何処かで声がしたように聞こえて

何処かで人が動いたように感じて

星は意識を取り戻した。

そうは言ってもすぐに目が開く筈もなく、重い瞼を動かす前に星は耳を澄ませる。

それでも現状を把握出来る所か、耳鳴りがするだけだった。

ｷｨﾝ、と研ぎ澄ますような鋭い音を脳に響かせて、ｷﾞｭｯと縮こまる。





(ここ…どこだろ？それ以前に、今まで私…気失ってた？一体何が…)





自分がどんな場面に置かれているかも解らず

星は体に巻き付く毛布の様な柔らかい物を抱き締める。

………凄く落ち着く。

安定位置を見つけた所で、漸く目が活動を開始したのか

星はゆっくりと瞼を上げた。





水が紙に落ち滲む様に、視界が潤いによって揺らぐ。

向こう側にうっすら見えるのは、光。

徐々に目が慣れ始め、その光は天井の照明だという事に気付いた。

ここは、何処かの部屋。見知らぬ、何処かの、誰かの。

正面に見えるのが天井と理解すると、自分は今寝ているのか、と思う。

再び眠気が襲ってきて、柔らかい物に包まれていた星は

一人、「もっかい寝よ」と呟いて、隣に寝ている高尾を抱き締めた。



























































…………………………………ん？









項と額と背中にどっと冷や汗を掻く。

脳はいよいよ正常に動き出して、意識も完璧に定かとなった。

恐る恐る顔を上げる。すると









綺麗な寝顔を目の前で披露し

規則正しい寝息を立てながら眠る高尾がいた。








「おんぎゃあああぁあぁぁあああぁあぁぁあああぁあぁぁあああぁあぁぁっ!!!!?」

人間とは思えない様な大声を出して野生の動物かの如く飛び起きた星は

虫の様に手足をﾊﾞﾀつかせ、目の前の未確認生物から遠退いた。←

後ろに壁があった事を知らずに後退りし続けた星は

清々しく後頭部をぶつけて痛みに襲われる。

世界が回る、左右さえ解らなくなる、髪を乱雑に掴まれて無理矢理動かされる気分。









ｾﾝﾀｰで分けた艶やかな黒髪が、彼を本物という事実を証明していた。