未来の次の恋
短いメッセージに昂っていた気持ちが鎮まる。これでいい。こうなると初めから分かっていた。こうでもしなければ彼は二度と誠と会わないまま、千布と結婚して遠くに行ってしまっていた。その前にもう一度姿が見たかった。ああ、予知で感じたのはこの気持ちだったのだとクリアな思考で理解する。
久慈が指定した駅は誠の部屋から割と遠くて、電車を乗り継いで辿り着く頃には九時近くになっていた。指定された出口を出たところでもう一度電話する。だが彼は出てくれない。まさか約束をすっぽかされたのでは。いや、予知の通りだからそれはない。でも彼は出てくれない。何故だと、信じていた気持ちが揺らぎそうになる。
十回目で漸く彼が出てくれた。
「その道を少し行くと左に曲がる道があるでしょう? そこを曲がって歩いてきて」
一方的な言葉だった。そこに何があるのかも教えてくれない。だが誠に断る理由はない。繋がったままなのに、もう何も言ってくれない電話を握りしめて、言われた通りの道を進んでいく。
左に曲がって少し歩いたところで、二階建てのこぢんまりとした建物が見えてきた。開け放たれた入口のところに制服姿の男が立っている。交番だ。彼は誠が捕まることを望んでいる。怒りはない。婚約者に怪我させられて、何十、何百と恐ろしい電話を受け続けたのだから当然だ。紺華建設の大事な御曹司。その曇りない人生を邪魔する人間は排除されるべき。それでいい。それでも一目会いたかった。
「誠」
まだ距離がある場所で彼が名前を呼んでくれる。実際に耳に届いた訳ではないが、誠と呼んでくれたのが分かる。もうそれで充分だった。ここに来た意味があった。ここに来ると決めてよかった。もう後悔はない。
「ごめん」
唇の動きで分かった謝罪に首を振って応えたところで堪えきれずに涙が落ちる。涙を拭って顔を上げたところで、すぐ傍にいた警官が誠に手を伸ばす。久慈が事前に誠の悪事を話していたのだろう。誠は拘束されて、久慈はそのまま去っていく。
「ねぇ、あんた」
警察官の手が誠の腕を掴んで、誠は目を閉じる。
久慈が指定した駅は誠の部屋から割と遠くて、電車を乗り継いで辿り着く頃には九時近くになっていた。指定された出口を出たところでもう一度電話する。だが彼は出てくれない。まさか約束をすっぽかされたのでは。いや、予知の通りだからそれはない。でも彼は出てくれない。何故だと、信じていた気持ちが揺らぎそうになる。
十回目で漸く彼が出てくれた。
「その道を少し行くと左に曲がる道があるでしょう? そこを曲がって歩いてきて」
一方的な言葉だった。そこに何があるのかも教えてくれない。だが誠に断る理由はない。繋がったままなのに、もう何も言ってくれない電話を握りしめて、言われた通りの道を進んでいく。
左に曲がって少し歩いたところで、二階建てのこぢんまりとした建物が見えてきた。開け放たれた入口のところに制服姿の男が立っている。交番だ。彼は誠が捕まることを望んでいる。怒りはない。婚約者に怪我させられて、何十、何百と恐ろしい電話を受け続けたのだから当然だ。紺華建設の大事な御曹司。その曇りない人生を邪魔する人間は排除されるべき。それでいい。それでも一目会いたかった。
「誠」
まだ距離がある場所で彼が名前を呼んでくれる。実際に耳に届いた訳ではないが、誠と呼んでくれたのが分かる。もうそれで充分だった。ここに来た意味があった。ここに来ると決めてよかった。もう後悔はない。
「ごめん」
唇の動きで分かった謝罪に首を振って応えたところで堪えきれずに涙が落ちる。涙を拭って顔を上げたところで、すぐ傍にいた警官が誠に手を伸ばす。久慈が事前に誠の悪事を話していたのだろう。誠は拘束されて、久慈はそのまま去っていく。
「ねぇ、あんた」
警察官の手が誠の腕を掴んで、誠は目を閉じる。