呪い師は半年後皇后になる。

 望んではいないのに、知りたいと思ってしまうのは人間の性(さが)だろうか。燦汪は二八の美丈夫だ。架夭以外誰も抱いていないということはないだろう。そう思ったのに、彼からは意外な言葉が返ってくる。
「俺はお前しか抱いていない。信じてもらえないだろうが」
「そんな……、四年もずっと? ……やっ」
 足元から手を入れられてまた声を上げる。胸から上と腿の部分までを晒して、けれど腰で縛られた帯が解けないから、半端に衣を纏ったままだ。その姿が裸より卑猥に思えて、自分で帯を解こうとする。
「そのままでいい」
 手を掴んで止められた。
「せっかくの婚礼衣装だ。乱れた感じにそそられる」
 凛々しい彼がそんなことを言うのが意外だった。だが嫌な感じはない。男性の身体である架夭を求めてくれる。そのことが心を解かして、また心地よさに浸ってしまう。
「何故だろうな」
「ん……っ」
 首元を甘く噛みながら彼が微かに笑う。
「その欲が弱い方じゃない。だが不思議とお前以外を抱きたいと思わなかった。あの晩がよすぎたのかもしれない」
「そんな、私など」
 彼と過ごした晩、架夭は初めてだった。なんの知識もない自分が彼を虜にしたとは思えない。
「私など? 俺はあの晩このまま死んでもいいと思うほどの快楽を味わった。不謹慎だが本気でそう思ったんだ」
 言いながら身体の中心に彼の指先が伸びてくる。そっと撫でられてびくりと身体が震えた。そのまま擦り上げられれば、その感覚を味わうだけで一杯になる。
「気を悪くするな。俺は本気で呪術にかけられたのではないかと思った」
「……呪術?」
 その言葉には辛うじて思考が動く。
「ああ。呪い師(まじないし)だと言っていたからな。生涯お前しか抱けない術でもかけられたのではないかと。だがそれを思えば更に興奮が増すのだから、どうしようもない」
「呪い師は見えた未来で助言を与えるだけです。……そのような術など持っていない」
「ああ。分かっている」
 首元から鎖骨を撫でた唇が胸の尖りに触れる。そのまま噛まれて、声にならない声と共に身悶えた。そのまま架夭自身も撫で上げてくるのだから、もう身体はとうに降参だ。そんな身体の様子を本人よりも感じたらしい彼が、自身の帯を解いて肌を晒す。既に貫く準備ができたように立ち上がっていて、同じ男だというのに視線を逸らしてしまう。
「再会して分かった」
「燦汪様……、あ……っ」
 互いのその部分を擦り合わせられて、指とは違う感触に身を捩らせた。架夭の手に指を絡めて抵抗を封じた彼が、互いによくなるように腰を使って、まるで繋がっているような快感に襲われる。
「俺は単にお前に惚れていたらしい。惚れて、だから他の人間を抱く気になれなかった。それだけだ」
「燦汪様」
 もったいない言葉だった。
「私もずっと燦汪様に恋をしておりました。会いたくて仕方がなかった」
「嬉しい言葉だ」
 架夭の本音に触発されたように彼が腰の動きを速める。押しつけるように密着した部分から快楽の雫が零れる。それが更に滑りをよくして、二人の快楽の奥底に引き摺り込んでいく。
「架夭」
 息が上がって、彼もよくなってくれているのが分かる。
「お前を傷つけなくない。このままここに出す」
 乱された架夭には、その言葉を理解することも難しかった。彼がしたいことは全て受け入れる。その思いで、ただ頷いて返す。
「好きだ……っ、よく俺のところに来てくれた」
「燦汪、様……」
 過ぎる快楽に薄らぐ意識の中で彼の名を呼ぶ。その瞬間、びくんと全身が震えた。架夭のそれを待っていたかのように、すぐあとで彼が低く呻く。下腹部に熱いものを感じて頬に血が上った。自分の身体にまたこんなことが起こるなんて思わなかった。もう一度彼に抱かれたのだと思えば、恥ずかしさと嬉しさで訳が分からなくなる。
「架夭」
 隣に横になった彼が背中から腕を入れてくれた。
「これまでとがらりと違う暮らしの中で困難もあるだろう。だが俺が何より大事に護るからついてきてくれ」
「そのつもりです」
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