幸せを運ぶ鳥
グレイ「なぁ、『幸せの青い鳥』って知ってるか?」
ある日の昼下がり、クエストを受けずに珍しく家でだらけていた
ソファに腰掛けて読書をしているグレイの脚を枕にしてだらけていた
静かな部屋に本のページを捲る音だけが響く中、頭上の本の向こう側からポツリと落とすように問い掛けてきた
ナツ「んー?青い猫なら知ってる」
グレイ「それはオレも知ってる
じゃなくて青い鳥」
チラリと頭上に開かれた本を見る
表紙と背表紙に『Blue Bird』と書かれたそれ程厚くない本
ナツ「…その本のことか?」
グレイ「タイトル読めたのか、よく出来ました」
ナツ「……」
グレイ「いてててて!痛い!脚を抓るな!」
まだ抓り足りないが仕方ないから離してやる
無防備な腹を殴らなかっただけ感謝してほしい
ナツ「どんな内容なんだ?」
グレイ「痛かった…えーっと、ざっくり言うと兄妹が青い鳥探して幸せになるって話」
ナツ「すっげーざっくりだな」
グレイ「…それより、なんで青い鳥を見つけると幸せになれるんだろうな」
ナツ「そういう物語だからだろ?」
グレイ「そうだけどさ、青って幸せっていうかどっちかっていうと悲しかったり寂しかったりそんなイメージの色だろ?
幸せならピンクとか明るい色でいいはずなのになんで青なんだろうな」
そう呟くグレイの顔は本で隠れて見えないけど、声のトーンが少し下がったのはわかった
ナツ「…グレイにとって青はそうなんだな」
そう呟くと、本を持っていた手がピクッと揺れページを捲る音が止まった
ナツ「オレは違うぞ
晴れた日の青い空とか、夏の青い海とか見るとワクワクするし、ハッピーと一緒にいると楽しいしそれに…」
オレとグレイの間にある本を掴んで奪い取ると驚いたように見開いた双眸
ナツ「オレにとって青はおまえの色だ」
グレイ「ナツ…」
ナツ「それに、青い鳥ってきっと綺麗だろうし見つけたらラッキーじゃね?なら、青い鳥見つけたら幸せになれるな!」
グレイ「そうだな、きっと綺麗だろうな」
そう呟いたグレイはフッと微笑んでオレの額に振れるだけのキスを落とした
オレに幸せを運んでくれた鳥は、きっと桜色をしているんだろうな
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