魂の独奏 ~Arrive thought~
「冬獅郎ぉおお!!!」
「黙れ、黒崎!!」
大きな音を立てて、十番隊執務室の扉を開け放つ一護を睨みつけながら、日番谷は自身の斬魄刀『氷輪丸』を手にとり、抜刀する。
「って、斬魄刀まで取り出すことはねぇだろ!?」
「仕事の邪魔する奴は容赦しねぇ・・・」
驚いてたじろぐ一護を殺意溢れた眼で睨みつけてくる日番谷に、一護は表情を引きつらせながらこちらを見向きもしない乱菊に助けを求める。
「ら、乱菊さん・・・。今日の冬獅郎、いつもより機嫌悪ぃんスけど・・・」
「あぁ、あんたも災難ねぇ、一護」
はぁ、とため息を吐いた乱菊は漸くこちらを振り返って、肩に掛かった髪を掻きあげる。
「今日は一番隊、総隊長から直々に書類が回ってきて、次は三番隊のサボり魔隊長から自隊のほぼ全部といっていいほどの書類、その次は十三番隊のよく体調を崩す隊長の所為で書類が・・・」
「もういい・・・わかった・・・」
額に手を当てて、一護はもういいと言う様に首を振った。
その間、日番谷は既に隊主机に山積みになった仕事を片付け始めていた。
乱菊は一護に説明したのをきっかけにやる気がなくなったのか、珍しく進めていた仕事から手を離し、首を傾げた。
「そういえばあんた、隊長に何か用があったの?」
「え?あ、あぁ、そういやそうだった」
一護は思いだしたという様にポンっと手を叩いてから頭を掻いた。
「まぁ、大した用じゃないん・・・」
「なら帰れ」
言いかけている途中に書類を片付け続けている日番谷が一言言い放つ。
一護は、その容赦ない一言にガクッと肩を落とす。
「頑張ってね、一護」
他人事のように言う乱菊に、一護は更に落ち込んだのだった。