恋は乗り越えられない試練を与えない。
寝室に誘導することに羞恥はなかった。ベッドに座って自ら衣服を脱いでいく。
「昊……」
「大丈夫。俺を抱いても子どもはできないし、俺は透輝のどんな姿を見ても嫌わない。約束します」
そう言ってベッドに倒れて腕を広げる。
「透輝の初めての人になれたら嬉しい」
胸に倒れ込んできた彼を抱き寄せて、彼の衣服も取り去った。素肌を撫でてやれば、戸惑っていた彼の体温も上がるのが分かる。
「昊、好き」
「うん」
キスをされて、互いの肌を存分に感じ合った。今日は彼が気持ちよくなってくれればいい。そう思っていたのに、触れていれば昊も昂ってしまう。
「綺麗な身体」
「や……っ」
誰かを抱いたことはなくても、人間には本能で備わっているのかもしれない。内村が唇で肌に触れてくる。首から胸まで撫でるようにされて声が上がる。
「綺麗なのは透輝でしょう? 作り物みたいに綺麗」
このままでは夢中になってしまいそうで、彼の顔を上げて頬に触れた。経験がない訳じゃないが、昊もこんなことは久しぶり。最後にこうしたのは二年前だったか三年前だったか。だから余裕でいられる自信がない。それでも、できれば彼と長く楽しみたい。
「綺麗でも好きな相手の好みじゃなければ意味がない」
頬に触れる手を掴んで、何故か彼が拗ねてしまった。
「俺の顔は安井君人に似ていない」
「安井さん?」
何故今彼の名前が出てくるのだろう。とにかく拗ねてしまったから、頬を撫でてやる。
「昊は彼の顔が好きだと言った」
「言いましたけど……」
そこで彼の言いたいことを理解する。
「ああいう顔が好きなんだろ? じゃあ、俺の顔は好きじゃない」
「透輝」
本格的に拗ねてしまったから身体を起こして正面から抱きしめてやった。
「安井さんはファンの投手ってだけです。それに、透輝のことは新人研修のときから綺麗だと思っていたんですから、安井さんよりファン歴は長いですよ」
「ファンじゃダメ」
「恋人ですね。もしかしたら俺は入社式で見たときから透輝が好きだったのかもしれない」
「言ってくれればよかった」
機嫌を直した彼が、昊の身体を抱き直してくれる。体格が違うから、そうされると彼の胸にすっぽりと収まってしまう。
「言える訳ないですよ。透輝は人間離れして綺麗で、若い女性がみんな透輝と話せる機会を狙っていたんですから」
「最初だけだ。素で返せば十日で嫌われる」
「外階段の踊り場で会ったとき、告白されていたでしょう?」
今度はこちらがちょっと拗ねたように言ってみる。
「あの女は新入社員だから知らなかっただけだ。多分、もう俺の悪口を言っている」
「止めに行こうかな」
「いい。昊が女と話すと妬く」
「初めて聞いた」
「昊は誰にでも優しすぎる。あの女を助けたときも、優しすぎてムカついた」
そうか、そんな風に思っていたのか。
「あのときから昊が気になっていたのかもしれない。いや、違うな。席が近くなって、馬鹿みたいな仕事を押しつけられているのを見て、ずっと苛々していた」
「それはすみません」
「違う。何もできない自分に。どうして他人がこんなに気になるのか分からなくて、ますます苛々した」
「じゃあ、分かってよかった?」
「うん。今、幸せだ」
「俺も」
また背中からシーツに倒れて、お喋りは終わりとばかりに身体に触れあった。内村はやはり器用で、昊の身体を傷つけないように、それでいて快楽を引き出すように触れてくる。本当に初めてなのか疑いたくなるくらい。
「ちょっとヤバいかも」
「俺も」
互いに全裸になって求め合ううちに、触れ合うだけでは満足できなくなった。中に入って突いてほしい。口に出さなくても、彼も同じ気持ちでいると伝わってくる。
「ちょっと待って」
ヘッドボードの引き出しから、昔買ったゴムの箱と、買ったまま封も明けていない小さなローションのボトルを出してみた。
「今日は俺が準備するから待って」
「準備……」
「そう。男同士はそのまま繋がれないことくらい知っているでしょう? これをしてあっちを向いていてください」
ゴムの箱だけ渡して彼に背を向ける。
「俺がやりたい」
不意討ちで近づいた彼に耳元でねだられた。
「透輝はそんなことをしなくても……」
初めてだと打ち明けてくれたから、今日はただ気持ちよくなってくれればいいと思っていた。
「何も知らない訳じゃないし、昊の身体を傷つけるようなことはしないから」
「でも」
「昊の身体を知りたい。昊によくなってほしい」
「昊……」
「大丈夫。俺を抱いても子どもはできないし、俺は透輝のどんな姿を見ても嫌わない。約束します」
そう言ってベッドに倒れて腕を広げる。
「透輝の初めての人になれたら嬉しい」
胸に倒れ込んできた彼を抱き寄せて、彼の衣服も取り去った。素肌を撫でてやれば、戸惑っていた彼の体温も上がるのが分かる。
「昊、好き」
「うん」
キスをされて、互いの肌を存分に感じ合った。今日は彼が気持ちよくなってくれればいい。そう思っていたのに、触れていれば昊も昂ってしまう。
「綺麗な身体」
「や……っ」
誰かを抱いたことはなくても、人間には本能で備わっているのかもしれない。内村が唇で肌に触れてくる。首から胸まで撫でるようにされて声が上がる。
「綺麗なのは透輝でしょう? 作り物みたいに綺麗」
このままでは夢中になってしまいそうで、彼の顔を上げて頬に触れた。経験がない訳じゃないが、昊もこんなことは久しぶり。最後にこうしたのは二年前だったか三年前だったか。だから余裕でいられる自信がない。それでも、できれば彼と長く楽しみたい。
「綺麗でも好きな相手の好みじゃなければ意味がない」
頬に触れる手を掴んで、何故か彼が拗ねてしまった。
「俺の顔は安井君人に似ていない」
「安井さん?」
何故今彼の名前が出てくるのだろう。とにかく拗ねてしまったから、頬を撫でてやる。
「昊は彼の顔が好きだと言った」
「言いましたけど……」
そこで彼の言いたいことを理解する。
「ああいう顔が好きなんだろ? じゃあ、俺の顔は好きじゃない」
「透輝」
本格的に拗ねてしまったから身体を起こして正面から抱きしめてやった。
「安井さんはファンの投手ってだけです。それに、透輝のことは新人研修のときから綺麗だと思っていたんですから、安井さんよりファン歴は長いですよ」
「ファンじゃダメ」
「恋人ですね。もしかしたら俺は入社式で見たときから透輝が好きだったのかもしれない」
「言ってくれればよかった」
機嫌を直した彼が、昊の身体を抱き直してくれる。体格が違うから、そうされると彼の胸にすっぽりと収まってしまう。
「言える訳ないですよ。透輝は人間離れして綺麗で、若い女性がみんな透輝と話せる機会を狙っていたんですから」
「最初だけだ。素で返せば十日で嫌われる」
「外階段の踊り場で会ったとき、告白されていたでしょう?」
今度はこちらがちょっと拗ねたように言ってみる。
「あの女は新入社員だから知らなかっただけだ。多分、もう俺の悪口を言っている」
「止めに行こうかな」
「いい。昊が女と話すと妬く」
「初めて聞いた」
「昊は誰にでも優しすぎる。あの女を助けたときも、優しすぎてムカついた」
そうか、そんな風に思っていたのか。
「あのときから昊が気になっていたのかもしれない。いや、違うな。席が近くなって、馬鹿みたいな仕事を押しつけられているのを見て、ずっと苛々していた」
「それはすみません」
「違う。何もできない自分に。どうして他人がこんなに気になるのか分からなくて、ますます苛々した」
「じゃあ、分かってよかった?」
「うん。今、幸せだ」
「俺も」
また背中からシーツに倒れて、お喋りは終わりとばかりに身体に触れあった。内村はやはり器用で、昊の身体を傷つけないように、それでいて快楽を引き出すように触れてくる。本当に初めてなのか疑いたくなるくらい。
「ちょっとヤバいかも」
「俺も」
互いに全裸になって求め合ううちに、触れ合うだけでは満足できなくなった。中に入って突いてほしい。口に出さなくても、彼も同じ気持ちでいると伝わってくる。
「ちょっと待って」
ヘッドボードの引き出しから、昔買ったゴムの箱と、買ったまま封も明けていない小さなローションのボトルを出してみた。
「今日は俺が準備するから待って」
「準備……」
「そう。男同士はそのまま繋がれないことくらい知っているでしょう? これをしてあっちを向いていてください」
ゴムの箱だけ渡して彼に背を向ける。
「俺がやりたい」
不意討ちで近づいた彼に耳元でねだられた。
「透輝はそんなことをしなくても……」
初めてだと打ち明けてくれたから、今日はただ気持ちよくなってくれればいいと思っていた。
「何も知らない訳じゃないし、昊の身体を傷つけるようなことはしないから」
「でも」
「昊の身体を知りたい。昊によくなってほしい」