本気の恋は占術不能

「情けないこと……」
 そこで深入りしそうになっている自分に気づいてハッとする。
「すみません。俺が聞いちゃいけないタイプの話でしたね」
 出しゃばりすぎだったかとモニターに顔を戻せば、そこに彼の顔が近づいてくる。
「そんなことはないよ。寧ろ神崎さんとも話したいって思っていたんだ」
「……力になれることでしたら協力しますが」
 冷静なフリを通しながら、数センチの距離に鼓動が煩く鳴っていた。彼の声に振動する空気まで伝わってくる。どうか頬が染まらないでくれと祈りながら、画面に視線を向けたまま、キャスター付きの椅子でさりげなく距離を取る。
「もしよければ、また二人で出掛けない? ちょっとじっくり話したいこともあるし。お礼になんでも好きなものをご馳走するから」
「……お礼はいらないですけど」
 前回出掛けたときにもすっかりご馳走になっているのだ。
「休日に上司に会いに来てもらうのも申し訳ないから」
 普通はそうだが、なんせ自分はあなたに恋をしているのだ、とは言えない。言えないがそこでふと閃くものがある。さっき彼は神崎に料理ができるなんて凄いと言った。
「それなら、俺の部屋に来ませんか? お昼ご飯を作って待っていますから」
 閃きのまま言葉に出ていた。
「それじゃ、却って負担を増やしてしまうでしょう?」
「料理は慣れているので負担ではないし、休日に外に出るのは億劫ですから」
 恥ずかしさに視線を逸らしていた直前の自分はどこかに消えていた。彼が部屋に来てくれる。こんなチャンスはもう二度とない。そう思えば大胆になる。
「どうせ俺とオコしかいない寂しい部屋ですから、遠慮なく来てください」
「オコ?」
「ocotta2です」
「ああ。あの会話アプリ。神崎さんがダウンロードしているなんて意外だね」
 ここでもオコは役に立った。流石大人気アプリだ。
「じゃあ、お言葉に甘えて遊びに行ってもいいかな? あとで材料費は出すから」
 言葉の綾でも、藤原の相談ではなく遊びにと言ってくれたのが嬉しかった。
「よかった。オコも喜びます」
 喜んでいるのは自分なのにまたオコを使って、ocotta2様様だなと、密かにそう思った。
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