雪に込めた想いを乗せて







わたしは生まれた時から病弱で、外で遊んだことなんて一度もなかった。

ましてやここは、雪の村。
一年中雪が降っているというわけではないが、冬にはいってからは毎日降っている。
夏だって気温は他の村より遙かに低い。

そんな村で生まれてしまったわたしに、「外で遊ぶ」なんて、出来るわけがなかった。

季節は冬。
わたしが一番嫌いな季節。

外ではわたしと同じくらいの年の子供たちが遊んでる。
とても楽しそうな声。

羨ましい。
何度そう思ったことか。
でもわたしは、この小さな窓から外の景色を眺めることしかできない。

雪が舞い落ちるこの村の景色は、白。
何も見るものなんてない。

外から聞こえる子供たちの声。
この窓から、その子供たちの姿を見ることはできない。

窓から見えるものは、白。
わたしがいるこの室内も白。

わたしは、白に呪われてるんだ。
そう、思わざるをえなかった。

「白(ハク)、どうかした?」
「・・・なんでもない」

皮肉なことに、わたしの名前まで白。
名前の由来は、「白く、真っ白で純粋な心を持つ子になってほしい」。
そんな誰でも考えるような想い。
そう思うことは悪くないけど、せめて別の名前がよかった。

「今日はいつもに増して寒いからね。その服じゃ薄くて寒いでしょ?肩掛け持ってきたかね」

そう言って母は、わたしの肩に肩掛けをかけた。

「じゃあ、今日は調子良さそうだから、母さんこれで帰るわね。仕事があるから」

返事をしないで黙っていても、母は静かに扉を開けて出て行った。
それを無表情で見送ると、視線を窓に移す。

白い。

真っ白。

確かにわたしは、白く、真っ白な・・・

―――何も思えない、冷たい心になったよ。

わたしは今、病院に居る。
今、というより、ずっと。
生まれつき病弱の所為で、温かい日なら外に出られるが、一年中寒いこの村で、外に出れる機会なんて一年に一回や二回程度。
もちろん出れない年だってある。
記憶の中で、外で自由に走り回ったことなど、一度もなかった。

夢には見たことがあった。
一面のお花畑の中、温かい日差しを受け、友達と一緒に走り回ってた。
でも、それは所詮夢の中。
実際の日差しがどれほどまで温かいのかなんて全く知らないし、感じたことなんてなかった。

どうしてわたしは、こんな体で生まれてしまったのだろう。
雪の中でもいいから、わたしだって走り回りたかった。

「ゲホッ、ッゲホッ!!」

こんな病弱じゃなければ、外でめいっぱい走りまわれたのに。
こんな苦しい想いをするくらいなら、

―――死んだ方がマシだった。

それでも自殺できないのは、自分が臆病者だから。

それに・・・
――春を見たいと、そう思う様になった。

意地でも治す。
そして、この村から出て、春を見に行く。

それが、願い。
そして、希望。

それだけを胸に、私は生き続けた。



でも、現実は―――






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イイネ!