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ブランカ

【無垢なる願い】ブランカ
(調査ファイル2)

白紙の手紙カルタ・ブランカ
白夜に輝く極光、万人に嘆息をもって見上げられる「役割」を課された彼は、生まれてこのかた「ひと」として見られたことがない。骨格が違う、頭の出来が違う、才能のレベルが違う、生まれた星のもとが違う───。両親、友人、学校、職場、同じ社会で生きるすべての人間から「自分たちとは違う」と評された彼は、ひとり別格のステージに押し上げられ、無数の称賛に囲まれていながら孤独だった。そんな彼に「アプリ」が与えたのは、背負うべき因果も銘もない、まっさらな紙切れ一枚だけ。「白紙」とは何も書かれていない状態、「まだ」何も書かれていない状態。つまりは何でも書き込める万能の器。たどり着きたい「結果」を記すと、それを実現するために最適な「権能」を発揮する。多少の紆余曲折はあるが、最後には必ず望む結果が訪れる。「アプリ」を閉じると内容がリセットされ、再起動すればまた別の願いを書き込むことができる。
変幻自在の奇跡を手にして、彼が最初に抱いたのは一つの切実な願望だった。「手紙」の導きに従い、集められた八人の「転光生」。姿かたちも生きた時間も、抱えた「記憶」もかけ離れたものたちの中にあって、初めて彼は自分が凡庸な「人」に過ぎないことを実感できる。彼らと人生を共にすることを決意した彼は、そのための現実的な手段として芸能活動に戻ることを選び、今日もその人間離れした才覚を見せつける。ひとであるために。「普通に過ごしたい」という願いを叶え───この東京に生きる人間ただびととして、当たり前の幸福を掴みとるために。
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