冷徹秘書のムーンストーン

 髪を撫でられながら甘く囁かれて陥落した。たまには悩みなく眠りたい。高井のことは嫌いではない。それならいいではないか。正直、合田の言動に振り回されるのに疲れていた。嫌ならいくらでも逃げられる強さで手を引かれて、大人しく寝室についていく。
 セミダブルのベッドで並んで横になれば、身体を横にした高井が抱き寄せてくれた。欲のまま襲うようなことはなくて、ただ髪を撫でていてくれる。
「しないんですか?」
 わざとムードのない聞き方をすれば、彼がふっと笑った。触れた部分から身体の振動が伝わってくる。
「したいけど、堀内さんが腕の中で眠ってくれれば同じくらい嬉しいっていうか」
「乙女ですか」
「残念だけど、女の子になるのは堀内さんの方かな」
 育ちのいい彼がそんなことを言うのが意外だった。だがここまで来て逃げるつもりはない。彼の胸に身体を寄せて、今度はこちらからキスを仕掛けてやる。
「たまには俺も大事にされたい」
「そう。じゃあ、仰せのままに」
 上品な台詞が似合うと思った瞬間覆い被さられていた。いつもの優しげな目ではなく、鋭い視線で見下ろされる。
「拒否しないと本当に手を出すよ。後悔はない?」
 頷けば唇が降りてくる。何度か角度を変えて触れられたあと、彼の舌が侵入してくる。舌を絡めて欲を煽りながら、器用に堀内のシャツに手を掛けてくる。彼がこんなに手慣れているとは思わなかった。だがその方が全部委ねて浸ってしまえる。
「待って」
 一度ストップを掛けて、迷いを振り切るように胸元のムーンストーンを外した。ヘッドボードに置いてしまうまで、彼は黙って待っていてくれる。
「大丈夫。後悔はさせないから」
 堀内の気持ちを読んだような台詞だった。首筋に甘く噛みつかれて声を上げてしまう。体温が上がって、堀内も確かに彼が欲しいと思う。
「好き。堀内さん」
 彼の声に傷を癒されるように、求めて求められて、激しいのに穏やかな時間を過ごすことになった。
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