フェイジュニ
【焦がれてサンシャイン】
太陽が恋しい気持ちは理解できる。昼間に活動するのは気持ちがいいし、光を浴びるとなんとなく元気になれる気がする。イエローウエストは他の街と比べて夜の活動も活発だけど、昼間の催しが全く無いわけでもないし、若者が多い分賑やかである。
それでも日が落ちてからの活動にしか気が向かないのには理由があった。
「まだ痛むのか?」
「まあ日焼けって火傷だからね、そう簡単には治らないよ」
「ふうん、大変なんだな」
「……おチビちゃんは何ともなかったの?」
レモネードスタンドの一件から数日後。あれだけ日焼け止めを塗ったのに、案の定太陽の熱に負けてしまった肌を冷やしながらベッドに横たわっていると、おチビちゃんが珍しく心配そうな表情で覗き込んできた。
最初は真っ赤に腫れ上がった俺の腕を見て面白がっていたおチビちゃんも、数日続くと心配の方が勝ったようで、こうしてこまめに状態を確認しにくるようになった。
まるで飼い主が怪我をしたときの子犬みたいだ。そんなことを言ったらまたキャンキャンうるさく吠えるだろうから、今回ばかりは胸の内に秘めておくことにする。
衣服に擦れてもシャワーを浴びても痛んでうんざりしていたから、気を紛らわせられる相手−−もといおチビちゃんが話しかけてくれて少しだけ気分が上向く。
初日と比べると腫れは引いてきたものの、まだまだ元の状態には程遠い。熱を持ちやすくなってしまった身体を冷やす意味でも保冷剤は欠かせないとはいえ、その間することがない生活にはそろそろうんざりしていた。
「おれも焼けたけど、お前みたいに真っ赤になるわけじゃないんだよな」
「おチビちゃんって、すごく男の子って感じだよね」
腕まくりをして日焼け痕を見せつけてきたおチビちゃんの腕には、レモネード屋さんをした時の服の痕がくっきりと浮かんでいる。こんがりと焼けた腕は“日焼け”という言葉がよく似合う。
同じだけ日の光を浴びた状態だというのに、小麦色の肌と赤く焼けた肌はあまりにも違う。わざわざ冷却中の俺の腕の隣に自分の腕を並べて観察していたおチビちゃんは「ウシシッ」と笑ってツンっと俺の腕を突いた。
「ちょっと、やめてよ」
「全然違くておもしれーな」
「ねえってば、結構痛いんだからね、これ」
「普段の仕返しだ」
そうは言っても「痛い」という言葉を聞いて直接突くのは気が引いたのか、保冷剤の上から突き続けるおチビちゃんの手を取って睨みつける。
「おチビちゃんのは? 痛くないの?」
「おい、やめ……くすぐってぇ!」
焼けている部分と焼けていない部分の境目、なぞるように指を這わせるとおチビちゃんが我慢ならないと言った様子で吹き出した。
身体が熱ってむしゃくしゃしていた部分はある。なんでもいいから面白いことを求めているときに、おチビちゃんがやって来てくれたのはまたとないチャンスだった。
「へ?」
「いい気になってるところ悪いけど、やり返さないなんて言ってないからね」
「お、おい……っ!」
おチビちゃんの手を引いてベッドに引き摺り込む。俺のベッドで寝転がるおチビちゃんの姿を見るのは初めてのことではないけれど、まさか手を出されると思ってなかった驚き顔を見下ろすのは気分がいい。
さっき見せつけられたばかりの日焼け痕がシャツの隙間から覗くのが扇情的で、思わず喉が鳴った。まっすぐで発展途上で、そのくせ生意気で。こんな子全然好みじゃなかったはずなのに。おチビちゃんは俺の積み上げたものをいとも易々と壊していく。
「うーん、おチビちゃんがずっと寝っ転がっててくれればシーツに擦れないし、大丈夫かな?」
「ぴっ!? な、何言って……」
「肌が当たるのは痛くても我慢してあげる」
「なんでおまえが譲歩してやったみたいな言い方……おい、やめろ!」
部屋着の隙間から手を差し込むと、保冷剤を握って冷えた手がおチビちゃんの子ども体温で温まっていく。対しておチビちゃんは、温かい素肌に冷たい俺の指が触れて、くすぐったそうに身を捩った。
普段からベッドの中では借りて来た猫みたいになってしまうことが多いけど、今日は自分が悪戯をした手前逆らえないとでも思ったのかいつもに増して大人しい。俺の指先が与える刺激にされるがままになっているおチビちゃんを見るのは気分がいい。
「アハ、おチビちゃん体温高すぎ」
「……おまえの手が冷たすぎるんだよ」
何から何まで全部違う。だけどなぜか目が離せなくて、ずっと隣にいたいなって思わせる。俺にはちょっと眩しすぎるくらいだけど、もう誰にも譲れない。
今後も日に焼けやすい体質はきっと変わらないし、太陽が落ちてからの生活の方が気が向くのだろう。それでも、俺にはおチビちゃんがいる。太陽みたいに誰もが焦がれて、憧れて、つい手を伸ばしてしまうような男の子。
おチビちゃんの素肌を弄る手はTシャツに擦れてヒリヒリと痛むけれど、恋人に触れているのだと思えば悪くない痛みだった。
太陽みたいな強い視線が俺のことを見上げている。火傷しそうなほどの距離で、焦がれるほどの熱で、いつまでも俺のことを魅了してやまない体温にそっとキスを落とした。
太陽が恋しい気持ちは理解できる。昼間に活動するのは気持ちがいいし、光を浴びるとなんとなく元気になれる気がする。イエローウエストは他の街と比べて夜の活動も活発だけど、昼間の催しが全く無いわけでもないし、若者が多い分賑やかである。
それでも日が落ちてからの活動にしか気が向かないのには理由があった。
「まだ痛むのか?」
「まあ日焼けって火傷だからね、そう簡単には治らないよ」
「ふうん、大変なんだな」
「……おチビちゃんは何ともなかったの?」
レモネードスタンドの一件から数日後。あれだけ日焼け止めを塗ったのに、案の定太陽の熱に負けてしまった肌を冷やしながらベッドに横たわっていると、おチビちゃんが珍しく心配そうな表情で覗き込んできた。
最初は真っ赤に腫れ上がった俺の腕を見て面白がっていたおチビちゃんも、数日続くと心配の方が勝ったようで、こうしてこまめに状態を確認しにくるようになった。
まるで飼い主が怪我をしたときの子犬みたいだ。そんなことを言ったらまたキャンキャンうるさく吠えるだろうから、今回ばかりは胸の内に秘めておくことにする。
衣服に擦れてもシャワーを浴びても痛んでうんざりしていたから、気を紛らわせられる相手−−もといおチビちゃんが話しかけてくれて少しだけ気分が上向く。
初日と比べると腫れは引いてきたものの、まだまだ元の状態には程遠い。熱を持ちやすくなってしまった身体を冷やす意味でも保冷剤は欠かせないとはいえ、その間することがない生活にはそろそろうんざりしていた。
「おれも焼けたけど、お前みたいに真っ赤になるわけじゃないんだよな」
「おチビちゃんって、すごく男の子って感じだよね」
腕まくりをして日焼け痕を見せつけてきたおチビちゃんの腕には、レモネード屋さんをした時の服の痕がくっきりと浮かんでいる。こんがりと焼けた腕は“日焼け”という言葉がよく似合う。
同じだけ日の光を浴びた状態だというのに、小麦色の肌と赤く焼けた肌はあまりにも違う。わざわざ冷却中の俺の腕の隣に自分の腕を並べて観察していたおチビちゃんは「ウシシッ」と笑ってツンっと俺の腕を突いた。
「ちょっと、やめてよ」
「全然違くておもしれーな」
「ねえってば、結構痛いんだからね、これ」
「普段の仕返しだ」
そうは言っても「痛い」という言葉を聞いて直接突くのは気が引いたのか、保冷剤の上から突き続けるおチビちゃんの手を取って睨みつける。
「おチビちゃんのは? 痛くないの?」
「おい、やめ……くすぐってぇ!」
焼けている部分と焼けていない部分の境目、なぞるように指を這わせるとおチビちゃんが我慢ならないと言った様子で吹き出した。
身体が熱ってむしゃくしゃしていた部分はある。なんでもいいから面白いことを求めているときに、おチビちゃんがやって来てくれたのはまたとないチャンスだった。
「へ?」
「いい気になってるところ悪いけど、やり返さないなんて言ってないからね」
「お、おい……っ!」
おチビちゃんの手を引いてベッドに引き摺り込む。俺のベッドで寝転がるおチビちゃんの姿を見るのは初めてのことではないけれど、まさか手を出されると思ってなかった驚き顔を見下ろすのは気分がいい。
さっき見せつけられたばかりの日焼け痕がシャツの隙間から覗くのが扇情的で、思わず喉が鳴った。まっすぐで発展途上で、そのくせ生意気で。こんな子全然好みじゃなかったはずなのに。おチビちゃんは俺の積み上げたものをいとも易々と壊していく。
「うーん、おチビちゃんがずっと寝っ転がっててくれればシーツに擦れないし、大丈夫かな?」
「ぴっ!? な、何言って……」
「肌が当たるのは痛くても我慢してあげる」
「なんでおまえが譲歩してやったみたいな言い方……おい、やめろ!」
部屋着の隙間から手を差し込むと、保冷剤を握って冷えた手がおチビちゃんの子ども体温で温まっていく。対しておチビちゃんは、温かい素肌に冷たい俺の指が触れて、くすぐったそうに身を捩った。
普段からベッドの中では借りて来た猫みたいになってしまうことが多いけど、今日は自分が悪戯をした手前逆らえないとでも思ったのかいつもに増して大人しい。俺の指先が与える刺激にされるがままになっているおチビちゃんを見るのは気分がいい。
「アハ、おチビちゃん体温高すぎ」
「……おまえの手が冷たすぎるんだよ」
何から何まで全部違う。だけどなぜか目が離せなくて、ずっと隣にいたいなって思わせる。俺にはちょっと眩しすぎるくらいだけど、もう誰にも譲れない。
今後も日に焼けやすい体質はきっと変わらないし、太陽が落ちてからの生活の方が気が向くのだろう。それでも、俺にはおチビちゃんがいる。太陽みたいに誰もが焦がれて、憧れて、つい手を伸ばしてしまうような男の子。
おチビちゃんの素肌を弄る手はTシャツに擦れてヒリヒリと痛むけれど、恋人に触れているのだと思えば悪くない痛みだった。
太陽みたいな強い視線が俺のことを見上げている。火傷しそうなほどの距離で、焦がれるほどの熱で、いつまでも俺のことを魅了してやまない体温にそっとキスを落とした。
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