星も彩香も高校3年生で既に受験生であり、勉強に力を入れなければならない時期に突入していた。

しかし二人が住む地域は九州の中でも「ド」が付く程の田舎であり

平日に集中して勉強に取り組める場所は無い。

星と彩香は部活動を終わらせ、自転車に跨がり帰宅路を通っていた｡

ﾁﾘﾘﾝ、ﾁﾘﾘﾝ。

鞄のﾎﾟｹｯﾄ口に入った家の鍵に付いている鍵が、自転車の震動で揺れる度にに鳴った。

「でさ、そこで高尾が夢主ちゃんを抱き締めんだよ！それでもｷｬｰってなんのにまだやるの！」

「何をっ!?何をっ!?」

「耳元でゆっくり…囁く様に"お前は俺のﾓﾉ"って…「「ギャーッ!!//////」」

帰り道の途中、二人はいつも暇だからとこうして趣味の話に没頭して盛り上がっていた。

暗くなり始めた夏の夜空の下で、歩道上を走り、赤信号に止まり、青に変わって動き出し、駐車場を横切る。

会話に一段落ついた所で、ﾎﾟﾆｰﾃｰﾙを風に揺らしながら彩香が口を開いた｡

「……あれ？なんか雲行き怪しくない？」

言われて星も顔を上げて空を眺めてみると、先程まで淡い紫色だった夜空は濁った暗雲に覆われていた。

「？おかしーなー…朝の天気予報じゃ、今日一日ずっと晴れだって言ってたんだけど」

「天気予報も外れる時は外すって。ほら、雨降ったら困るし早く帰ろうよ、カメ！」

「や、でも……」

おかしい。と星は思った。

確かに天気予報の当たる確率は百ﾊﾟｰｾﾝﾄではないが、ここまで広く大きい暗雲が来るのを予測出来ないのだろうか。

因みに星は鼻がよく効く。

すんすんと匂ってみるが通常の雨雲に含まれている湿気の匂いがしない｡

それに比べて気温は上昇しているのか、生温い風が星の黒いﾎﾞﾌﾞﾍｱｰを靡かせた。

鳥肌が立つ。なんだろう、凄く嫌な予感がする｡

気持ち悪い感覚を覚えながら、彩香の言う通り雨具も何も所持していない二人は困るので急ぎめに漕ぎ始めた。

と、その時。

ピカッ!!

「うっひゃあ!!?( ; ゜Д゜)」

瞬きする時間をも与えないｽﾋﾟｰﾄﾞで世界が白に染まった。

それが雷だと気付いたのはその3秒後程度である。

「ちょ、ｶﾞﾁでやばいﾊﾟﾃｨｰﾝじゃねこれ!?((ｶﾞｸﾌﾞﾙ」

「カメ…雷ﾀﾞﾒだもんな～www見てると楽しいわwww」

「おーちゃんは楽しそうで良かですね全く!!(涙)」









二人の笑顔が消えるまで、あと5分。