永遠に消えない心の絆






クロサキ医院・一護の部屋。

規則正しい寝息が聞こえるその部屋の窓が、ガラッと開く。
窓から部屋に入ってきたのは、銀色の髪と黒い着物を靡かせた、少年だった。
少年は草履のまま部屋に入ると、その部屋のベッドで寝ている一護に近づく。

一護は少年に気づくことなく、寝続けている。
少年は徐に息をスゥっと吸い込むと、

「起きろ黒崎!!!!」

一護に思い切り怒鳴った。

「ぅおあ!!!!!」

その怒声にものすごくビビッた一護は飛び起きる。
バッと怒鳴った人物―――日番谷を見ると、彼は手を組んで仁王立ちしていた。

「な、なにすんだよ!冬獅郎!!」
「うるせぇ。先日言ったよな?『任務があるから、早朝に邪魔するぞ』と」
「だからって、あんな起こし方はねぇだろ!」
「いいから、さっさと死神化しろ!」

そう言うと、入ってきた窓から外へ出て行った。

「待てよ冬獅郎!!」

一護も慌てて死神化すると窓から飛び出していった。






ようやく追いついた一護は日番谷の隣に並ぶ。

「待てって言っただろ!」
「お前が遅いんだろうが!」

そう文句を言い合うと、一護は真面目な表情になる。

「虚だっけ?」
「ああ。ある特殊な能力を持つ虚なんだが、その能力は未だに不明。大して強くはないが、油断はするなよ」
「おう!」

―――そう、冬獅郎に注意されたはずなのに・・・

虚が出現すると思われる場所に着いた二人は、宙から様子を見た。
虚が現れる気配は、まだない。

二人はいつどこから現れるのか、神経を集中させていると―――

ドォオオオ―――

という音と共に、その特殊な能力を持つ虚が現れた。

数は一体だけだった。
一護と日番谷は自身の斬魄刀を抜刀し、虚に切りかかった。

「くっ・・・!」

しかし、思っていたほどその表面は硬く、日番谷は始解しざるを得なかった。

「霜天に坐せ、氷輪丸!!」

切っ先から出た氷の竜は、一護に気をとられている虚に一直線に向かっていった。
しかし、虚はその氷の竜が当たる寸前でかわす。
一瞬の隙が出来た虚の後ろには、斬月を構えている一護が居た。

「月牙天衝!!!」

一護は虚の後ろから月牙天衝を放った。
虚は避けるまもなくそれに当たり、地面に平伏すように倒れた。
一護は地面に足をつくと、居に背を向けて日番谷を振り返った。

「本当に呆気なかったな。これで任務終了だろ?」
「ああ、ご苦労だったな」

そう言って日番谷は氷輪丸を鞘に戻す。
―――一護の背後で何かが動いた気がした。

「?」

そう思って顔を上げると、不思議な顔をして自分を見ている一護の背後に、頭が半分に割れている虚が、一護に襲い掛かろうとしていた。

「危ねぇ!!!」
「え・・・?」

ズシャァ!!!

肉の避ける音がやけに近くで聞こえた。
振り向くと、赤い液体が飛び散っているのが見えた。
顔が割れている虚が、ニヤッと笑ったように見えた。

銀色の髪が、赤い色に染まっていく。
その赤いものが、何かわかるまで数秒かかった。

血・・・

倒れている少年から出ている、血。

それが、日番谷だということに気づくには―――瞬時に理解した。

―――時が止まった。

周りの音は何も聞こえない。
ただ、苦しそうに浅く息をしている日番谷の呼吸だけは、やけに響いて聞こえた。

そこからは、頭が真っ白だった。

何も考えていない。

何も考えられない。

ただ、日番谷の体を揺すって、名前を呼ぶことしか出来なかった。

呼んでも返事をしてくれない。

嘘だ。

何かの冗談だ。

そう思いたくても、思えない。

目の前で血の気がなくなっていく彼が、冗談ではないと、その現実が自分に突き刺さってくる。






―――誰か、冬獅郎を助けて・・・








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イイネ!