好きになったのはあなたです。
「でも……」
同じ条件の筈の千木良は針を刺したあと血管を探すという暴挙を披露してくれた。そう言って一度惚れた男を下げたくはないから言葉を止める。
「まぁ、医者にも得手不得手があるってことだな」
久宝もそれ以上千木良を悪く言うことはせず、さっさと検体処理をしてしまう。
「これを外部の検査会社に送って数日後に結果が来る。それを見てから紹介状を書くから、大きな病院に検査に行ってくれ。そこで改めて採血されると思うけど、それでしばらく採血はなしの筈だから」
「いえ、そこは別に」
嶺は注射が嫌いではないし、何度血を抜かれても構わない。今戸惑っているのは久宝の医者らしい気遣いだ。
「平日だと休みを取るのが難しいようなら、グループの病院で土曜に検査してくれるところを探すけど」
「いえ。事前に言えば有休は取れますので」
「そうか。じゃあ一番信頼できて、当日に治療方針まで出るような病院に回しておく。グループ内の病院だからここの社員ならタダになると思うけど、場合によっては千円、二千円くらいの自己負担になるかもしれない」
「それも別に」
本来はその十倍以上掛かるのだから不満などある訳がなかった。だからさっきから困るのはお前のその細やかな気遣いだと、流石にはっきり言ってやることはできない。
「じゃあ、紹介状を書いたら連絡する。お疲れさん」
そう言ってあっさりと見送られて、首を傾げながらクリニックを後にすることになった。狐につままれたような気分だが、非常識な態度と裏腹に、医師としては真面目な男なのだろうと彼の評価を少し上げる。真面目に診察してくれるならそれに越したことはない。
「……採血、上手かったな」
小さなテープを貼られた左腕を上げてみるが、痛みも違和感もなかった。千木良のときのような腫れも起こらないのだろう。そこは素直に凄いと思う。
初めに思ったほど嫌な男ではないのかもしれない。嫌な男でないなら、総務部員としてできるだけ協力しようか。自分も今日診察室に怒鳴り込んでいることなど忘れて、そう思ったのだった。
同じ条件の筈の千木良は針を刺したあと血管を探すという暴挙を披露してくれた。そう言って一度惚れた男を下げたくはないから言葉を止める。
「まぁ、医者にも得手不得手があるってことだな」
久宝もそれ以上千木良を悪く言うことはせず、さっさと検体処理をしてしまう。
「これを外部の検査会社に送って数日後に結果が来る。それを見てから紹介状を書くから、大きな病院に検査に行ってくれ。そこで改めて採血されると思うけど、それでしばらく採血はなしの筈だから」
「いえ、そこは別に」
嶺は注射が嫌いではないし、何度血を抜かれても構わない。今戸惑っているのは久宝の医者らしい気遣いだ。
「平日だと休みを取るのが難しいようなら、グループの病院で土曜に検査してくれるところを探すけど」
「いえ。事前に言えば有休は取れますので」
「そうか。じゃあ一番信頼できて、当日に治療方針まで出るような病院に回しておく。グループ内の病院だからここの社員ならタダになると思うけど、場合によっては千円、二千円くらいの自己負担になるかもしれない」
「それも別に」
本来はその十倍以上掛かるのだから不満などある訳がなかった。だからさっきから困るのはお前のその細やかな気遣いだと、流石にはっきり言ってやることはできない。
「じゃあ、紹介状を書いたら連絡する。お疲れさん」
そう言ってあっさりと見送られて、首を傾げながらクリニックを後にすることになった。狐につままれたような気分だが、非常識な態度と裏腹に、医師としては真面目な男なのだろうと彼の評価を少し上げる。真面目に診察してくれるならそれに越したことはない。
「……採血、上手かったな」
小さなテープを貼られた左腕を上げてみるが、痛みも違和感もなかった。千木良のときのような腫れも起こらないのだろう。そこは素直に凄いと思う。
初めに思ったほど嫌な男ではないのかもしれない。嫌な男でないなら、総務部員としてできるだけ協力しようか。自分も今日診察室に怒鳴り込んでいることなど忘れて、そう思ったのだった。