電鋸男
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「ねぇキスしてって言ったら怒る?」
ミスディオールの香りが一面に漂っていた。なまえ自身にも持ち物にも染み込んでいたから居場所を辿るのは容易かった。きっと肌を合わせていた相手にもその香りは滲んでいるんだろう。
この後飲み会あるけど来れそ?
行けたら行く
コンクリートに押し潰されて、なまえの半身が砕けていた。岸辺は彼女の口にセブンスターを差し込んでやった。
「冗談言う気力があんだから、お前は助かるだろーよ」
「見てわかんないの。ドラマチックに終わりたい時ってあるでしょ。向こうに落ちてる鞄さあ、私のだから持ってきて」
「これ?」
「それ、手帳の写真見て」
真新しい手帳を取り出す。開くと擦り切れた写真があった。
女の横顔だった。少しだけ不機嫌そうでいて、だけど頬は緩んでいる。髪を解いた姿を初めて見た。
「お前......付き合ってたのか?クァンシと?」
「まさか!向こうはどういう気だったのか知らないけど。いい写真でしょ?キスしてくれたらあげる」
行き場を無くした紫煙が彼女の口からあふれ出た。花の香りが煙に撒かれる。
今更、人工呼吸で彼女の寿命が長引くとも思えない。岸辺はなまえからタバコを引き抜いて煙を吸った。
彼女は泣かない。
『死ぬことが悪いことみたい。ただの摂理なのに』
思想だけで人は生きられるらしい。彼女はそこそこ強いハンターだった。
「禁煙しなきゃ。今のが最後の煙草。...じゃあね」
「お疲れ」
さらに何か言いたげに唇が震えたが、ついに言葉を発することはなかった。
最後までいい女だった。自分はこの香りを嗅ぐたびに彼女を思い出すんだろう。
ミスディオールの香りが一面に漂っていた。なまえ自身にも持ち物にも染み込んでいたから居場所を辿るのは容易かった。きっと肌を合わせていた相手にもその香りは滲んでいるんだろう。
この後飲み会あるけど来れそ?
行けたら行く
コンクリートに押し潰されて、なまえの半身が砕けていた。岸辺は彼女の口にセブンスターを差し込んでやった。
「冗談言う気力があんだから、お前は助かるだろーよ」
「見てわかんないの。ドラマチックに終わりたい時ってあるでしょ。向こうに落ちてる鞄さあ、私のだから持ってきて」
「これ?」
「それ、手帳の写真見て」
真新しい手帳を取り出す。開くと擦り切れた写真があった。
女の横顔だった。少しだけ不機嫌そうでいて、だけど頬は緩んでいる。髪を解いた姿を初めて見た。
「お前......付き合ってたのか?クァンシと?」
「まさか!向こうはどういう気だったのか知らないけど。いい写真でしょ?キスしてくれたらあげる」
行き場を無くした紫煙が彼女の口からあふれ出た。花の香りが煙に撒かれる。
今更、人工呼吸で彼女の寿命が長引くとも思えない。岸辺はなまえからタバコを引き抜いて煙を吸った。
彼女は泣かない。
『死ぬことが悪いことみたい。ただの摂理なのに』
思想だけで人は生きられるらしい。彼女はそこそこ強いハンターだった。
「禁煙しなきゃ。今のが最後の煙草。...じゃあね」
「お疲れ」
さらに何か言いたげに唇が震えたが、ついに言葉を発することはなかった。
最後までいい女だった。自分はこの香りを嗅ぐたびに彼女を思い出すんだろう。
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