ずかしくて、彼の顔を上げさせようとする。けれどその腕には少しも力が入らない。
「佐々木、さん」
呼べば一度唇を離した彼と目が合った。
「雅紀」
「な、に?」
「雅紀って呼んで」
「……雅紀」
呼べばやめてくれると思ったのに、身体をずり上がらせようとした友聖の腰を抱き直して、彼はまた舌の動きを再開させる。脈に合わせるような巧みな舌使いに、ぎゅっとシーツを掴んで耐えてみる。
「雅紀、ダメ……。俺、もう」
「いいよ。そのまま出して」
「あ、喋っちゃダメ……。……んっ」
含んだまま喋られて、その刺激に彼の口の中で達してしまった。
「ごめん」
慌てて起き上がりかけた身体をシーツに戻され、唇に人差し指を当てられる。
「友聖はもう謝らなくていい。僕が傍にいるときは特にね」
「あの……」
「もっと気持ちよくなりましょうか」
達したばかりで頭が上手く回らない。息を乱すこちらと違い、佐々木は余裕そのものの顔で、またゆっくりと友聖の中心に触れてくる。
「ん……」
上下されればまたそこが反応していく。恥ずかしくて、なんとか彼の手から逃れようと身を捩る。すると今度はあっさり手が離された。だがその手は後ろに触れてくる。いつの間に用意したのか、潤滑剤を使ってそこに細い指が差し入れられる。
「う……」
慣れない感覚に少しだけ眉を寄せてしまえば、宥めるように唇が降りてきた。額と唇に触れられて、身体が少しだけ落ち着きを取り戻す。唇がそのまま友聖の耳元に寄せられる。
「今日は、最後までしますよ」
色っぽく宣言されてぞくりとした。初めての怖さはある。だがこのまま彼の好きにしてほしいという気持ちが強くなる。
「平気?」
「……うん」
頷いて返せば、無理はしていないと分かったのだろう。後ろの指が増やされた。丁寧に押し広げながら、二本の指が抜き差しされる。潤滑剤を足して、スムーズに受け入れる準備が進んでいく。
膝を立てて覆い被さるような姿勢でいる彼の、反るように勃ち上がったものが時々友聖の肌を掠める。そのたびに期待と不安が綯い交ぜになったような感覚に襲われて、身体を震わせてしまう。
「雅紀……」
彼に気持ちよくなってほしい。自分ももっと深い快感が欲しい。湧き上がる欲が強くなって、ねだるように手を伸ばしていた。気づいた佐々木が指を抜いて、最終確認のように強い力で抱きしめてくる。
「入りますよ」
「うん」
また一つ唇を落として、彼の身体が離れる。両足を広げられて宛てがわれると、ゆっくりそれが入ってくる。
「……ん」
初めての感覚に震える。苦しいけれどやめてほしくない。僅かな痛みが、彼と一つになることを実感させてくれる。
「大丈夫?」
「う、ん」
「初めてですから、無理はしなくていいんですよ」
「無理じゃない。今日は、ちゃんと雅紀と……」
「あまり煽ら撫でください」
少しだけ息を上げた佐々木が腰を進めてくる。
「そんな可愛いことを言われたら、流石の僕でも我慢できなくなる」
「……我慢、しなくていいよ? や……っ!」
素直に告げた瞬間、一度に突き入れられた。その大きさに、一瞬息をするのを忘れてしまう。
「息をして、友聖。そう、上手。少し力が抜けた」
佐々木に促されて、息を吸って吐く。彼の指が器用に友聖のものも刺激する。そのうちに、受け入れた部分が彼を包んで馴染んでいく。
「あ……っ」
少し抜いたものを突き入れられて、堪らず声が上がった。中の佐々木のものが一段と大きさを増して、それを感じた友聖もぎゅっと締めつけてしまう。
「煽らないで。壊してしまいそうになる」
「そんなこと、言ったって」
抜き差しを繰り返すうちに、佐々木も余裕をなくしていくのが分かった。腰の動きが激しくなって、友聖を扱く指の動きも速くなる。
「や……、もう……っ」
佐々木のスピードが上がって、縋るように彼の背に腕を回していた。中心が限界まで張り詰める。
「……っ」
前後の刺激に耐えられず、彼の手の中で二度目の絶頂を迎えていた。
「……っ! 友聖」
達したことで更に後ろを締めつけてしまったらしい。佐々木も耐え切れないというように激しく腰を打ちつけて、そのまま中で熱を放った。
「友聖」
しばらく夢と現の境目のような感覚にいて、彼のキスで引き戻される。
「平気ですか? 身体、どこも痛くない?」
「……うん」
正直、本来男を受け入れるようにできていない後ろに、最中は感じなかった痛みが残っている。腰も辛い。だがそんなことは気にならないほど幸せで、それを伝えたくて笑ってみせる。
「幸せです。感無量」
佐々木も微笑んで、友聖以上に幸せそうに言う。
「ずっと好きで好きで仕方がなかった友聖と愛し合えるなんて」
「この間も、したでしょう?」
彼の躊躇いの欠片もない台詞に照れて、ムードなく答えてしまう。
「だってこの間は僕がほとんど強引に抱いてしまいましたけど、今日は違ったでしょう?あんな風に求められたら、もうブレーキなんて効かなくなりますね」
「もう、いいって」
先程までの行為が思い出されて、頬を染めて佐々木に背を向ける。めげることを知らないらしい彼が、腰に腕を回してくる。
「好きです、友聖」
「もう知ってる」
「ふふ。お休みなさい」
「うん」
目蓋が下りて眠気が強くなっていく。今眠れば絶対にいい夢を見られると思うほど、幸せで温かくてどうしようもない。
佐々木が好きだ。その好きな彼と、どうやら自分は恋人になれてしまったらしい。
自分にも、どうしても欲しいものができた。その欲しいものを、欲しいと言って手に入れることができた。せっかく手に入れたものを手放さないように、まっすぐ生きて、気持ちを伝えていけたらいい。きっと彼はその何倍も好きだと言ってくれる。
一人噛みしめて、彼の腕を心地よく感じながら、友聖は眠りに落ちていった。
即答された。歓喜という言葉を肌で感じた。それくらい彼の喜びが伝わってくる。正面からもう一度抱きしめられる。
「僕は友聖を甘やかしたい。子どもの頃に甘えられなかった分を、全部僕が埋める。許されるなら一日中家に置いて、なんでも我が侭を聞いてあげたい」
すぐに体勢を変えられて、真上から唇を奪われる。
「好き。好きで、どうしようもない」
抑えきれないというように、また佐々木が唇を奪う。それが次第に深いものへと変わって、慣れないながらも必死に応えようとする。
「ん……」
そこでふと唇が離れた。
「佐々木さん……?」
何か間違ったことをしてしまっただろうかと思う友聖の目に、困ったように笑う彼の顔が映る。
「今日は、寝かせてあげるつもりだったんですけど」
少し遅れて言葉の意味を理解して、頬に血が上った。そんな友聖の耳元に彼が唇を寄せてくる。
「抱いてもいい?」
震えるほど艶っぽい声で言われて、全身に痺れるような感覚が走った。
「……前は了解もなく、したでしょう?」
多分彼以上に欲している自分を知られたくなくて、そんなことを言う。どうしようもなく恥ずかしくて、顔を背けてしまう。
「そうでしたね」
佐々木の笑い声が聞こえた。と思ったら友聖の頬を追って、また唇が降りてきた。
「ん……」
再開されたキスの熱さに翻弄される。背中に腕が回って、友聖も彼を抱き返す。
この間の夜とは違う。一夜のハプニングではなく自分の意志で抱かれている。そう思えば、自然と下半身が熱くなる。
「友聖」
「あ……」
唇を離すと、佐々木は器用に友聖の衣服を脱がせて、今度は首から胸へと舌を這わせてきた。
「や……」
慣れない感覚に身を捩って逃れようとするのを、彼が難なく封じる。
「もっと気持ちよくなって」
自身も裸になった彼が肌を寄せてくる。遮るものなく擦れ合う部分が、隠しようもないほど反応している。だがそれ以上に彼のものの変化も感じて、少しだけ羞恥が軽くなる。彼が腰を揺すれば絡み合うように互いのものが触れて、もどかしさが募っていく。そのうち先に進みたいという欲に襲われてしまう。
「ん……」
彼の唇が胸から下りていく。擽るように腹部を撫でたかと思うと、そのまま下りて、あっと思ったときには口に含まれていた。
「いや……、ダメだって」
流石に恥ずかしくて、彼の顔を上げさせようとする。けれどその腕には少しも力が入らない。
「佐々木、さん」
呼べば一度唇を離した彼と目が合った。
「雅紀」
「な、に?」
「雅紀って呼んで」
「……雅紀」
呼べばやめてくれると思ったのに、身体をずり上がらせようとした友聖の腰を抱き直して、彼はまた舌の動きを再開させる。脈に合わせるような巧みな舌使いに、ぎゅっとシーツを掴んで耐えてみる。
「雅紀、ダメ……。俺、もう」
「いいよ。そのまま出して」
「あ、喋っちゃダメ……。……んっ」
含んだまま喋られて、その刺激に彼の口の中で達してしまった。
「ごめん」
慌てて起き上がりかけた身体をシーツに戻され、唇に人差し指を当てられる。
「友聖はもう謝らなくていい。僕が傍にいるときは特にね」
「あの……」
「もっと気持ちよくなりましょうか」
達したばかりで頭が上手く回らない。息を乱すこちらと違い、佐々木は余裕そのものの顔で、またゆっくりと友聖の中心に触れてくる。
「ん……」
上下されればまたそこが反応していく。恥ずかしくて、なんとか彼の手から逃れようと身を捩る。すると今度はあっさり手が離された。だがその手は後ろに触れてくる。いつの間に用意したのか、潤滑剤を使ってそこに細い指が差し入れられる。
「う……」
慣れない感覚に少しだけ眉を寄せてしまえば、宥めるように唇が降りてきた。額と唇に触れられて、身体が少しだけ落ち着きを取り戻す。唇がそのまま友聖の耳元に寄せられる。
「今日は、最後までしますよ」
色っぽく宣言されてぞくりとした。初めての怖さはある。だがこのまま彼の好きにしてほしいという気持ちが強くなる。
「平気?」
「……うん」
頷いて返せば、無理はしていないと分かったのだろう。後ろの指が増やされた。丁寧に押し広げながら、二本の指が抜き差しされる。潤滑剤を足して、スムーズに受け入れる準備が進んでいく。
膝を立てて覆い被さるような姿勢でいる彼の、反るように勃ち上がったものが時々友聖の肌を掠める。そのたびに期待と不安が綯い交ぜになったような感覚に襲われて、身体を震わせてしまう。
「雅紀……」
彼に気持ちよくなってほしい。自分ももっと深い快感が欲しい。湧き上がる欲が強くなって、ねだるように手を伸ばしていた。気づいた佐々木が指を抜いて、最終確認のように強い力で抱きしめてくる。
「入りますよ」
「うん」
また一つ唇を落として、彼の身体が離れる。両足を広げられて宛てがわれると、ゆっくりそれが入ってくる。
「……ん」
初めての感覚に震える。苦しいけれどやめてほしくない。僅かな痛みが、彼と一つになることを実感させてくれる。
「大丈夫?」
「う、ん」
「初めてですから、無理はしなくていいんですよ」
「無理じゃない。今日は、ちゃんと雅紀と……」
「あまり煽ら撫でください」
少しだけ息を上げた佐々木が腰を進めてくる。
「そんな可愛いことを言われたら、流石の僕でも我慢できなくなる」
「……我慢、しなくていいよ? や……っ!」
素直に告げた瞬間、一度に突き入れられた。その大きさに、一瞬息をするのを忘れてしまう。
「息をして、友聖。そう、上手。少し力が抜けた」
佐々木に促されて、息を吸って吐く。彼の指が器用に友聖のものも刺激する。そのうちに、受け入れた部分が彼を包んで馴染んでいく。
「あ……っ」
少し抜いたものを突き入れられて、堪らず声が上がった。中の佐々木のものが一段と大きさを増して、それを感じた友聖もぎゅっと締めつけてしまう。
「煽らないで。壊してしまいそうになる」
「そんなこと、言ったって」
抜き差しを繰り返すうちに、佐々木も余裕をなくしていくのが分かった。腰の動きが激しくなって、友聖を扱く指の動きも速くなる。
「や……、もう……っ」
佐々木のスピードが上がって、縋るように彼の背に腕を回していた。中心が限界まで張り詰める。
「……っ」
前後の刺激に耐えられず、彼の手の中で二度目の絶頂を迎えていた。
「……っ! 友聖」
達したことで更に後ろを締めつけてしまったらしい。佐々木も耐え切れないというように激しく腰を打ちつけて、そのまま中で熱を放った。
「友聖」
しばらく夢と現の境目のような感覚にいて、彼のキスで引き戻される。
「平気ですか? 身体、どこも痛くない?」
「……うん」
正直、本来男を受け入れるようにできていない後ろに、最中は感じなかった痛みが残っている。腰も辛い。だがそんなことは気にならないほど幸せで、それを伝えたくて笑ってみせる。
「幸せです。感無量」
佐々木も微笑んで、友聖以上に幸せそうに言う。
「ずっと好きで好きで仕方がなかった友聖と愛し合えるなんて」
「この間も、したでしょう?」
彼の躊躇いの欠片もない台詞に照れて、ムードなく答えてしまう。
「だってこの間は僕がほとんど強引に抱いてしまいましたけど、今日は違ったでしょう?あんな風に求められたら、もうブレーキなんて効かなくなりますね」
「もう、いいって」
先程までの行為が思い出されて、頬を染めて佐々木に背を向ける。めげることを知らないらしい彼が、腰に腕を回してくる。
「好きです、友聖」
「もう知ってる」
「ふふ。お休みなさい」
「うん」
目蓋が下りて眠気が強くなっていく。今眠れば絶対にいい夢を見られると思うほど、幸せで温かくてどうしようもない。
佐々木が好きだ。その好きな彼と、どうやら自分は恋人になれてしまったらしい。
自分にも、どうしても欲しいものができた。その欲しいものを、欲しいと言って手に入れることができた。せっかく手に入れたものを手放さないように、まっすぐ生きて、気持ちを伝えていけたらいい。きっと彼はその何倍も好きだと言ってくれる。
一人噛みしめて、彼の腕を心地よく感じながら、友聖は眠りに落ちていった。