冷徹秘書のムーンストーン
「申し訳ありません」
秘書にだって休む権利はあるし、今日の待機は佐藤に頼んでいた。そう思うが言葉にするのはやめる。あまり体調がよくなさそうだ。ここで感情を爆発させるようなことは避けたい。いつもの車の傍で、山瀬が申し訳なさそうな顔で立っている。堀内に悪いと思っているのだろうが、合田に言われて断れる立場ではないから、彼を恨むつもりはない。
「一緒に巧さんのマンションまで帰ります」
「待って」
ここは合田の気の済むようにしよう。そう思ったところで高井が声を上げた。
「合田金属販売の副社長ともあろう方が、部下に休暇も与えないんですか? 世間にバレれば問題になると思いますが」
「お前に関係ない」
「いいえ。友人が休みなく働いて疲弊する様子は見ていて気分のいいものではありませんから」
そんな言い方をする彼を初めて見た。平和な世界で護られて生きてきたような彼が、合田に敵意を見せる。堀内のためだが、ここで高井まで平常心を失うのはまずい。
「高井さん、ありがとうございます。でもそういう契約なんです。申し訳ないですが今日は彼と帰らせてもらいます」
嘘を言って穏便に済ませようと思った。
「そんなのダメだよ」
「高井さん」
「もういい」
小競り合いを終わらせたのは、原因を作った合田だった。
「そんなにその男がよければ好きにしろ。俺は帰る」
山瀬に指示をして車に戻ってしまう。
「巧さん、待って」
堀内の声を無視して後部座席に乗り込んだ彼が、出せ、と山瀬に告げたのが分かる。パーキングを去る直前、山瀬が申し訳なさそうに頭を下げていく。
「平気?」
たかが数分の出来事に呆然としてしまって、彼の声に辛うじて我に返った。
「今日はお休みでしょう? 少しはあの人のことを忘れる時間も必要だよ」
彼の言葉が正しいのは分かっている。それなのに、言い表せないに苦しみに悶えていた。ICレコーダーと言われた自分が、いつからこんな不確かな感情に揺さぶられるようになったのだろう。悩む堀内を慰めるように、彼が肩に手を置いてくれる。
「大丈夫。きっと今日は気が立っていただけだよ。週明けには普通に戻るから」
合田を悪く言わない彼が大人だと思った。けれどその配慮の塊のような彼より、怒って去っていった彼が気になってしまう。
「少しドライブして帰ろう。景色がいい場所があるから」
堀内を苦悩から救うように、彼が少しだけ強引に腕を引いた。
秘書にだって休む権利はあるし、今日の待機は佐藤に頼んでいた。そう思うが言葉にするのはやめる。あまり体調がよくなさそうだ。ここで感情を爆発させるようなことは避けたい。いつもの車の傍で、山瀬が申し訳なさそうな顔で立っている。堀内に悪いと思っているのだろうが、合田に言われて断れる立場ではないから、彼を恨むつもりはない。
「一緒に巧さんのマンションまで帰ります」
「待って」
ここは合田の気の済むようにしよう。そう思ったところで高井が声を上げた。
「合田金属販売の副社長ともあろう方が、部下に休暇も与えないんですか? 世間にバレれば問題になると思いますが」
「お前に関係ない」
「いいえ。友人が休みなく働いて疲弊する様子は見ていて気分のいいものではありませんから」
そんな言い方をする彼を初めて見た。平和な世界で護られて生きてきたような彼が、合田に敵意を見せる。堀内のためだが、ここで高井まで平常心を失うのはまずい。
「高井さん、ありがとうございます。でもそういう契約なんです。申し訳ないですが今日は彼と帰らせてもらいます」
嘘を言って穏便に済ませようと思った。
「そんなのダメだよ」
「高井さん」
「もういい」
小競り合いを終わらせたのは、原因を作った合田だった。
「そんなにその男がよければ好きにしろ。俺は帰る」
山瀬に指示をして車に戻ってしまう。
「巧さん、待って」
堀内の声を無視して後部座席に乗り込んだ彼が、出せ、と山瀬に告げたのが分かる。パーキングを去る直前、山瀬が申し訳なさそうに頭を下げていく。
「平気?」
たかが数分の出来事に呆然としてしまって、彼の声に辛うじて我に返った。
「今日はお休みでしょう? 少しはあの人のことを忘れる時間も必要だよ」
彼の言葉が正しいのは分かっている。それなのに、言い表せないに苦しみに悶えていた。ICレコーダーと言われた自分が、いつからこんな不確かな感情に揺さぶられるようになったのだろう。悩む堀内を慰めるように、彼が肩に手を置いてくれる。
「大丈夫。きっと今日は気が立っていただけだよ。週明けには普通に戻るから」
合田を悪く言わない彼が大人だと思った。けれどその配慮の塊のような彼より、怒って去っていった彼が気になってしまう。
「少しドライブして帰ろう。景色がいい場所があるから」
堀内を苦悩から救うように、彼が少しだけ強引に腕を引いた。