好きになったのはあなたです。
久宝と嶺の言い合いに浜野がぽかんとする。
「ああ、ごめん、浜野くん。戻ろうか」
「……はい。やっぱり田胡さんと先生の仲がよすぎてびっくりしました」
言いながら、嶺のシャツの袖を掴む浜野に、おや? と思う。苦手意識のある久宝のところに連れてきておいて、二人だけで話すのは酷いと思ったのだろうか。だとしたら悪いことをした。
「……!」
だがそこで見た久宝の表情に、それまでの思考は一度に散らされた。彼が目を細めて、何かを悟ったように口角を上げる。そこでぴんときた。
久宝が好きなのは浜野だ。可愛らしい容姿だから一目惚れだったのだろう。恋神に縋ろうと思ったのは、浜野の方は久宝を嫌っていると聞いたから。それなら全ての疑問に説明がつく。
「そうだ、例の食事の件だけど」
浜野が立ち上がったところでわざと彼にも聞こえるようにその話を持ち出すから、なんていじらしいんだと最早感動してしまった。そうか、普段は不敵な男でも、恋する男を誘うのは苦手なのか。それなら心配しなくていい。だって嶺は恋神なのだ。
「田胡さん、行きましょう」
「待って、浜野くん」
さっさと帰ろうとする浜野を呼び止めて、なんと言えば一番いいかを考える。
「浜野くん、今度先生と俺と三人でご飯に行かない?」
考えた末にごくシンプルに言った。こんなときは余計な小細工をしない方がいい。
「は? お前、何言ってんの?」
抗議の芝居をする久宝には慈悲の眼差しを向けてやる。そんな芝居はしなくていい。あなたの気持ちは分かっている。寧ろ余計なことを言わずに黙っていろ。そんな嶺の無言の圧力に気圧された彼が訝しげな顔になるが、構ってはいられない。
「えっと、田胡さんと二人なら分かりますが、何故先生と?」
彼からは当然拒絶の返事が返ってくる。
「普段俺らが行かないようないい店を知っているんだって。面白そうだから行ってみようよ。人材管理部さんがクリニックの先生と仲よくなっておいて損はないと思うよ」
「それはそうでしょうけど……」
「じゃあ、決まり。あとで俺の連絡先を教えるね」
そこまで話を進めれば浜野も折れてくれた。
「おい、お前一体なんのつもりだ」
「先生にも俺のラインを送っておきますから。方眼塗り絵のDMに」
もう二人にプライベートの連絡先を教えるくらいはよしとしようと思った。二人が上手くいくなら安いものだ。どうせ恋人同士になれば、嶺の連絡先になど興味をなくす。
「楽しみだね、久宝先生とのご飯」
「はい。田胡さんとご飯に行けるのが嬉しいです」
今はそんな風に言う浜野の気持ちをどう変えていくか。さぁ、恋神の腕の見せ所だと、すっかり神の気分でそう思った。
「ああ、ごめん、浜野くん。戻ろうか」
「……はい。やっぱり田胡さんと先生の仲がよすぎてびっくりしました」
言いながら、嶺のシャツの袖を掴む浜野に、おや? と思う。苦手意識のある久宝のところに連れてきておいて、二人だけで話すのは酷いと思ったのだろうか。だとしたら悪いことをした。
「……!」
だがそこで見た久宝の表情に、それまでの思考は一度に散らされた。彼が目を細めて、何かを悟ったように口角を上げる。そこでぴんときた。
久宝が好きなのは浜野だ。可愛らしい容姿だから一目惚れだったのだろう。恋神に縋ろうと思ったのは、浜野の方は久宝を嫌っていると聞いたから。それなら全ての疑問に説明がつく。
「そうだ、例の食事の件だけど」
浜野が立ち上がったところでわざと彼にも聞こえるようにその話を持ち出すから、なんていじらしいんだと最早感動してしまった。そうか、普段は不敵な男でも、恋する男を誘うのは苦手なのか。それなら心配しなくていい。だって嶺は恋神なのだ。
「田胡さん、行きましょう」
「待って、浜野くん」
さっさと帰ろうとする浜野を呼び止めて、なんと言えば一番いいかを考える。
「浜野くん、今度先生と俺と三人でご飯に行かない?」
考えた末にごくシンプルに言った。こんなときは余計な小細工をしない方がいい。
「は? お前、何言ってんの?」
抗議の芝居をする久宝には慈悲の眼差しを向けてやる。そんな芝居はしなくていい。あなたの気持ちは分かっている。寧ろ余計なことを言わずに黙っていろ。そんな嶺の無言の圧力に気圧された彼が訝しげな顔になるが、構ってはいられない。
「えっと、田胡さんと二人なら分かりますが、何故先生と?」
彼からは当然拒絶の返事が返ってくる。
「普段俺らが行かないようないい店を知っているんだって。面白そうだから行ってみようよ。人材管理部さんがクリニックの先生と仲よくなっておいて損はないと思うよ」
「それはそうでしょうけど……」
「じゃあ、決まり。あとで俺の連絡先を教えるね」
そこまで話を進めれば浜野も折れてくれた。
「おい、お前一体なんのつもりだ」
「先生にも俺のラインを送っておきますから。方眼塗り絵のDMに」
もう二人にプライベートの連絡先を教えるくらいはよしとしようと思った。二人が上手くいくなら安いものだ。どうせ恋人同士になれば、嶺の連絡先になど興味をなくす。
「楽しみだね、久宝先生とのご飯」
「はい。田胡さんとご飯に行けるのが嬉しいです」
今はそんな風に言う浜野の気持ちをどう変えていくか。さぁ、恋神の腕の見せ所だと、すっかり神の気分でそう思った。