未来の次の恋
素直に苦手と言う彼に嫌な感じは全くなかった。こんな風に好き嫌いを素直に告げていいのだと、頑なだった心がまた少し解けていく。
「実は俺も苦手なんです。ピエロが怖くて」
「ああ、分かる。口は笑っているのに目が笑っていない感じとか」
「そう。あのやけにカラフルな衣装も」
嫌いなものが同じだったことが嬉しくて話し続けてしまう。誠が彼に合わせて嘘を言っている訳ではないと分かったのだろう。趣味が同じで嬉しいと、彼はそのまま言葉にする。
「せっかくお店の人がくれたから、これは他の社員にあげようか」
「はい。小さい子どものいるパパなら喜んでくれそう」
二人分のチラシを誰かにあげる。些細なことも秘密の関係を楽しむようで擽ったい。
「大人っていいよね」
職場ビルの前に着いたところで久慈が満足げに笑う。
「好きなものは好き、嫌いなものは嫌いって素直に言えるでしょう? 嫌いなものには近づかなくていい自由があって、自分の気持ちで決められる。子どものままでいたいって言う人もいるけど、僕は大人になって幸福度が増した気がするんだ」
「久慈さんらしい」
好きだなと思う。彼には周りのものを幸せに変換していく力がある。
「さて、会社の歯車に戻りますか。天気がいいから寝ないようにしないと」
「マネージャーが何を言っているんですか」
呆れたように返す誠の方が、本音はもうとっくに彼に参っている。
「次の日曜、また二人で過ごそう。行ってみたいところを考えておいて。それを楽しみに仕事をするから」
「承知しました」
「それじゃ仕事だって」
また些細なことで笑いながらエントランスを入っていく。
「男同士っていいね。毎日のように二人でランチに出掛けても、そういう意味で疑われにくい」
「ちょっと、近いですって」
耳元で言われて眉を寄せてみるが、頬を染めながらでは威力はない。
「大丈夫だよ。バレるようなヘマはしないから」
彼が言えばその通りだと思えるから不思議だった。彼ならきっと二人の関係を護り切ってくれる。
本当に、彼となら大丈夫かもしれないと思えた。彼の太陽みたいな強さは誠のおかしな能力になんか負けはしない。もう惨事なんて起こらない。彼が言うように、相手に告げた時点で予知の効力は切れた。だから大丈夫。だって自分はもう彼と別れたとき、予知で見ていた未来だからと納得できる自信がない。きっとズタボロに哀しんでしまう。
「どうかした?」
エレベーター前で聞かれて慌てて首を振る。
「いえ。昼にこんなに食べるのも珍しいから、ちょっと眠くなってしまって」
「僕じゃなくて加村さんが発送部屋で寝ていたりしてね」
「そのときは残りの発送をお願いします」
「相応の対価が発生するよ」
「じゃあ、怖いからいいです」
大丈夫。ずっと一緒にいられる筈だと、胸の中で繰り返していた。
「実は俺も苦手なんです。ピエロが怖くて」
「ああ、分かる。口は笑っているのに目が笑っていない感じとか」
「そう。あのやけにカラフルな衣装も」
嫌いなものが同じだったことが嬉しくて話し続けてしまう。誠が彼に合わせて嘘を言っている訳ではないと分かったのだろう。趣味が同じで嬉しいと、彼はそのまま言葉にする。
「せっかくお店の人がくれたから、これは他の社員にあげようか」
「はい。小さい子どものいるパパなら喜んでくれそう」
二人分のチラシを誰かにあげる。些細なことも秘密の関係を楽しむようで擽ったい。
「大人っていいよね」
職場ビルの前に着いたところで久慈が満足げに笑う。
「好きなものは好き、嫌いなものは嫌いって素直に言えるでしょう? 嫌いなものには近づかなくていい自由があって、自分の気持ちで決められる。子どものままでいたいって言う人もいるけど、僕は大人になって幸福度が増した気がするんだ」
「久慈さんらしい」
好きだなと思う。彼には周りのものを幸せに変換していく力がある。
「さて、会社の歯車に戻りますか。天気がいいから寝ないようにしないと」
「マネージャーが何を言っているんですか」
呆れたように返す誠の方が、本音はもうとっくに彼に参っている。
「次の日曜、また二人で過ごそう。行ってみたいところを考えておいて。それを楽しみに仕事をするから」
「承知しました」
「それじゃ仕事だって」
また些細なことで笑いながらエントランスを入っていく。
「男同士っていいね。毎日のように二人でランチに出掛けても、そういう意味で疑われにくい」
「ちょっと、近いですって」
耳元で言われて眉を寄せてみるが、頬を染めながらでは威力はない。
「大丈夫だよ。バレるようなヘマはしないから」
彼が言えばその通りだと思えるから不思議だった。彼ならきっと二人の関係を護り切ってくれる。
本当に、彼となら大丈夫かもしれないと思えた。彼の太陽みたいな強さは誠のおかしな能力になんか負けはしない。もう惨事なんて起こらない。彼が言うように、相手に告げた時点で予知の効力は切れた。だから大丈夫。だって自分はもう彼と別れたとき、予知で見ていた未来だからと納得できる自信がない。きっとズタボロに哀しんでしまう。
「どうかした?」
エレベーター前で聞かれて慌てて首を振る。
「いえ。昼にこんなに食べるのも珍しいから、ちょっと眠くなってしまって」
「僕じゃなくて加村さんが発送部屋で寝ていたりしてね」
「そのときは残りの発送をお願いします」
「相応の対価が発生するよ」
「じゃあ、怖いからいいです」
大丈夫。ずっと一緒にいられる筈だと、胸の中で繰り返していた。