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ペイヴァルアスプ

【竜鱗の魔王】ペイヴァルアスプ
(調査ファイル2)

拝忠蛇啜イブリス・ダハーカ
ある日突然、どこからともなく囁かれた声。「父を弑して王となれ」と告げるそれに耳を傾けた時から、すべてが狂い始めた。その危うい栄光は勝利に酔った宴の席で、どこかで聞いた声の語る「望み」を受け入れた瞬間に破滅した。彼の人生は華麗なる英雄譚でありながら、大いなる理不尽に見舞われ、降りかかった災厄と疑念に惑う悲劇でもある。そしてその苦しみは彼自身が災厄となり、悪として討伐されることで幕を下ろした。そのため身に余る罪を負い、裁かれた者に共感を寄せる。経験上、身体への接吻は誰から、どんな感情によって行われたものだとしても忌避する。
背中に植え付けられた二匹の蛇は、東京へ転光した影響で見る影もないほど弱体化されている。片や炎を吐き、片や毒霧を噴き出す危険な生物には違いないが、かつてのように暴れたり噛みつくこともなく、一日二人の「生贄」すらも必要としない。その様に愛着を覚えた彼の脳裏に浮かんだのは、自分を恐れ、離れていった二人の妻。時折その名を呼び、行き場をなくした愛を向ける様子が見られ、その振る舞いはいかにも人間味に溢れた、親しみの持てるものである。しかし……毒牙がふたたびその身をとらえる時、彼は自身が「転光生」となった理由も含めて、己に課された真の業に気づくことになるだろう。彼に付された本来の名は「ザッハーク」、故郷において三つ首の邪竜に重なる存在である。背負った蛇たちをその内の二つとするならば、三つ目は……。
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