恋愛メンタルマネジメント
思いがけず気持ちが通じ合った。部屋で一人その幸運を噛みしめて、王子に読まれても恥ずかしくない絵日記を書くつもりだった。
それが何故王子の部屋のベッドにいるのだろう。
確かに自分の意思でやってきたのに、最早ここに来た経緯を思い出せない。
「ごめん。待たせちゃったね」
そこにシャワーを終えた王子が戻ってくる。
「いえ」
「あれ? そのお茶嫌いだった? ミネラルウォーターの方がよかったかな」
何故そう平然としていられるのだ。そう突っ込みたくなるほど彼は落ち着いている。
「もっと寛いでいいよ。気になるものをなんでも見ていいし。恩田さんに見られて困るものなんてないから」
キッチンから取ってきたミネラルウォーターのボトルを渡されるが、喉を通りそうになかった。
「どう、恋人の部屋は?」
隣に座った彼に肩を抱き寄せられて緊張はピークに達した。そうだ。思ったより長く水族館で過ごしてしまって、軽く夕食も食べようということになったのだ。そこで問われるまま元彼の話をしていて、王子が「元彼でできなかったことを全部体験させてあげる」と言い出したのだ。手始めに元彼が決して入れてくれなかった自宅に招かれた。恋人の部屋に入れてもらえるという初体験は嬉しいが、「せっかくだから今夜恩田さんを僕のものにしていい?」と言われて困っている。はいと言った恩田が悪いのだが、それにしても急展開だ。いや、答えたとき、確かに離れがたいと思ったのだ。だがそれにしても王子の性急さには驚いている。
「そう緊張しないで。嫌なことはしないよ」
恩田と対照的にどこまでも落ち着いている彼が、幼い子どもに向けるような微笑みを向けてきた。ああ、やはり綺麗な人だと見惚れた顔が近づいて、瞬く隙もないまま唇が触れる。
「大丈夫そう?」
触れるだけで離れた唇に問われて頷く。ガチガチに緊張しているが嫌ではない。そんな複雑な気持ちを解かすように、彼が髪を撫でてくれる。と思ったらそのまま押し倒された。
「嫌なら言って。殴ってくれてもいい」
「そんな……っ」
湯上がりに借りていたシャツを捲り上げて、彼の手が恩田の素肌を撫でる。それだけでどうにかなってしまいそうだった。緊張と期待と、ずっと好きだった彼に触れられている高揚感。彼を待つ間に冷えた身体に温かい手が心地いい。
「ごめん。エアコンきつかったかな? 身体が冷たくなっている」
「いえ。暑かったから」
「そう? でも風邪を引くといけないからくっついて」
シャツを脱ぎ捨てた彼に肌を寄せられて、触れ合う素肌の感覚に昂ってしまった。
「よかった。嫌じゃないみたいだね」
指摘されて頬に血が上る。嫌どころか肌を擦り合わせているだけで達してしまいそうだ。元彼と別れてから恋人はいなかったし、一夜の相手を探すようなこともなかった。一人ですることもそう多くはなかったのに、一足飛びに想い人とこうなっているのだ。それは身体も喜ぶというものだ。
「嫌なんて……、あ……っ」
胸の尖りを噛まれて声が上がる。これまで恩田のイメージ通りだった王子が、ここに来て意外な一面を披露する。恩田の身体中に触れて感じる部分を暴こうとする。こちらも彼に触れて気持ちよくなってもらおうとするのに、その手を封じられて執拗に責められる。そんな彼が嫌ではない。嫌ではないがこれでは正気を保てなくなりそうだ。
「冥賀さん、俺も冥賀さんを……」
身体の中心を絶妙な触れ具合で擦られて弱音が零れた。彼の巧みな指使いに早々に放ってしまいそうで困る。
「僕のことは気にしないで気持ちよくなって。僕は相手が自分の手で気持ちよくなっていることに興奮するから」
多分恋人しか知ることのできない告白。だが恥ずかしい。元彼は入れて揺すって吐き出して終わりだったから、その違いに戸惑う。こんな風に奉仕されるのは初めてなのだ。
「酷いことはしないから後ろに触れてもいい?」
もう指だけで達してしまいそうだと思ったところで、責めるのをやめた彼がねだるように言った。どこまでも綺麗で完璧な王子にそんな顔をされて断れる筈がない。頷けば「ありがとう」とキスをくれた彼がヘッドボードのチェストを開ける。ローションと一緒に取り出された小箱はスキンかと思ったが、取り出されたものは少し違う。
「フィンドムだよ」
ぼんやり見つめる恩田に彼が答えをくれた。
「フィンドム?」
「そう。指用のコンドームだね。恩田さんを傷つけたくないから」
王子が言えばそんな台詞も美しく聞こえるのが不思議だった。すらりとした指に一般的な避妊具より薄い素材のものを嵌めたかと思うと、恩田の緊張を解くように王子がまた額にキスをくれる。
「前立腺、刺激して楽しんだことはある?」
「……いえ」
挿入されたとき擦られていたのかもしれないが、そこを意識するプレイはしたことがない。というか、王子の口から前立腺なんて単語が出たことに驚いている。
「心配しないで僕に身を任せて。気持ちよくしてあげるから」
微笑みだけはいつものままで、王子がフィンドムを嵌めた人差し指と中指にローションを落とす。
「少しずついくよ。痛かったら言って」
それが何故王子の部屋のベッドにいるのだろう。
確かに自分の意思でやってきたのに、最早ここに来た経緯を思い出せない。
「ごめん。待たせちゃったね」
そこにシャワーを終えた王子が戻ってくる。
「いえ」
「あれ? そのお茶嫌いだった? ミネラルウォーターの方がよかったかな」
何故そう平然としていられるのだ。そう突っ込みたくなるほど彼は落ち着いている。
「もっと寛いでいいよ。気になるものをなんでも見ていいし。恩田さんに見られて困るものなんてないから」
キッチンから取ってきたミネラルウォーターのボトルを渡されるが、喉を通りそうになかった。
「どう、恋人の部屋は?」
隣に座った彼に肩を抱き寄せられて緊張はピークに達した。そうだ。思ったより長く水族館で過ごしてしまって、軽く夕食も食べようということになったのだ。そこで問われるまま元彼の話をしていて、王子が「元彼でできなかったことを全部体験させてあげる」と言い出したのだ。手始めに元彼が決して入れてくれなかった自宅に招かれた。恋人の部屋に入れてもらえるという初体験は嬉しいが、「せっかくだから今夜恩田さんを僕のものにしていい?」と言われて困っている。はいと言った恩田が悪いのだが、それにしても急展開だ。いや、答えたとき、確かに離れがたいと思ったのだ。だがそれにしても王子の性急さには驚いている。
「そう緊張しないで。嫌なことはしないよ」
恩田と対照的にどこまでも落ち着いている彼が、幼い子どもに向けるような微笑みを向けてきた。ああ、やはり綺麗な人だと見惚れた顔が近づいて、瞬く隙もないまま唇が触れる。
「大丈夫そう?」
触れるだけで離れた唇に問われて頷く。ガチガチに緊張しているが嫌ではない。そんな複雑な気持ちを解かすように、彼が髪を撫でてくれる。と思ったらそのまま押し倒された。
「嫌なら言って。殴ってくれてもいい」
「そんな……っ」
湯上がりに借りていたシャツを捲り上げて、彼の手が恩田の素肌を撫でる。それだけでどうにかなってしまいそうだった。緊張と期待と、ずっと好きだった彼に触れられている高揚感。彼を待つ間に冷えた身体に温かい手が心地いい。
「ごめん。エアコンきつかったかな? 身体が冷たくなっている」
「いえ。暑かったから」
「そう? でも風邪を引くといけないからくっついて」
シャツを脱ぎ捨てた彼に肌を寄せられて、触れ合う素肌の感覚に昂ってしまった。
「よかった。嫌じゃないみたいだね」
指摘されて頬に血が上る。嫌どころか肌を擦り合わせているだけで達してしまいそうだ。元彼と別れてから恋人はいなかったし、一夜の相手を探すようなこともなかった。一人ですることもそう多くはなかったのに、一足飛びに想い人とこうなっているのだ。それは身体も喜ぶというものだ。
「嫌なんて……、あ……っ」
胸の尖りを噛まれて声が上がる。これまで恩田のイメージ通りだった王子が、ここに来て意外な一面を披露する。恩田の身体中に触れて感じる部分を暴こうとする。こちらも彼に触れて気持ちよくなってもらおうとするのに、その手を封じられて執拗に責められる。そんな彼が嫌ではない。嫌ではないがこれでは正気を保てなくなりそうだ。
「冥賀さん、俺も冥賀さんを……」
身体の中心を絶妙な触れ具合で擦られて弱音が零れた。彼の巧みな指使いに早々に放ってしまいそうで困る。
「僕のことは気にしないで気持ちよくなって。僕は相手が自分の手で気持ちよくなっていることに興奮するから」
多分恋人しか知ることのできない告白。だが恥ずかしい。元彼は入れて揺すって吐き出して終わりだったから、その違いに戸惑う。こんな風に奉仕されるのは初めてなのだ。
「酷いことはしないから後ろに触れてもいい?」
もう指だけで達してしまいそうだと思ったところで、責めるのをやめた彼がねだるように言った。どこまでも綺麗で完璧な王子にそんな顔をされて断れる筈がない。頷けば「ありがとう」とキスをくれた彼がヘッドボードのチェストを開ける。ローションと一緒に取り出された小箱はスキンかと思ったが、取り出されたものは少し違う。
「フィンドムだよ」
ぼんやり見つめる恩田に彼が答えをくれた。
「フィンドム?」
「そう。指用のコンドームだね。恩田さんを傷つけたくないから」
王子が言えばそんな台詞も美しく聞こえるのが不思議だった。すらりとした指に一般的な避妊具より薄い素材のものを嵌めたかと思うと、恩田の緊張を解くように王子がまた額にキスをくれる。
「前立腺、刺激して楽しんだことはある?」
「……いえ」
挿入されたとき擦られていたのかもしれないが、そこを意識するプレイはしたことがない。というか、王子の口から前立腺なんて単語が出たことに驚いている。
「心配しないで僕に身を任せて。気持ちよくしてあげるから」
微笑みだけはいつものままで、王子がフィンドムを嵌めた人差し指と中指にローションを落とす。
「少しずついくよ。痛かったら言って」