呪い師は半年後皇后になる。
「架夭から一文字取って
側室の仕来りに従い、皇宮内で呼ばれる名も改められた。皇帝が決めた一文字に位の漢字をつけたものが側室名。燦汪以外はみなその名で呼ぶことになる。
「架讃……」
大層な名前に気後れしてしまう。
就任の儀は晴れの日に行われ、霊拝堂で
まだ架夭が男だと公にした訳ではないので、あまり姿を晒すのもよくない。そんな事情で宴はせず、すぐに部屋に戻ることになった。夕刻には約束通り燦汪が訪れてくれる。
「お前はどんな姿でも美しいが、着飾れば更に美しい」
訪れた途端に、寝床で彼が触れてくる。
「美しいが、新しい婚礼衣装を作ってもよかったな。これは妾に上がったときと同じ衣だろう?」
架夭の肌を晒しながらそんなことを言う。
「香が準備しましょうと言ってくれたのですが、前の儀式からひと月しか経っていないのでこれでいいと言ったのです。これも充分高級品ですから」
「お前は欲がないな」
寝床に押し倒されて、彼が覆い被さってくる。
「食事も寝床も充分すぎるほどいいものを与えてもらっています。あまりお金をかければ国の民に恨まれてしまう」
「それはそうだが、皇帝の妻なのだからもう少しねだってもいい。俺が妻に何も与えられないダメな夫のようだ」
「そんな……っ」
胸元に手を這わされて身体が震える。彼は自身を大雑把だと言うが、こんなとき彼の手はどこまでも繊細に架夭を責め上げる。
「何か欲しいものはないのか?」
胸の尖りを摘まむようにして言うのは狡い。言うまで逃さないというように、今度は唇でその部分を噛んでくる。
「……では一つ」
彼の肩に手を回して甘えてみる。
「なんだ?」
「燦汪様の訪れがもう少し増えることを。月にあと二度、いえ、あと一度でも多く……、や……っ」
「その願いは反則だ」
一足飛びに身体の中心を責められて高い声が漏れた。気をよくしたらしい彼が衣を全て脱ぎ捨てて、乱れた姿の架夭に肌を寄せる。自分より少し高い体温を感じれば昂ってしまう。
「身体が不都合な日もあるだろう。無理強いはしないし不機嫌になったりもしないから正直に答えろ。中に入ってもいいか?」
耳元で問われて頬に血が上った。胸にむず痒いような嬉しさが広がる。皇帝なのだからこの身体を好きにしてくれていい。だがそんな風に気遣われれば嬉しくない筈がない。少なくても、今彼がその気遣いを見せるのは架夭にだけだ。
「覚悟しておけと言われた夜から、ずっと心待ちにしておりました。ここに来てからそうしなかったのは配慮だと分かっているのに、もどかしさにこちらが耐えられなくなりそうだった」
「嬉しい言葉だ」
架夭の白状に耐えられなくなったように、彼が架夭の衣をみな取り去ってしまう。恥ずかしさに掛け物を引いて隠そうとして、その手を押さえつけられるようにして止められる。
「お前の言葉はいつも心地いい。お前の言葉のお陰で八年も皇帝をやっていられる」
「もったいない言葉です」
「傷つけないように準備をする。少し耐えてくれ」
脱ぎ捨てた衣から彼が小さな器を取り出す。
「このようなときに使う軟膏だ」
「ん……っ」
軟膏を使った指が侵入してきて、慣れない感覚に身体が強張る。彼がそんな架夭の肌を空いた手で擦ってくれる。
「いい香りだろう?」
彼の言葉通り、心を落ち着かせるような香りだった。金木犀だろうか。香りと彼の声に落ち着いていく身体を、彼の指がまた少しずつ解していく。
「燦、汪様……」
