シリアルラブ
「戻りました」
「お帰りなさい。次、総務に呼ばれたので俺行ってきます」
「ああ、頼む」
相変わらずシス管は忙しい。だがなんとか海原とやっている。人事の三坂の指導のお陰で、棚橋と真中も以前より仕事をするようになって、貢も月に一度半休を取って病院に行くことができるようになった。海原が腕のいい形成外科を調べてくれて、レーザーで火傷を消す治療を受けているのだ。顔だから慎重に治療を進めていくとのことで、地道に通院している。
「それコピー取ってきます」
「あ、ありがとう」
ここは貢が感情を乱して真中にきつく当たった世界と同じ筈なのに、彼との関係は改善していた。貢がいなくなってまた三坂に厳しくされるのが嫌なのか、それとも実はあの世界と微妙に違うパラレルワールドにいるのか分からないが、どちらにせよ今いる世界を大切に生きていこうと思っている。
海原が真中に「恋人がいるから、もし俺が好きなら気持ちには応えられない」と言ってくれて、真中のアピールもなくなった。浮世離れした彼だから、ほとぼりが冷めたらまたアプローチし出すかもしれないが、そのときは正々堂々戦おう。負けることを怖れて世界を飛ぶような真似はもうしない。まぁ、望んだとしても、もうあのチャームがないから不可能なのだけれど。
「戻りました。総務に行ったら、隣の人事の三坂さんに非常識な残業はしなくていいぞと言われました」
「なんだかシス管の第二の部長みたいだ」
第一と言わなかったのはせめてもの気遣いだ。万一の場合は三坂がシス管を仕切ることもできる。そうなれば自分はどうなるだろう。それを思った棚橋が今後も常識的に仕事をしてくれればいい。とにかく今日も七時には帰れそうだ。
「今日俺の家に来ますか」
モニターを指すフリをしながら小声で言われて、ふっと気持ちが和む。
「俺の家でもいいぞ。また大井町駅が見たいって言っていただろ」
「いいですね。じゃあ、ご飯を買ってお邪魔します」
「ああ」
並行世界を移動できなくなった代わりに楽しめることがいくらでもある。
過去の後悔と不思議な体験を糧に、今いる世界を大切に生きていこう。そう密かに思って、また目の前の仕事に向かうのだった。
✽end✽
→あとがき
「お帰りなさい。次、総務に呼ばれたので俺行ってきます」
「ああ、頼む」
相変わらずシス管は忙しい。だがなんとか海原とやっている。人事の三坂の指導のお陰で、棚橋と真中も以前より仕事をするようになって、貢も月に一度半休を取って病院に行くことができるようになった。海原が腕のいい形成外科を調べてくれて、レーザーで火傷を消す治療を受けているのだ。顔だから慎重に治療を進めていくとのことで、地道に通院している。
「それコピー取ってきます」
「あ、ありがとう」
ここは貢が感情を乱して真中にきつく当たった世界と同じ筈なのに、彼との関係は改善していた。貢がいなくなってまた三坂に厳しくされるのが嫌なのか、それとも実はあの世界と微妙に違うパラレルワールドにいるのか分からないが、どちらにせよ今いる世界を大切に生きていこうと思っている。
海原が真中に「恋人がいるから、もし俺が好きなら気持ちには応えられない」と言ってくれて、真中のアピールもなくなった。浮世離れした彼だから、ほとぼりが冷めたらまたアプローチし出すかもしれないが、そのときは正々堂々戦おう。負けることを怖れて世界を飛ぶような真似はもうしない。まぁ、望んだとしても、もうあのチャームがないから不可能なのだけれど。
「戻りました。総務に行ったら、隣の人事の三坂さんに非常識な残業はしなくていいぞと言われました」
「なんだかシス管の第二の部長みたいだ」
第一と言わなかったのはせめてもの気遣いだ。万一の場合は三坂がシス管を仕切ることもできる。そうなれば自分はどうなるだろう。それを思った棚橋が今後も常識的に仕事をしてくれればいい。とにかく今日も七時には帰れそうだ。
「今日俺の家に来ますか」
モニターを指すフリをしながら小声で言われて、ふっと気持ちが和む。
「俺の家でもいいぞ。また大井町駅が見たいって言っていただろ」
「いいですね。じゃあ、ご飯を買ってお邪魔します」
「ああ」
並行世界を移動できなくなった代わりに楽しめることがいくらでもある。
過去の後悔と不思議な体験を糧に、今いる世界を大切に生きていこう。そう密かに思って、また目の前の仕事に向かうのだった。
✽end✽
→あとがき