くしゃみ
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『くしゅん!』
ぽんっ
「「「「「!!!!????」」」」」
その場は騒然となった
◇
予期せぬスコールにも負けず、突然の嵐にもめげず、今日もゆく
そんなハートの海賊団で事件は起きた
「お、おい!タヌキ、どうしちまったんだよ!!」
「なんか変なもんでも食ったか?いや、いいことでもあったのか?」
「船長ていへんだー!タヌキがぁ!タヌキがあ!!」
急な事件に現場の甲板は騒然となった
「なんだお前ら…騒がしいな」
船内から昼過ぎだと言うのに見るからに寝起きの髪であくびをしながらでてきた
「船長、それがていへんなんです!タヌキが!」
「船長、そうなんです!急に!タヌキが!」
「船長、俺たちはなにも!ただ急にタヌキが!」
「うるせぇ!とっとと結論をいいやがれ!」
「「「「「タヌキが獣耳だしてるんです」」」」」
「あ゛っ?」
側から見れば、タヌキは狐の妖怪なのだから獣耳を出していてもなんらおかしなことはない
しかし、タヌキと共に過ごしてきた船員たちなら話が違う
あの!
どんなに頼んでも、獣耳のけの字も出そうとしない
あの!
土下座しようが、お菓子をあげようが、獣耳のけ字もださない
その!
耳なんてどっちも一緒じゃんと言っていたタヌキが今目の前で尻尾も獣耳を淫らにだしているのだから、甲板はお祭り騒ぎだ
ローもタヌキの異変を感じて見渡すと、当の本人はベポの腹にうずくまっている
そしてぴょりと出ている獣耳と尻尾
「まじか…」
衝撃
ローはしばらく動けなかった
「あっ、キャプテン…タヌキが変なんだ」
ローに気づいたベポが報告するも、聞いているのかいないのか…ローの意識はタヌキの獣耳と尻尾に注がれていた
「…おい」
『………』
「おい…その…なんかあったか…?」
『ろぉ…』
「!、なんだ」
『…風邪、ひいた』
「………」
「「「「「っっっはぁぁぁあああ」」」」」
たっぷり一間おいて、響きわたった
「かっかぜぇぇえええ!?」
「どっどう言うことだ?」
「獣耳が出る新しい風邪か?」
「お、おい!どうすりゃいいんだ?」
「知るか!俺はそんなもんかかったことがねぇ!お前は?」
「俺もだ!」
俺も俺もと船員たちだけでは、解決しようにも出来ない
むしろうるさいし、邪魔だ
「静かにしろ!!タヌキ、その獣耳と尻尾をしまえ
話が進まなねぇ」
『…できない』
「できない?」
『カラダが、かいふくりょくを、あげているのか
バイオリズム、みだれているのか
げんいん、わからないけど、からだこわすとでる
なおるまで、しまえない』
「ほう…興味深いな」
やっと原因がわかれば、不思議な身体の仕組みにローの医者としての好奇心が抑えきれない
「この前の健康診断では特に問題はなかったが…」
しまえないとなるともう収集はつかないな
ローはひとつため息をすると
もぞもぞと居心地悪そうにしているタヌキを起こす
「ここじゃ治療が出来ねぇ…医療室も…ここと変わらねぇか
ベポ、タヌキを俺の部屋に運べ」
どこへ行こうとこの騒ぎは変わらないと判断したローは、この船で唯一鍵のある自らの部屋に運ぶことにした
そんな判断に猛反発したのはクルーたちだ
「そんな船長だけ楽しむつもりっすね!」
「ズルイ!」
「なあ、タヌキ!タヌキそう思うっぃだぁ!!!」
下心丸出しでタヌキの尻尾に触れようとしたシャチが、そのまま尻尾の攻撃をくらう
「オートで自己防衛もするのか」
フアフアに見える尻尾も鋼のように硬くなり、シャチの手を傷つけた
「さらに興味深いな」
「船長!尻尾も耳も出してるタヌキなんて次いつ会えるかわかんないんすよ!」
「そうだそうだ!!だから、もっと堪能させてくれたって」
「そうだそうだ!」
「「そうだそうだ!!」」
「「「そうだそうだ!!!」」」
「“room”」
民衆の声は権力者の一声によって一掃された
民衆たちはもう、自分たちの身体のパーツを探すことにまた騒ぎを起こしている
そんな喧騒をよそに、唯一無事なベポに運ばせ…
「…ベポ」
「ペンギンー!ペンギンの右手ここに!あっ!!」
「おいー!!ベポ、俺の右手を乱暴にあつかうんじゃねー!」
どうやらもう彼には声は届かないらしい
ふうとひと息またため息をつくと、ローはタヌキを抱き上げ運んだ
「おい、治療するんだ
間違っても攻撃するんじゃないぞ」
先程のシャチのようになってはごめんだ
ローの言葉を理解するように、タヌキの尻尾はローごと優しく包み込んだ
その心地よさにローは感心する
よほど辛いのか、この騒ぎの中でもタヌキはひと言も発さずローに運ばれ、ローの部屋につく頃には、タヌキの尻尾は九本全てでていた
診断中もローの言葉に反応するように尻尾は素直にシュルシュルと動いた
「…風邪だな…疲労と連日の雨だ風だと浴びて体調を崩したな
獣医は俺の専門じゃねぇが、これくらいなら飯食って寝とけば治る」
診断を下すと、お礼を言うかのように一本の尻尾がローの頬を撫でた
『ん、ろぉ…ありがとう』
「いつもそれくらい素直だと助かる」
返事の代わりに鳴いたお腹に、ローはラッコにお粥を作らせるために食堂へ向かった
「食欲があるならもう大丈夫だな」
(よう、元気になったか)
(はい、おかげさ…なんですか、それ)
(ちょっとした診察だ…なぁにすぐに終わる、気を楽にしろ)
(ひゃっ!?ロ、ローッ、急に尻尾はっ!!)