トピェレツ
【うつくしき溺殺者】トピェレツ
(調査ファイル2)
【潜水作兵 】
足首に装着されている、水晶でできた水車の「神器」。本来の持ち主は彼の妻ルサールカであり、それが持つ「権能」も彼女が彼の無事を願って込めたもの。彼女が世界の壁を越えてまで彼を見守る理由は、彼女がまだ「オフィーリア」という名の少女だったころ、彼に命ではなく、魂を救われた過去があるからだ。錯乱し、夢見心地のまま水に落ちた花嫁姿の少女。トピェレツは彼女を助けようとしたが、やはり体質によって叶わず、二人して川に沈んでしまう。無力感に苦しむ彼に対し、水妖へと姿を変えた少女は「自分を解放してくれた」として愛を誓うのだった。
同族に似ない顔、泳げない引け目、歌という女々しい趣味。劣等感に満ちていた彼を、花嫁は溢れんばかりの愛で照らした。その慈悲はどこまでも深く清く、彼を仲間の謗りも、人間たちの憎悪も届かぬ場所へと導く。すなわち清廉なる水底へ。そこで息絶えたものは、真に美しきものの棲む水晶宮を守る兵士として操られる。しかし、その中でもっとも優雅に踊るのは、溺れて意識を失ったトピェレツ自身の身体だ。死ぬまで報われないという「役割」に準じ、彼は命を落として初めて、ルサールカとの逢瀬を許される。戯れに泳ぐ彼らは水面に大渦を作り出し、道を阻むすべてを波によって打ち砕く。また、余談だがこの「神器」を陸上で使用すると「溺れさせる」効果の副作用として、範囲内にいる生物たちの抱える精神エネルギーを氾濫させる。感情を掻き立てられた者たちは咽び泣き、自らの涙に溺れることになるだろう。
(調査ファイル2)
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足首に装着されている、水晶でできた水車の「神器」。本来の持ち主は彼の妻ルサールカであり、それが持つ「権能」も彼女が彼の無事を願って込めたもの。彼女が世界の壁を越えてまで彼を見守る理由は、彼女がまだ「オフィーリア」という名の少女だったころ、彼に命ではなく、魂を救われた過去があるからだ。錯乱し、夢見心地のまま水に落ちた花嫁姿の少女。トピェレツは彼女を助けようとしたが、やはり体質によって叶わず、二人して川に沈んでしまう。無力感に苦しむ彼に対し、水妖へと姿を変えた少女は「自分を解放してくれた」として愛を誓うのだった。
同族に似ない顔、泳げない引け目、歌という女々しい趣味。劣等感に満ちていた彼を、花嫁は溢れんばかりの愛で照らした。その慈悲はどこまでも深く清く、彼を仲間の謗りも、人間たちの憎悪も届かぬ場所へと導く。すなわち清廉なる水底へ。そこで息絶えたものは、真に美しきものの棲む水晶宮を守る兵士として操られる。しかし、その中でもっとも優雅に踊るのは、溺れて意識を失ったトピェレツ自身の身体だ。死ぬまで報われないという「役割」に準じ、彼は命を落として初めて、ルサールカとの逢瀬を許される。戯れに泳ぐ彼らは水面に大渦を作り出し、道を阻むすべてを波によって打ち砕く。また、余談だがこの「神器」を陸上で使用すると「溺れさせる」効果の副作用として、範囲内にいる生物たちの抱える精神エネルギーを氾濫させる。感情を掻き立てられた者たちは咽び泣き、自らの涙に溺れることになるだろう。