電鋸男
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【ラムスキンの憂鬱】
春と呼ぶには汚れている。
おしゃべりして1枚。食事をして2枚。足を開いて5枚。わたしが売っているのは倫理観だと思う。
大勢の人と接するのは嫌いで、他人の気持ちを考えることも嫌い。可愛いバッグは数時間のバイトでは一生手に入らない。だからわたしは今日も見知らぬパパと腕を組んで歩く。
このパパはとっても恥ずかしがり屋。女の子と上手く会話ができないんだって。喋らなくて良いように、気を使わなくて良いように、たくさんお金を積んでわたしに酷いことをする。言葉の暴力は消えない傷跡を残す。慰謝料は惜しみないから、わたしは納得している。優しくてお金のない彼氏より、お金持ちで意地悪な他人の方がわたしは愛せる。
ホテルに良い思い出はない。この先、旅行に行ける身分になったとして、旅先のホテルを見る度に色んなことを思い出すんだ。無理矢理、気分転換。口座の残高を計算する。
次は何が買えるだろう?事後はいつだって憂鬱になる。アルフォートの空箱にお金をねじ込んだ。中身は靴の中で溶けている。捨てる場所がなかったせいだ。あの子に洗ってもらわなきゃ。
「おかえり」
言いつけ通りあの子は道端に座り込んで、紙パックのジュースを咥えていた。オレンジ色をしたパッケージがきれいだった。アルフォートの箱を丸ごとデンジくんに渡す。中身を見て、彼は明日からの献立を内緒話みたいに呟いた。家事はデンジくんが圧倒的に上手だった。わたしはやりたくないし、やる気もない。
「デンジくん、それわたしにちょうだい?」
「ヤだよ。自分で買えよな」
「いいじゃん!これ持ってて」
小さなバッグを彼に押しつけて、代わりに紙パックを奪った。ストローが赤いリップで汚れていく。
“レディ”と名前のついた鞄を持たされたデンジくんは、自販機からもう1つジュースを買う。チグハグで可笑しい。
70万円の布と70円の水。人間は大体200万くらい。
「そのバッグね、70万くらいしたんだよ。パパと10回会えば買えるの」
「あっそ」
「冷たくない?」
「金の稼ぎ方に口出しすんなって騒いだのお前だろ...あぶねーことしてんじゃねえよ」
「欲しかったの。自分のお金で買いたかったの」
「買わせたの間違いだろ」
「くれるって言うから。貰うでしょ?ふつう」
「うん」
デンジくんを間近で見つめる。胸の辺りに頬をつけると、心臓が力強く動いていた。ハリのある肌が気持ちよくてそのまま抱きつく。すぐに抱きしめ返された。
おしゃべりして1時間、食事をして2時間。体を預けて50分。彼といると時間の感覚がなくなる。
キスして?ねだると言い終わる前に口を塞がれた。
春と呼ぶには汚れている。
おしゃべりして1枚。食事をして2枚。足を開いて5枚。わたしが売っているのは倫理観だと思う。
大勢の人と接するのは嫌いで、他人の気持ちを考えることも嫌い。可愛いバッグは数時間のバイトでは一生手に入らない。だからわたしは今日も見知らぬパパと腕を組んで歩く。
このパパはとっても恥ずかしがり屋。女の子と上手く会話ができないんだって。喋らなくて良いように、気を使わなくて良いように、たくさんお金を積んでわたしに酷いことをする。言葉の暴力は消えない傷跡を残す。慰謝料は惜しみないから、わたしは納得している。優しくてお金のない彼氏より、お金持ちで意地悪な他人の方がわたしは愛せる。
ホテルに良い思い出はない。この先、旅行に行ける身分になったとして、旅先のホテルを見る度に色んなことを思い出すんだ。無理矢理、気分転換。口座の残高を計算する。
次は何が買えるだろう?事後はいつだって憂鬱になる。アルフォートの空箱にお金をねじ込んだ。中身は靴の中で溶けている。捨てる場所がなかったせいだ。あの子に洗ってもらわなきゃ。
「おかえり」
言いつけ通りあの子は道端に座り込んで、紙パックのジュースを咥えていた。オレンジ色をしたパッケージがきれいだった。アルフォートの箱を丸ごとデンジくんに渡す。中身を見て、彼は明日からの献立を内緒話みたいに呟いた。家事はデンジくんが圧倒的に上手だった。わたしはやりたくないし、やる気もない。
「デンジくん、それわたしにちょうだい?」
「ヤだよ。自分で買えよな」
「いいじゃん!これ持ってて」
小さなバッグを彼に押しつけて、代わりに紙パックを奪った。ストローが赤いリップで汚れていく。
“レディ”と名前のついた鞄を持たされたデンジくんは、自販機からもう1つジュースを買う。チグハグで可笑しい。
70万円の布と70円の水。人間は大体200万くらい。
「そのバッグね、70万くらいしたんだよ。パパと10回会えば買えるの」
「あっそ」
「冷たくない?」
「金の稼ぎ方に口出しすんなって騒いだのお前だろ...あぶねーことしてんじゃねえよ」
「欲しかったの。自分のお金で買いたかったの」
「買わせたの間違いだろ」
「くれるって言うから。貰うでしょ?ふつう」
「うん」
デンジくんを間近で見つめる。胸の辺りに頬をつけると、心臓が力強く動いていた。ハリのある肌が気持ちよくてそのまま抱きつく。すぐに抱きしめ返された。
おしゃべりして1時間、食事をして2時間。体を預けて50分。彼といると時間の感覚がなくなる。
キスして?ねだると言い終わる前に口を塞がれた。