【ひとり発つ君へ】ピーフェート
(調査ファイル2)

【相愛双慕（メーテーン・ナー・ポーテーン）】
左前側の腕に巻かれているお守りの｢神器｣は、危機に陥った時に彼の祈りに反応して予言を授ける。独立した意思を持っているらしく、名前を尋ねると｢クマントーン｣と答えるほか、本人が大きなダメージを受けると黄金の巨人のような化身が現れる。ピーフェートは下界へ降ろされる際にいつの間にか持っていたというこのお守りを大切にしており、家族のように話しかける姿も見られるが、その行動の裏には故郷で体験した孤独と悲哀の記憶がある。
双子に生まれたこと───それが彼の罪であり、向けられる嫌悪を｢ひとりで｣背負うことこそが彼に課された｢役割｣。自らを創り出した父母神に見捨てられ、ある企てのために｢アザのないきょうだい｣と引き離された彼は、愛されなかった悲しみと、寂しさを分かち合う者のない絶望に傷つけられてきた。異端者である双子に故郷の機構（システム）は不寛容であり、彼は苦労を重ねるうちに自尊心を欠くようになる。｢アザを持って生まれた片割れ（じぶん）は、誰からも愛されることはない｣と。そして残酷なことに実際、彼は父母神に疎まれている。憎まれてすらいるかも知れない。だがしかし、その理由は彼の思うようなものではない。下界へ生み堕とされる際、彼はきょうだいの肉体の一部をその身に融合させて持ち去った。それは｢英雄｣を守護する高潔な魂をその資格とともに侍らせ、あらゆる苦難を退けることによって空へ至らんとした父母らの計画を打ち崩すものである。彼が東京にいる限り彼らは｢世界｣の一部に足ることができず、機構から外れた不完全なもの、｢英雄｣に討たれるべき魔性として、いつか訪れる破滅を恐れ続けることになった。その事実をひとり知らぬまま、ピーフェートは新たに見つけたアイドルという夢に向かって走る。この東京のすべての者に、｢生まれてきてよかった｣｢生きていてよかった｣と感じてもらうために。その危うくも輝かしい道程を、きょうだいもすぐ近くで見守っている。